ドライブ・マイ・カーのレビュー・感想・評価
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村上春樹作品をうまく実写化できたと思う。
村上春樹の作品は『いや、こんな無感動にリリカルなセリフを長々としゃべる人間いねーよ』と、若干不自然さを感じるところがあります。でも、淡々とならべられる奇麗な言葉をみてると心地よく、自分は彼の書く文章がある種の呪文のように感じています。
村上春樹原作の映画ではノルウェイの森を見たことがあるのですが、それほどおもしろくなく、彼の作品の映像化はやはり難しいと感じていました。
しかしドライブマイカーは彼の作品の雰囲気をうまく再現できてる気がしました。 余計なBGMや効果音をほとんど入れずに、演者たちのセリフに注目するようにとったのが良かったし、演者の演技もよかったと思います。
主演に声に魅力のある西島秀俊さんを起用したのもよかったと思います。
セリフが長いので上映時間が3時間とかなり長めになってしまいましたが、最初から最後まで退屈せず面白かったです。
映画とは邦画とは
もののあはれを感じた
妻の名前が音というのが(映画オリジナル)、変わっているなと思いましたが、もちろんちゃんと意味があるんですね。
車の中に流れる音のセリフの声はまるで呪縛のようです。
妻の話とは何だったのか。
それにしても家福と高槻は対照的ですね。高槻は白黒はっきりさせる性格。それに対して家福は音の浮気現場を見ても何も言わない。おそらく子どもを亡くした時も二人はつっこんだ話をしなかったのではないでしょうか。
音がセックスのあとにしていた、空巣にはいる女子高生の話。その続きを高槻から聞かされるシーンが圧巻です。これは夫に対する音の思いを代弁するものだからです。なぜ何もなかったふりをするのかと音は訴えたかったのでしょう。高槻はそんな夫婦関係を察していたのでは。
その話のあと、家福は初めてみさきの隣にすわります。
二人が車で北海道をめざすシーンでしばし音がなくなるのが印象的でした。
みさき役の三浦透子さんは車の免許を持っていなくてキャスティングが決まってから取得されたとか。濱口監督も車の運転をしないと聞いて驚きました。
韓国手話で話す夫婦もいいですね。
チェーホフの舞台の最後の手話のシーンでは思わず涙がこぼれました。手話だからそこには音がない。家福が喪失を乗り越えていく希望を感じさせます。
字幕を見ないと「ワーニャ伯父さん」の最後の台詞の意味はわからないのですが、それでも表情と手の動きで伝わってきます。
考えてみたら理解しあうのに言葉は大事だけどそれだけじゃないんだと思いました。犬とだって気持ちは通じることだしね。
三時間の映画なので迷いましたが、見てよかったです。
3時間は長くなかった
村上春樹の小説が原作だというので観に行きました。
私は初期の作品のフアンなので、後の作品はすべて読んでいるわけではないけど、この小説はたぶん読んでいないと思う。
なので、どこが原作でどこが演出なのか全く分からなかったです。
村上春樹が原作でなくてもとても興味深い映画でした。
ただいくつか説明的すぎるシーンが見られて、それゆえ3時間になったのか?とも感じたけど、3時間を感じさせない展開だったと思いますが、村上作品ならもう少し想像の余地を残しておいて欲しかったかな。
普遍的なテーマであり、現代の日本においてはさらに身近に感じるテーマであると。
初めから何度か刺激的なシーンが続き、どうなるのかな~と危惧していましたが、それは必要なシーンだと、後になって納得してみたり。
演劇と絡めた脚本は新鮮で面白かったです。
やっぱり名作って奥が深いな~とあらためて舞台を観に行きたくなりました。
西島さんと岡田君は相変わらずだったかな。
女優さんたちが、とても良かったです。
不自然を自然に見せていく3時間
不思議に見える人を、不自然に見える言動を、必然であり自然なことなんだと説明していく映画です。確かにこの尺が必要なんだと思えました。これは是非映画館で観る映画です。
祝 日本アカデミー賞8冠/米国アカデミー賞国際長編映画賞 受賞で追記 22/3/28
この映画が評価されるのはわかります。
外国語多文化を取り入れているし、
全く理解できない人や行動をだんだんわかっていく過程を丁寧に描いているところがとてもいい。
そして西島秀俊の演技が、彼のこれまでの経験が、滝口監督の演出によって最高レベルで家福を表現できたんだなと思う。
でも星の数は変えません。
今の自分には★3.5ですが10年くらいすると★4.5なるような気がします。そういう映画はめったにないです。それは名画のひとつの要素なのかもしれません。
鑑賞前にはトイレに行ってね!途中行くのはもったいない。
出だしから惹きつけられ、最後まで目が離せませんでした。
手話を含む多言語のチェーホフの舞台、実際に鑑賞したいなと思いました。
2人のタイプの違う韓国女優さんたち、それぞれ存在感がありました。
本当に大切な人だから、失うかもしれないと思うときちんと向き合えない。
本音を言えない。
そういう気持ち、分かります。
でも、かけがえのない相手ならなおさら、その人を信じて、踏み込んで、ちゃんとお互いに分かり合う努力をしなきゃと思いました。
そこでリスクを取らずに逃げ回って、結局関係が破綻したら、死ぬほど後悔するよね…。
失うかもしれないから近付けないと思うほど、好きな人なんて人生で一桁だと私は思います。
静かに、心にメッセージが届く映画です。
大好きな人に会って、ただ抱きしめたくなります~。
長い、長すぎ。
もとは短編と言うけれど。
上映時間3時間?!
