「少しひねった良作」ズーム 見えない参加者 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)
少しひねった良作
意外に面白かった。そして意外に怖かった。ホラー映画はどれだけ怖がらせるかが評価のポイントだから、本作品は高めの評価になると思う。ノートPCのZoomの画面という設定だからアクションも限られるし、各自の家の中という限定もある。しかしカメラワークの工夫もあって、登場人物の恐怖が互いに伝染し合うように高まっていくにつれて、観ているこちらにも恐怖が伝染してくる。上手く作られた映画である。
Zoom交霊会は面白そうだ。幽霊を信じている人は少ないと思うが、信じていない人も100%幽霊はいないと断言できない。幽霊がいる可能性はゼロではないと思っている。そこにホラー作品を作る隙間があるし、交霊会の面白さもある。霊媒師を招いたらソレらしさが増すし、コロナ禍で在宅を余儀なくされているヒマ人たちが考えそうな交流会のひとつである。
霊媒師は仰々しさのない普通の女性で、逆にリアリティがある。原題の「Host」の意味は「主人」というよりも「主催者」と考えるのがいい。交霊会を提案したのはヘイリーだが、ヘイリーは主催者というよりも参加者のひとりである。かといってヘイリーに呼ばれた霊媒師はもちろん主催者ではない。本当の主催者はPC画面の参加者の枠の中にはいないのだ。
邦題の「ズーム 見えない参加者」は秀逸。本当の主催者は通信と現実の両方を支配していたという訳で、我々が日常的に考える時間と空間の概念を超越して、場所も時間も無関係な神出鬼没の存在を暗示している。それはたしかに怖い。交霊会は面白そうだが、本作品を観たら、やってみる気にはなれないだろう。少しひねった良作である。
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