「題材は面白いけど伏線が弱すぎて感情移入できない」Swallow スワロウ デビルチックさんの映画レビュー(感想・評価)
題材は面白いけど伏線が弱すぎて感情移入できない
感想を簡潔に書くと、「異食症という題材は面白い。でも伏線が弱いな、分かりにくいな」です。
この作品、大事なことがあまり描かれていないんですよね。もしくは薄い。例えばハンターとリッチーの馴れ初めは一切描かれていません。
何でハンターはリッチーのようなお金持ちと結婚することができたのか。ハンターは何故リッチーと結婚したのか。これを描いておかないと、観客はついていけないんですよね。感情移入ができない。ハンターが孤独なのは分かるし同情もするけど、それが異食症に繋がるという展開が理解できません。置いてけぼりにされてしまいます。母親のレイプの件が話されてようやく彼女が異食症になってしまうほど大きな傷を持っていたのだと理解できますが、遅すぎます。
一応、異食症の伏線はあります。リッチーの両親と会食をしているとき、ハンターが話し始めたばかりなのに義父が遮って別の話をし始めます。その時、ハンターはストレスを感じ、氷をガリガリと食べます。しかしハンターがビー玉を飲み込んだ時、「あぁ、さっき氷食べてたもんな。あの時から異食症は始まってたんだ」と気づく人はあまりいないんじゃないかなと思います。
また、最後はハンターが自らの意思で中絶薬を飲むのですが、それが夫への反抗であると同時に、「たとえレイプで誕生した命でも中絶をしてはならない」というハンターの母への反抗であり、母の倫理観や宗教観への反抗でもあると気づき、すなわちそれはハンターが自分の意志で行動した=母や社会から自由を勝ち取ったということを示していて、だから彼女はカタルシスを得たのだと気づく人は少ないんじゃないでしょうか。
ハンターにとっては天地がひっくり返るようなとてつもなく大きな決断と行動をしているんですよね。生まれる前からそういう倫理観や宗教観に囲まれて育ったのですから。でも前振りが弱すぎます。
や、もしかしたら欧米の人には説明しなくても異食症のことなんて誰でも知ってるし、宗教の話をちょろっとしとけばハンターの生い立ちまで想像がつくのかもしれないですけどね。ちなみにこの作品の紹介に「スリラー」と書いた人はこの映画の内容を1ミリも理解できていないと思います。