「とんでもない物を飲み込もうとする怖い衝動の物語。」Swallow スワロウ 松王○さんの映画レビュー(感想・評価)
とんでもない物を飲み込もうとする怖い衝動の物語。
何処か刺激的かつ魅惑な感じなのと、ポスターのヘイリー・ベネットに目を奪われ、興味があって観賞しましたw
で、感想はと言うと、まあまあw
作品ジャンルがスリラーと書かれていましたが、スリラーと言うよりかはサスペンスドラマと言う感じ。スリラー作品として観ると結構スカされる感じです。
新婚のハンターはニューヨーク郊外の邸宅に夫と住んでいるが、完璧な夫と養父母はハンターを何処か蔑ろにする感じからハンターは虚無感を感じる生活を送っている。
ある時、妊娠が発覚し、待望の第一子を授かり歓喜の声をあげる夫と義父母であったが、ハンターの孤独はますます深まっていく。ある日、ふとした事からガラス玉を呑み込みたいという衝動にかられるたハンターはガラス玉を口に入れ、呑み下すのだが、痛みとともに得も言われぬ充足感と快楽を得る。それが次第に様々な異物を「呑み込む」ことで多幸感に満ちていくがより危険な物を口にしたいという欲望に取り憑かれていく…
と言うのが大まかなあらすじ。
ハンターと夫家族との虚無感は何処か生い立ちからの劣等感にも感じるが、完璧過ぎると言うか、金持ちの相手を敬うと言いながら、何処かマウントを取る、振る舞いや言動・行動がなんか鼻につくと言うのはよく分かります。
本人はそういうつもりが無いにしても、側から見ていると行き詰まる感じのプレッシャーと言うか、他人にもそれを無言の圧力で強要してくる。自分だったら無理ですわw
そんなハンターの息苦しさは凄く分かるんですが、それでも異物を呑み込むと言う「異食症」と言うのはちょっと理解出来ない。
だが、小児と妊婦に多く見られる症候との事で、子供の時におもちゃとかを口にする感覚をなんとなく思い出した。
それでも飲み込もうとは思わなかったし、当時はストレスではなく好奇心の方が優っていたと思うがハンターの異食症は明らかにストレスからの物。
夫家族からの疎外感というか見下した様な感覚のストレスで異質物を飲み込む事での達成感や支配感にハンターは苛まれると同時に取り憑かれる訳ですが、これは無理だろ?と言う物を口にした時はさすが共感は出来ないけど、そんな物を飲み込む衝動に駆られ、自身を傷付けてしまうジレンマに陥る異食症の人の悩みは想像に絶します。
話のテンポが早くて、次々と明らかに危ない形の物を飲み込んでいきますが、個人的には止められないと分かりながらも治療を拒絶し、家を飛び出るハンターが結構ワガママにも映ります。
夫家族の悪意無き見下した感覚は分かりますが、もうこれは「相性が合わなかった」と言う所に落ち着けても良いのに、家を飛び出して、自身の出生の秘密となる父親を訪ねたり、結果堕胎を決意する迄落ち詰められていたと言うのは気の毒と言うしかないけど、そこに至る迄がやはり身勝手に移るんですよね。
夫とその義理の父母が大嫌いだったとしても、もう少し折り合いがつかなかったのか?とも思えるし、全くハンターに興味が無いと言う訳でも無い。悪気無いと言うか鈍感でもなんとか良くしようと言うのは分かるんですよね。薄っぺらいですがw
様々な物を異食し、逃げ出して飛び込んだモーテルで土を食べる程、心身ともに衰弱していたとしても、待望の子供を授かって、勝手に堕ろされたハンターの夫の気持ちも気の毒な感じ。
何よりも結婚して、夫婦二人が同意の元で妊娠したのに「私は実は子供なんて欲しくなかった。こんな夫と一緒には居たくもなかった」としても堕胎するのってどうなんだろう?
ただ、出産は女性に多分な影響を与えるだけに男が言う事は何処か他人事に感じるのかも知れませんがちょっと思ったりしました。
ラストの洗面所での様々な女性の化粧直しの様子がエンドロールとして流れるのを見るといろんなドラマがあって、ハンターの新たな旅たちと共にそれぞれの女性のドラマを紡ぎだす場とすると男が考える以上にいろんな思いがあると言うのを改めて実感します。
異食症をテーマに一人の女性の苦悩と葛藤、旅立ちが描かれていますが、どの立場で共感する事で感想は変わるかな。
ですが、ハンター役のヘイリー・ベネットが個人的には良いかなと。面倒臭そうですがw
色々と考えさせられる作品で、女性の方は多く共感出来るかもです。興味がありましたら、如何でしょうか?