「【”人気女優の陰に名スタントウーマンありき”前半は、彼女達の日々努力する姿と激しいアクションに魅入られ、後半は男性社会の映画スタント業界の第一線で活躍してきた女性たちの言葉が染みたドキュメンタリー。】」スタントウーマン ハリウッドの知られざるヒーローたち NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”人気女優の陰に名スタントウーマンありき”前半は、彼女達の日々努力する姿と激しいアクションに魅入られ、後半は男性社会の映画スタント業界の第一線で活躍してきた女性たちの言葉が染みたドキュメンタリー。】
ー 冒頭、「アトミック・ブロンド」で、シャーリーズ・セロン(と思っていた女性)が、縄一本で3階から飛び降りるシーン、「ワンダーウーマン」で、ガル・ガドット(と思っていた女性)が、窓ガラスを割って宙に飛び出すシーンが画面に映し出される。
アクションをメインで見せるドキュメンタリーかな、と思っていたら、予想以上に、観ている側にイロイロなメッセージを伝える、素晴らしいドキュメンタリー作品であった。-
■印象的なシーン
・現在、活躍するスタントウーマン達の、身体を鍛える姿。柔術、ボクシング、キックボクシングの動きを取り入れたり、シールズか!と思うような過酷な訓練。
高さ20M位(もっとかな?)から、大きなエアバッグが置かれているとはいえ、後ろ向きで落ちる訓練・・。
けれど、彼女達の表情は明るく、プライドを持って自分の仕事に対して、入念な準備をしている事が分かる。プロフェッショナルである。しかも命を懸けた仕事である。・・。
・カーアクションの練習を何度も繰り返し、漸く成功した時の雄叫びにも似た嬉しさを爆発させる姿や”ファイヤージェル”を塗って、火だるまになるスタントウーマン達の姿。
・けれど、私が驚いたのは、1970年代どころではなく、モノトーンの映画時代からスタントウーマンが存在した事実と、現在、60-70歳くらいと思われるスタントウーマン達が当時、男性で構成されていた”スタント協会”に加入出来ず、自分達の地位を守るために、”スタントウーマン協会”を設立した話である。
”男女同権”を良いように使われ、一方では男尊女卑に近い雰囲気があった、当時の映画界に風穴を開けた先駆者たちの言葉の尊い事・・。
・女性スタント監督の地位にまで上り詰めたスタントウーマン達の言葉も、重みをもって観る側に響く。
”女性ならではの観点で、映画の雰囲気をつくり、スタントを成功させる。”
”君じゃ無理、と言われる前にやってみせるの。”
・緊張を解すためのドラッグ問題にも触れつつ、スタントで負った怪我(ここも、すさまじい・・)や、撮影中の事故で亡くなってしまった同僚について話す、スタントウーマン達の涙。
◆72歳になった”ジニー・エッパー”が、昔の話を若きスタントウーマンとしているうちに”もう、スタントが出来ない・・、と涙を浮かべながら語るシーン(けれど、70歳!までスタントをやっていたそうである・・)。
若きスタントウーマンが彼女に掛けた
”貴方のスタントシーンは、永久に映画のシーンの中に残る・・”
と言う言葉。
漸く、微笑みを浮かべるジニー。
- このシーンは沁みたなあ・・。-
<危険な仕事に取り組む数々のスタントウーマン達の姿に、プロフェッショナルとしての敬服すべき、矜持を感じた作品。
そして、このドキュメンタリーは”性別関係なく”、全ての働く人に”勇気と、元気と、やる気”を与えてくれる作品ではないか、とも思った。>