ドライブ・マイ・カーのレビュー・感想・評価
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もののあはれを感じた
妻の名前が音というのが(映画オリジナル)、変わっているなと思いましたが、もちろんちゃんと意味があるんですね。
車の中に流れる音のセリフの声はまるで呪縛のようです。
妻の話とは何だったのか。
それにしても家福と高槻は対照的ですね。高槻は白黒はっきりさせる性格。それに対して家福は音の浮気現場を見ても何も言わない。おそらく子どもを亡くした時も二人はつっこんだ話をしなかったのではないでしょうか。
音がセックスのあとにしていた、空巣にはいる女子高生の話。その続きを高槻から聞かされるシーンが圧巻です。これは夫に対する音の思いを代弁するものだからです。なぜ何もなかったふりをするのかと音は訴えたかったのでしょう。高槻はそんな夫婦関係を察していたのでは。
その話のあと、家福は初めてみさきの隣にすわります。
二人が車で北海道をめざすシーンでしばし音がなくなるのが印象的でした。
みさき役の三浦透子さんは車の免許を持っていなくてキャスティングが決まってから取得されたとか。濱口監督も車の運転をしないと聞いて驚きました。
韓国手話で話す夫婦もいいですね。
チェーホフの舞台の最後の手話のシーンでは思わず涙がこぼれました。手話だからそこには音がない。家福が喪失を乗り越えていく希望を感じさせます。
字幕を見ないと「ワーニャ伯父さん」の最後の台詞の意味はわからないのですが、それでも表情と手の動きで伝わってきます。
考えてみたら理解しあうのに言葉は大事だけどそれだけじゃないんだと思いました。犬とだって気持ちは通じることだしね。
三時間の映画なので迷いましたが、見てよかったです。
3時間は長くなかった
村上春樹の小説が原作だというので観に行きました。
私は初期の作品のフアンなので、後の作品はすべて読んでいるわけではないけど、この小説はたぶん読んでいないと思う。
なので、どこが原作でどこが演出なのか全く分からなかったです。
村上春樹が原作でなくてもとても興味深い映画でした。
ただいくつか説明的すぎるシーンが見られて、それゆえ3時間になったのか?とも感じたけど、3時間を感じさせない展開だったと思いますが、村上作品ならもう少し想像の余地を残しておいて欲しかったかな。
普遍的なテーマであり、現代の日本においてはさらに身近に感じるテーマであると。
初めから何度か刺激的なシーンが続き、どうなるのかな~と危惧していましたが、それは必要なシーンだと、後になって納得してみたり。
演劇と絡めた脚本は新鮮で面白かったです。
やっぱり名作って奥が深いな~とあらためて舞台を観に行きたくなりました。
西島さんと岡田君は相変わらずだったかな。
女優さんたちが、とても良かったです。
不自然を自然に見せていく3時間
不思議に見える人を、不自然に見える言動を、必然であり自然なことなんだと説明していく映画です。確かにこの尺が必要なんだと思えました。これは是非映画館で観る映画です。
祝 日本アカデミー賞8冠/米国アカデミー賞国際長編映画賞 受賞で追記 22/3/28
この映画が評価されるのはわかります。
外国語多文化を取り入れているし、
全く理解できない人や行動をだんだんわかっていく過程を丁寧に描いているところがとてもいい。
そして西島秀俊の演技が、彼のこれまでの経験が、滝口監督の演出によって最高レベルで家福を表現できたんだなと思う。
でも星の数は変えません。
今の自分には★3.5ですが10年くらいすると★4.5なるような気がします。そういう映画はめったにないです。それは名画のひとつの要素なのかもしれません。
鑑賞前にはトイレに行ってね!途中行くのはもったいない。
出だしから惹きつけられ、最後まで目が離せませんでした。
手話を含む多言語のチェーホフの舞台、実際に鑑賞したいなと思いました。
2人のタイプの違う韓国女優さんたち、それぞれ存在感がありました。
本当に大切な人だから、失うかもしれないと思うときちんと向き合えない。
本音を言えない。
そういう気持ち、分かります。
でも、かけがえのない相手ならなおさら、その人を信じて、踏み込んで、ちゃんとお互いに分かり合う努力をしなきゃと思いました。
そこでリスクを取らずに逃げ回って、結局関係が破綻したら、死ぬほど後悔するよね…。
失うかもしれないから近付けないと思うほど、好きな人なんて人生で一桁だと私は思います。
静かに、心にメッセージが届く映画です。
大好きな人に会って、ただ抱きしめたくなります~。
長い、長すぎ。
ここはサクラだらけ?ですか?
