「Higher Ground」マ・レイニーのブラックボトム Kjさんの映画レビュー(感想・評価)
Higher Ground
舞台劇ベースで、同じくデンゼルとヴィオラのフェンスを想起する。どうしてもチャドウィックボーズマンの迫真の演技に目がとらわれてしまうが、後味はヴィオラが演じたマ・レイニー。
名声を得たベテラン歌手が周囲に撒き散らす異臭漂う圧と傲慢さ。不快感しか覚えない憮然とした表現の一方、純粋にブルースを語るときの柔らかい表情とのコントラストが効いている。彼女がマイノリティでなければ、こうである必要はなかったかも知れない。常に周囲と戦い、覚悟を示し続けて得た高み。隙を与えれば、ひきづりおろされる。後進のレヴィーに譲ることはない。乗り越えたければ本人が越えれば良い。その土台は彼女が既に築いている。多くは越えられずに野垂れ死ぬが、幾ばくかはより高くに手が届く。
そうして黒人は先人を乗り越えながら、高みを求めた。彼女が生きた時代から100年の時が経った。高くまで登ったが、輪廻してもまだ周囲は壁である。だから登り続けるしかない。これはアジア人も同じだ。
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