「やっぱり本職の声優さんって、実力あるんですよね。」フラ・フラダンス よしさんの映画レビュー(感想・評価)
やっぱり本職の声優さんって、実力あるんですよね。
スパリゾート・ハワイアンにフラガールとして入社した少女の成長を描く物語。
フラダンスと言う地味な題材。でも、蒼井優を世に出した秀作「フラガール」という先駆がある為に、意外性どころか二番煎を感じてしまい、非常に不安に思いながらの鑑賞でした。
しかし、脚本はヒットメーカーの実力者「吉田玲子」、そして「鋼の錬金術師」の監督を務めた水島氏が総監督の作品ということもあって、とても良くまとまった作品でした。
作品は主人公日羽を含めた新人5人の成長譚。個性が強く、その分だけ欠点も大きい少女達。その5人それぞれを映しながら、個人として・チームとしての緩やかに成長する姿がとても上手に描かれています。
亡くなった姉の存在、キャプテンあやめとの関係、仄かな恋心。前半にあったアイドルコンサートもしっかりと伏線にする抜け目のなさ。見事だと思います。
ただ、それだけに幾つか残念なところが目に付き・・・「勿体ない」と思ってしまいます。
まず『前向きな』残念なところを二つ。
一つ目は、作品全体に芯がないこと。例えば、フラ選手権参加をもっと前に明示されていれば、芯になり得たように思います。
もっと言えば、『姉妹で同じ舞台に立つ』が姉妹の共通の夢・・・という設定をつくり、それをしっかりと明示していれば、エンディングのあやめとの共演迄が見事に繋がったように思えます。
二つ目は、上述のフラ選手権。後輩たちの掛け声の応援は見事でしたが、もっとメリハリを付けて欲しかった。アイドルソングに戸惑う人たち、失笑や笑い声。それでも、徐々に楽しみだす観客、最後は会場一体の声援に・・・そんなボルテージの上昇を魅せてくれた方が、より感動的なシーンになったように思います。
次に『批判』としての残念なところ。
一つ目はダンスシーンのレベル。フラダンスを題材にしている映画なのにチープ過ぎます。『アイカツ』のスタッフが多く係わっているそうですが、良くも悪くもTVアニメレベルに感じます。
例えば、映画『境界の彼方』。冒頭のダンスシーンと比較してどうでしょう。例えば、映画『甲鉄城のカバネリ』。エンディングシーンのダンスと比較してどうでしょう。共に、本編と関係がないプラスアルファのお遊び部分でしたが、素晴らしいクォリティを魅せてくれました。そんな映画を観ているだけに、映画のメインコンセプトのダンスシーンがこれでは、失望を感じてしまいます。
二つ目は声優です。オリジナル映画での俳優女優の抜擢は珍しくありませんが、それなりに力量のある方を抜擢して欲しいと強く希望します。この作品で言えば、特に鈴懸涼太を演じたディーン・フジオカのレベルが低く、聞くたびに物語から気持ちが離れて行きました。
厳しい批判もしましたが、映画全体を観れば上述の通り完成度の高い映画だと思います。私的評価は普通にしました。