「日本が平和である大切さを改めて実感」ミッドナイト・ファミリー KZKさんの映画レビュー(感想・評価)
日本が平和である大切さを改めて実感
ある家族に密着したドキュメンタリー作品。
主人公のオチョア一家は民間事業として救急車を使用し救命活動を行なっている。彼らが拠点とするメキシコシティは900万人の人口を抱えながらも公共の救急車は50台にも満たないという。殆どが民間の救急車に頼りきってるのが現状だという。
ただしオチョア一家は訳あり一家である。国として民間の救急車の使用、救命活動は認められているもののオチョア一家はその資格やそれらに関わる免許等々を殆ど所有していないのだ。
その為警察に目をつけられ、足元を見られて金をゆすられてしまう。
ではなぜ資格を得ないのか。具体的な額はわからないがそれらを得るにもまとまったお金を要するようであり、それらを避ける事で今の無資格で稼業をする闇営業に生きるのであった。
ただ不思議なのがそこまでリスクを背負っても大きなメリットがある仕事のように思えない。
警察にはゆすられて収入の一部を奪われるのはもちろんの事、救命活動後に患者からお金を請求する訳だが支払いを拒まれ一銭も得られない事がこの作品では多く描かれていた。
生活も安定しておらず、水は止められ食事がまともに取れない日も普通にある。知人に借金をしている姿も映し出されていた。
なぜそこまでしてこの仕事に拘るのかは確固たる描写はなかったが、冒頭に長男が語っていたスリルというのがこの仕事を虜にさせるのか。
はたまたメキシコシティではこれ以上に金銭的に恵まれた仕事がなくやらざるを得ないのかも知れない。
ただし彼らがいなくなれば救命活動をできる数は圧倒的に減り市民たちが困るのも事実である。
かといって医療器具、薬まで使用し、そして緊急時は公道を支配する彼らの姿を見ていて無資格無免許である事は許していい問題ではない。
この辺りの解決方法は国がしっかり取り組む以外ほかならないだろう。
またこの作品を見ていて思ったのが彼らの仕事自体民間でやるには厳しさを感じざるを得ない。
オチョア一家のように個人事業として営んでるのが多く存在しているのか、それともある程度の大きさの会社として事業展開してる企業が多く存在しているのかはこの作品内では分からなかったが、少なくとも個人事業として競争させる事業ではない。
結局1人の患者を奪い合いとなり救急車でカーチェイス化しているシーンもいくつかあった。
あれでは二次三次被害を起こしかねないし、仮にも救急運転をしていた際に起きた事故の保険補償なども不透明でありより良い社会を目指すにはマイナスでしかないだろう。
結局彼らの存在があるから国も見て見ぬふりをして放置しているのが現状だというのが強く伝わる。
もちろん問題を放置し国民に投げっぱなしの政治は先進国でもそして日本でも行われている問題ではあるが、ここまで大きな問題を放置しているメキシコの現状を見ると改めて日本が平和である大切さを改めて実感させられる。
こういうドキュメンタリー作品は初めて知る出来る事が多くとても惹きつけられる。とても貴重な時間を過ごす事ができた。