上映時間考えずに、多少の予備知識で見に行きました。
しかし、途中で早く終わらないか?と
思いながら見てました。
ホントに長い。
監督や役者が好きでないと耐えられない長さ。
セリフも入って来ない。
金を返せ、とは言わないが、
一回見たらもういいかな?
もとは短編と言うけれど。
上映時間3時間?!
出演している役者、作品の雰囲気と内容。色んな所が気になった。でも、一番気になったのは、なぜ長尺でなければならないのか。
その理由が知りたかった。
そして、実際に観終わってから納得した。内容を理解するには必要な時間だった。所々で出てくる、日常のありふれた音と風景だけの映像すらも。
少しでも気になるのならば見て損はないと思います。観終わった、帰りの車の運転はきっと安全運転なはず。 笑
あっという間の179分
静寂の中に圧倒されるような約3時間でした。最近の映画としては上映時間は長い作品ですが、最初から最後まで繊細に、大事な伏線がいくつもあるからこそ集中してしまいました。物悲しさと温かさの調和、背景の多くも東京ではなく洗練された中の情緒ある地方都市の風景もなんとも言えない美しさがあります。
原作はもちろん、監督、実力派の役者さんたちの創り出す世界は傑作でした。終盤のシーンは今の時代だからこそ考えさせられる言葉、所作の一つ一つが圧巻でした。
素晴らしい時間をありがとうございました。
次から次へと ようやく目的地に辿り着くドライブ
先に原作を読んだらどんな感想になるだろうという好奇心による原作既読。
30分で読める短篇がここまで、3時間の尺に発展させられるとは、一つの驚き。
村上の作った線画が、濱口の手によって色と背景を付けられ、具現化されたという喜びの発見だった。そしてその長い脚本に、無駄な力入れは一つもなかった。
映画は、小説と違って時間線に沿って物語を伸ばしていき、家福の視点から問題を投げ出し、またそれを解くドライブに観客を誘った。
後の工程は玉葱の皮剥きのように、芯までどんどん深まっていく。その鍵となる人物は、高槻とみさきだった。
家福と高槻の違いは、観客には分かりやすかった。高槻はたしかに自分のコントロールができなく、現実上、芝居と同様に人の深いところまで突き止める。家福はその反対。
高槻が車で言ったことは正直で、胸に響いた。小説で村上が書いたまんまだ。そして最後に警察に連れられたときまでも、彼の言ったように空っぽかもしれないけど偽りなかった。
そんな高槻の逮捕によって課題は家福に残された、家福は自分の問題に直面しなければならなかった。そしてオリジナルの北海道の旅は更なる救いで、もっと直接の答えになった。本当の自分と向き合えるのだ。そんな自分を持って人と向き合うのだ。演劇祭の人たちのように、言語がちがっていても。
最後の手話のシーンが良かった。声がでなくても、ちゃんと強く伝わったことがあるんだ、と思わせた、全編を収束した力強いシーンだった!
