劇場公開日 2021年9月10日

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「文化は不要不急でも不謹慎でもない」浜の朝日の嘘つきどもと 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0文化は不要不急でも不謹慎でもない

2021年10月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

この映画の舞台となっているのは、南相馬市にある朝日座という、かつて実在した映画館だ。今は営業していないのだが、建物はまだ残っている。震災の時にはすでに閉館していたが、震災直後、地域住民のために映画上映会を企画し、憩いの場として機能した。図書館も市民会館も稼働していない時期だったので、市民は娯楽に飢えていたのだ。震災当時、全国で娯楽活動を「不謹慎」と自粛させる空気が蔓延したが、被災者たちは水と食料、住居の他にも娯楽を必要としていたのだ。
2012年にここを訪ねたことがある。大正12年に建てられただけあって、大変に趣深い場所だった。映画館になる前は芝居小屋だったらしく、奈落や桟敷も残っていたのが印象的だった。落語家の柳家喬太郎をキャスティングしたくなる気持ちはよくわかる。実に建物と柳家喬太郎がマッチしていた。
コロナで全国の娯楽が不要不急と言われた。しかし、震災の時に映画という娯楽は被災者に「必要」とされた。それを象徴する場所で、コロナ禍での娯楽の大切さを問う映画を作るという発想が素晴らしい。「この映画を作ってくれてありがとう」と言いたい。

杉本穂高