「やがて眠くなる外国語」ドライブ・マイ・カー 野川新栄さんの映画レビュー(感想・評価)
やがて眠くなる外国語
2022年映画館鑑賞4作品目
2月6日(日)フォーラム仙台
原作既読
原作は『風の歌を聴け』『トニー滝谷』『ノルウェーの森』の村上春樹
監督と脚本は『寝ても覚めても』『スパイの妻』の濱口竜介
原作は短編だがよく膨らました
2時間59分
それもそのはずで『ドライブ・マイ・カー』が収録されている短編集『女のいない男たち』の『シェエラザード』『木野』も元ネタ
家福悠介(西島秀俊)
舞台俳優で演出家
音とのあいだに生まれた幼い娘を亡くしている
緑内障を患う
愛車は赤いサーブ
渡利みさき(三浦透子)
家福悠介の運転手
北海道出身
土砂崩れで母を亡くしている
無表情
家福音(霧島れいか)
悠介の妻
元女優
浮気性
蜘蛛膜下出血で他界
高槻耕史(岡田将生)
舞台俳優
悠介演出の舞台『ワーニャ伯父さん』に参加
年齢にあわない配役に不満
稽古中に傷害致死の疑いで逮捕される
世界で高く評価されたこともあってか映画館は大盛況
この客の入りは新型コロナを考慮すると『おくりびと』以来
両隣に人がいるのは久々
村上春樹ファン歴は長く30数年以上で彼に影響を受けたわけではないがスワローズファン歴も同じくらい
村上春樹作品は映像化に向いていないと思うので今回映画館で鑑賞するのは躊躇った
村上春樹原作映画を映画館で観るのは初めて
脇役数名のやりとりで外国語のセリフは念仏みたいで眠くなるというようなものがあったがたしかにそれは一理あり
本読みのとき何故か家福が役者の皆さんに棒読みを要求するわけだがこれが良くない
家福劇団の一番の売り?舞台奥のスクリーンに字幕スーパーが出る日本語と外国語の融合
おまけに原作はロシア文学
日本語と北京語と韓国語と手話の組み合わせが脳内をショートさせ拒否反応が何度も幕を下ろしかける
高槻がサーブで話す空き巣に入る女子高生の続きの話
札幌で働く母を送迎するために中学から車の運転をはじめたというみさきのあの話
この二つの逸話が良かった
病的なまでにクールな役を演じる三浦透子がいい味を出していた
霧島れいかはわりとヌードになるが背中中心で乳首は出さなかった
それでもまあ陰鬱で妖艶な芝居で悪くはなかった
原作のサーブは黄色だが映画では赤だった
多摩ナンバーで3982(サンキューハニー)
サーブで広島市から北海道
モトーラ主演『風の電話』は広島市から岩手県大槌町なのでそれを遥かに凌ぐ2000キロ越え
原作は初め中頓別町だったが地元政治家の抗議で架空の町に変更されている
約3時間のためか観終わったらお尻が痛かった
むず痒くなる淫語のやりとりと眠気を誘う本読みの稽古を我慢して乗り切った甲斐がありおよそ3時間のドライブは無事目的地に到着
北海道で2人が抱擁する場面のおかげもあり映画館で観て良かったと思う
約3時間どころか3時間越えでも古今東西名作は多い
それらに比べるといまいちは否めない
観客から溜息が聞こえてきたのは大林宣彦監督の遺作以来だがこの作品はそれほど苦痛は感じなかった
村上春樹が嫌いな人には向いていない
話題になってるからといって度々苦手なジャンルを決して安くない金額を払い映画館で観たあと腹を立ててレビューに思いをぶつける人たちは愚かだと思う
何故そんな無益なことをするのか僕は全く理解できない
アメリカのアカデミー賞受賞が期待されるがノーベル文学賞同様の結果になりそうな気がしてならない
外人がどう評価しようがどうでもいいけど
戦争に負けたせいか欧米の白人に褒められると嬉しい日本の人たちってわりと年配に多そう