最後に言及しなければならない二つのメタファーは観客の助けにもなった。音のミツメウナギの話と劇中劇...前者は音にまつわる伏線、後者はストーリーを貫通する家福の心理劇....どっちも表現が素晴らしかった。
芸術性を追求する一方の分かりにくい映画より、このような誰にとっても大事な心得を誰でも分かるようで、また吟味させられて考えさせられるような面白い表現で伝えた方がずっとテクニカルだと思う。振り返って見ると、ちょっとの遠回りかもしれないが、いい景色だった。
秋の映画って感じ
芸術的な作品です。
これから深まる秋にふさわしい映画だと思いました。
最近、立て続けに娯楽映画を鑑賞していたのでより新鮮に感じました。。「ブラックウィドウ」「フリーガイ」「スペースプレイヤーズ」「チャンシー」「竜とそばかすの姫」ときてドライブマイカー。
観客層が全然違いました。自分を含めてお一人様のおじさま、おばさまが多かったです。見終えてからkindleで原作を読もうとあらかじめ買っておき、短編のはずだけどどこまでが原作なのか想像しながら鑑賞していましたが全体的に雰囲気が村上春樹っぽく見定めることができませんでした。3時間は長いなーと思いつつ、冒頭30分ほどで「あれ?これまだアバンタイトル?」と思った直後にほんとに「(主演)西島秀俊」と文字が出てきてそりゃ長いよねと納得。しかし、綺麗な景色と落ち着いた演技、先の読めない展開で意外にも娯楽作品にもなっているなーと感心。終わってみればあっという間でした。
見終わってしばらくして、そういえばこの俳優さん「ゼロの焦点」では秘密を持ったまま冒頭に消える役立ったけど今度は真逆で秘密を追う側になっているなーと思って妙に納得してしまいました。
悲しみの果てに
サーブのエンジン音とカセットテープに吹き込まれたワーニャ伯父さんの台詞
喪失感を抱え不穏な空気を纏いながら淡々と物語は進む
そこに踏み込むのが良かったのかはもはや知りようもない
人はどんなに繋がっていても完全に知ることなど出来ないし、自分の事ですら知りえてない
それでもまた人の出会い、繋がりは新たな可能性を生み浄化された魂は新たな道を進み出す
傷ついた魂の再生物語
長さは感じなかった。テンポよく場面が展開していく。
亡くなった妻の裏切りをきちんと受け止めなかったために前に進めなくなった男、家福と虐待された親を見殺しにしてそこから逃げた女、みさき。そして裏切り相手が目の前に現れたことで、物語が大きく展開していく。
家福は自分の分身のような車に長く乗り続け、その中で聞く妻の声のテープでセリフを言うという習慣を変えることなく、過去に縛られ続けていた。そしてそこに初めて他人のみさきがドライバーとして加わったのだ。
この時、すでに物語は動き始めていたのだろう。
裏切り相手に妻のことを語られ、深く傷つく。この男は何のために家福の前に現れたのか。同じ相手を愛したことで思い出を語りにきたのか。
過去の痛みを抱えた2人がたどり着いた場所で、自分の気持ちに向き合う。そこで出た結論は2人の再生への予感となって、映画のラストを明るくしてくれた。
とてもいい話だったしインパクトも感動もあった。
ただ、村上春樹ファンとしては、ここまで全てを語らせる必要があったのかとちょっと引いてしまった。もう少し、余韻というか、観客に委ねる部分があってもいいかなぁと思った。
劇場版でしか成立しない作品
微妙な作品。
ちょっと長い。終盤トイレに行きたくなる人が多いと思う。おまけに答えはないというか答えを求める作品ではない。
しかし観てしまうし先が気になるしすんなり終わってもあまりがっかりもしない。不思議だ。これが素直な感想です。
でももう一度観るかと言われたら観ないと思います。
劇中劇がよい
様々な言語が飛び交う「ワーニャ伯父さん」は、普段われわれが同じ言語で言葉を交わしながらも、相手の真意が理解できていなかったり、会話が成立しているようで齟齬していることを象徴しているのだろう。この舞台に参加している俳優たち、それぞれがとても良いので見入ってしまう。
夫婦、親子でも意思疎通することの難しさ、それでも言葉を重ねることでしか歩み寄れないのが人というもの。
それを怠り、暴力という手段に訴えて破滅するのが岡田将生演じる若手俳優なのだろう。
