「フィンチャー映画史上、最も熱い物語かも。」Mank マンク 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
フィンチャー映画史上、最も熱い物語かも。
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ハーマン・マンキウィッツとオーソン・ウェルズが、『市民ケーン』の脚本クレジットをめぐって対立した事実をもとにした時代ものだが、決して史実に忠実なノンフィクションではない。極力、1930年代の映画のルックに近づけるというマニアックでフィクショナルな映像を通じて描かれるのは、権力に抗い、人権や自由を守るために、せめて自分ができることで一矢を報いようとした男の反骨精神なわけだが、これも実在のマンキウィッツをそのまま描いたというより、伝説的な映画人たちを使って生み出された、一種の二次創作だと思った方がいい。
もともとはデヴィッド・フィンチャー監督の父親でジャーナリストだったジャック・フィンチャーが「ウェルズvsマンキウィッツ」的な脚本を書いたところデヴィッドにダメ出しされ、アプトン・シンクレアによる社会革命運動の弾圧という裏テーマを持ち込んで改稿したことで生まれた物語だという。史実の再現ではなく、あくまでも歴史上の人物をモチーフにしたフィクションであり、父親の熱血ストーリーを非常に凝ったアプローチで息子デヴィッドが映像化したことで、とても奇妙な、熱さと冷たさが同居した映画が生まれた。とても面白いコラボレーションだなと思う。
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