「映画としては…」ドライブ・マイ・カー Film_Montageさんの映画レビュー(感想・評価)
映画としては…
受賞したから手放しで誉めるというつもりはない。
映画にはエンタメ性と芸術性が同居するから、万人受けするものが映画として優れれているとは限らないからだ。
本作を観た感想は、やはりエンタメではなく賞を獲りにいこうとしているように感じた。
約3時間という上映時間もそうだし、海外でも有名な村上春樹氏の原作を用いている事もそうだ。劇中に多様性を持ち込んでいる事もその一つに思える。
総じて言うと途中までは素晴らしいと思った、妻である音の裏の顔を知りつつも目を背け、愛する妻を手放したくない家福のバックグラウンドを丁寧に描き、妻の死で一幕目が終わる。
そこから二年後、キャストやスタッフのクレジットと共に物語が始まる。つまり、妻の死までは長いプロローグでそこからこの映画の物語は始まるという事なのだろう。
この映画のテーマである【喪失と再生】を描く為に、丁寧に心情を積み重ねていく作り方は理解できるし、劇中の演劇のセリフを用いて再生していく為に必要な言葉は、表現として理解できる。
ただやはり長すぎると思った。3時間近くある名画はいくつもあるが、この作品に関しては長いと思った。既にお腹がいっぱいで終わるかなと思った所から3回程始まる感じがして、最後は疲れてしまった。
賞を獲りにいく映画を作って、カンヌやアカデミーで受賞したのだから、作り手としては狙い通りなのかもしれないが、エンタメ性をもう少し考慮するのであれば、あと最低でも30分、出来れば40分ほど切って2時間20分くらいの上映時間であれば名作になったのではないかと、個人的に思う。
ラストは二人それぞれの再生を見せる必要があるのは分かるので、家福は戯曲をかすみは左頬の傷を消し犬を飼っていた韓国人夫婦と近しい生活をしているのか…。