三浦透子はこの先どんな演技を見せてくれるのか非常に楽しみな女優だ。この作品のために運転免許を取得したというのは驚き。
居心地の良い違和感
観に行くタイミングがなく、公開から3週経ってようやく鑑賞。
序盤の主人公・家福の奥さんの不倫や夫婦としてのセックスで創作を生み出している様子を見ると、刺激が欲しくてたまらないんだろうなと思い、生々しくもリアリティがあって感心しました。奥さんの突然のくも膜下出血での死も悲しい出来事だけに終わらず、後半に活かしてくるのでまた驚きました。
タイトル通り、今作は車に乗っているシーンが多めですが、その車に乗っている時間が観ている側からしてもとても居心地の良いもので、最初はドライバー・渡利がつくことを敬遠していた家福が、彼女の運転スキルを認めて、話の輪を広げたり、オススメの場所を教えて貰ったり、助手席に座ったり、車内タバコを許したりと、信頼していく描写を車内で表している魅せ方はグイグイと引き込まれるものがあり、凄いなと思いました。
役者陣の演技もとっても見応えがあり、西島さんの物語のテンポにビシッとハマる舞台上での演技や、カセットテープに合わせての語り、物語上殆ど激昂する場面はありませんが、様々な感情が飛び交っていました。三浦透子さんの淡々とした喋りもとっても心地が良くて、高槻演じる岡田将生さんの別人が憑依したかのような狂気的な部分も見ることができて良かったです。手話での会話で育んだ愛とメインストーリーではないものにもスポットが当たっており、バランス良く観ることができました。
高槻が喧嘩でボッコボコにした相手が死んでしまい、高槻が逮捕され、舞台が一度滞ってしまいますが、ここで何を思ったか家福が終盤で広島から北海道へドライブするというぶっ飛んだ流れを平然とやってのけるので笑ってしまいました。汚点という訳ではありませんが、急に現実味消えたなと思いました笑。北海道で語られる2人の過去の話は、殺しと同様に残されたものがずっと背負っていくものという描写には震えました。決して自分は悪くないのに、目に焼きつけた光景を背負っていくという生々しさが垣間見えました。
なんとか舞台も成功に導き、最後は家福の車を渡利が引き受けて終わりました。原作を読んでいないので最後はよく分かりませんでしたが、前向きに進んでいるんだろうなという感じに自分は捉えました。
179分という短い映画なら2本観れる長さですが、そんな長さを感じさせないくらいあっという間に終わりました。上映時間の長さで敬遠されている方がいたら、そんなこと気にせずに観に行って欲しいなと思いました。
鑑賞日 9/9
鑑賞時間 12:40〜15:50
座席 H-1
評判が良かったので
役者よし、映像よし、脚本よし。
3時間を感じさせない多分いい映画なんだと思います。
ただ、やっぱり村上春樹っぽさ満載で、なんか気持ち悪い。理屈っぽい。
その上見に来てる人もいかにも村上春樹世代。60〜70代の元教師っぽい人、昔学生運動してたでしょっぽい人ばっかり。
最後まで好きになれなかった。
透子運転の車に揺られているような心地よさ
2021年劇場鑑賞18本目 傑作 75点
公開日に見にいったのにも関わらず、2週間近くレビューしていなかった作品。
私が一番好きな俳優さんである西島秀俊さん主演ということで、期待していましたが期待通りの作品でした。
平日の朝からの上映だったのにも関わらず、ほぼ満員で観客の年齢層が非常に高めで、国外で評価を受けているので聞きつけて足を運んだ人も多いのかなと思い、いち西島さんファンとして嬉しかったです。
作品についてですが、久しぶりに心地よい、近年の邦画に多い安っぽさを感じられないこれぞ映画だよねと思えた作品でした。
上映時間が3時間近くありますが、その長さを感じないほどの充実感で、表現の上でのゆとりが随所で感じられ、意味のある3時間だと思いました。
ドラマ上りや実写映画、キャストばかり豪華な作品のような、邦画特有の気質がある作品が増える中、こういった空気を感じられる作品もちゃんと残り続けてほしいです。
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