「純粋な悪・権力の闇」孤狼の血 LEVEL2 哲也さんの映画レビュー(感想・評価)
純粋な悪・権力の闇
幼少期の異常な体験が、上林を破壊だけが目的の怪物にしてしまったのか。組織を維持しようとする者は、彼にとって異教徒のようなものだろう。排除の対象でしかない。そしてその排除の方法は目を覆いたくなる残虐さ。
大上の役割を受け継いだ日岡。その目的は暴力団の抗争をなくすこと。事実、呉原は微妙なバランスで平静を保っている。
この二人は組織の維持や権力・地位・利権などには興味を持たず、孤独である点は共通している。
日岡の正義である地域のバランスに、上林は突然降りてきた破壊神だ。破壊神にとっては破壊こそ正義だ。父と慕った五十子親分の仇を討つ「仁義」が彼の大義のように見えるが違う。組織の維持・発展のために無謀な抗争を諌めようとした五十子環を、何の躊躇いもなく撃ち殺してしまう。
物語はこの二人を軸に進むので、上林の狂気に焦点が行ってしまう。しかし組織の存続、権力の維持、欲望や利権に執着し翻弄される人間の愚かさ、恐ろしさが本当のテーマな気がする。
中村梅雀演じる刑事の「極道なんて可愛いもんだ。悪いことをすると公言して悪いことをする。本当にタチが悪いのは、自分は善を行なっていると信じて悪をなす連中だ」という意味のセリフが印象に残った。
大上なら堅気になりたがっている青年を危険な暴力団のスパイとして潜入させたりするだろうか?日岡も組織から離れた孤狼であることには違いないが、大上の精神までは引き継げなかった。犬になりさがってしまった。物語の最後に一瞬見た孤狼はもう二度と日岡には見えないのかもしれない。
役者さんたち、制作陣の熱さをすごく感じました。面白かったです。が、前作の役所広司の存在感の大きさを、改めて感じた作品でもありました。