「きちんと傷付くということ」ドライブ・マイ・カー 猫柴さんの映画レビュー(感想・評価)
きちんと傷付くということ
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序盤で妻の不倫を目撃、そして妻が脳梗塞で急死
という事件があるのだが、そのあとの2時間以上は広島での芸術祭でのチェーホフの戯曲を演出するためのオーディションや稽古風景がドキュメントのようにつづいていく
繰り返される棒読みのセリフ
無表情な人々 流れる景色
外国語や手話が混ざり合い進む稽古
パラドックスに迷い込んだかのような感覚
自分の知らない妻を知っている男
他人を理解することなんてできない
大切なのは自分を深く知ることだ
その為に傷や悲しみから目をそらさず
きちんと傷付くこと
真っ白な雪の中に停まる赤いSAAB
静寂
空想話を口にしては男性とセックスし
次の日忘れてしまう女
10歳のサチという別人格でしか娘と遊べない女
狂っているのか演技なのか
でもその女を信じるしかなかった2人の人間
傷を癒すには傷をしっかりと受け入れるしかない
ラストの家福のステージシーンで手話の少女の台詞
そして韓国で顔の傷がなくなり
どこか晴れ晴れとした表情で車にのる
ドライバーに
残された者たちが生きることに少しの光を見出した事を示唆する美しいエンディングでした。
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