出演している役者、作品の雰囲気と内容。色んな所が気になった。でも、一番気になったのは、なぜ長尺でなければならないのか。
その理由が知りたかった。
そして、実際に観終わってから納得した。内容を理解するには必要な時間だった。所々で出てくる、日常のありふれた音と風景だけの映像すらも。
少しでも気になるのならば見て損はないと思います。観終わった、帰りの車の運転はきっと安全運転なはず。 笑
あっという間の179分
次から次へと ようやく目的地に辿り着くドライブ
先に原作を読んだらどんな感想になるだろうという好奇心による原作既読。
30分で読める短篇がここまで、3時間の尺に発展させられるとは、一つの驚き。
村上の作った線画が、濱口の手によって色と背景を付けられ、具現化されたという喜びの発見だった。そしてその長い脚本に、無駄な力入れは一つもなかった。
映画は、小説と違って時間線に沿って物語を伸ばしていき、家福の視点から問題を投げ出し、またそれを解くドライブに観客を誘った。
後の工程は玉葱の皮剥きのように、芯までどんどん深まっていく。その鍵となる人物は、高槻とみさきだった。
家福と高槻の違いは、観客には分かりやすかった。高槻はたしかに自分のコントロールができなく、現実上、芝居と同様に人の深いところまで突き止める。家福はその反対。
高槻が車で言ったことは正直で、胸に響いた。小説で村上が書いたまんまだ。そして最後に警察に連れられたときまでも、彼の言ったように空っぽかもしれないけど偽りなかった。
そんな高槻の逮捕によって課題は家福に残された、家福は自分の問題に直面しなければならなかった。そしてオリジナルの北海道の旅は更なる救いで、もっと直接の答えになった。本当の自分と向き合えるのだ。そんな自分を持って人と向き合うのだ。演劇祭の人たちのように、言語がちがっていても。
最後の手話のシーンが良かった。声がでなくても、ちゃんと強く伝わったことがあるんだ、と思わせた、全編を収束した力強いシーンだった!
最後に言及しなければならない二つのメタファーは観客の助けにもなった。音のミツメウナギの話と劇中劇...前者は音にまつわる伏線、後者はストーリーを貫通する家福の心理劇....どっちも表現が素晴らしかった。
芸術性を追求する一方の分かりにくい映画より、このような誰にとっても大事な心得を誰でも分かるようで、また吟味させられて考えさせられるような面白い表現で伝えた方がずっとテクニカルだと思う。振り返って見ると、ちょっとの遠回りかもしれないが、いい景色だった。
秋の映画って感じ
芸術的な作品です。
これから深まる秋にふさわしい映画だと思いました。
最近、立て続けに娯楽映画を鑑賞していたのでより新鮮に感じました。。「ブラックウィドウ」「フリーガイ」「スペースプレイヤーズ」「チャンシー」「竜とそばかすの姫」ときてドライブマイカー。
観客層が全然違いました。自分を含めてお一人様のおじさま、おばさまが多かったです。見終えてからkindleで原作を読もうとあらかじめ買っておき、短編のはずだけどどこまでが原作なのか想像しながら鑑賞していましたが全体的に雰囲気が村上春樹っぽく見定めることができませんでした。3時間は長いなーと思いつつ、冒頭30分ほどで「あれ?これまだアバンタイトル?」と思った直後にほんとに「(主演)西島秀俊」と文字が出てきてそりゃ長いよねと納得。しかし、綺麗な景色と落ち着いた演技、先の読めない展開で意外にも娯楽作品にもなっているなーと感心。終わってみればあっという間でした。
見終わってしばらくして、そういえばこの俳優さん「ゼロの焦点」では秘密を持ったまま冒頭に消える役立ったけど今度は真逆で秘密を追う側になっているなーと思って妙に納得してしまいました。
悲しみの果てに
傷ついた魂の再生物語
長さは感じなかった。テンポよく場面が展開していく。
亡くなった妻の裏切りをきちんと受け止めなかったために前に進めなくなった男、家福と虐待された親を見殺しにしてそこから逃げた女、みさき。そして裏切り相手が目の前に現れたことで、物語が大きく展開していく。
家福は自分の分身のような車に長く乗り続け、その中で聞く妻の声のテープでセリフを言うという習慣を変えることなく、過去に縛られ続けていた。そしてそこに初めて他人のみさきがドライバーとして加わったのだ。
この時、すでに物語は動き始めていたのだろう。
裏切り相手に妻のことを語られ、深く傷つく。この男は何のために家福の前に現れたのか。同じ相手を愛したことで思い出を語りにきたのか。
過去の痛みを抱えた2人がたどり着いた場所で、自分の気持ちに向き合う。そこで出た結論は2人の再生への予感となって、映画のラストを明るくしてくれた。
とてもいい話だったしインパクトも感動もあった。
ただ、村上春樹ファンとしては、ここまで全てを語らせる必要があったのかとちょっと引いてしまった。もう少し、余韻というか、観客に委ねる部分があってもいいかなぁと思った。
劇場版でしか成立しない作品
劇中劇がよい
様々な言語が飛び交う「ワーニャ伯父さん」は、普段われわれが同じ言語で言葉を交わしながらも、相手の真意が理解できていなかったり、会話が成立しているようで齟齬していることを象徴しているのだろう。この舞台に参加している俳優たち、それぞれがとても良いので見入ってしまう。
夫婦、親子でも意思疎通することの難しさ、それでも言葉を重ねることでしか歩み寄れないのが人というもの。
それを怠り、暴力という手段に訴えて破滅するのが岡田将生演じる若手俳優なのだろう。
三浦透子はこの先どんな演技を見せてくれるのか非常に楽しみな女優だ。この作品のために運転免許を取得したというのは驚き。
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