「市民ケーンと見事にリンクしてる」Mank マンク superMIKIsoさんの映画レビュー(感想・評価)
市民ケーンと見事にリンクしてる
NETFLIXでの鑑賞です。
本作を観る方はまずあの傑作「市民ケーン」鑑賞していただきたい。
何故そうなるのかと云うと本作は市民ケーンとリンクしているからです。市民ケーンの世界と混ざり合っていて、鑑賞後どちらの映画のシーンだったのか混乱する程です。
本作はそこを狙って作ったのだと思います。モノクロ画面や音楽の雰囲気、作品内の音など技術的な部分を、80年も前の作品である市民ケーンに合わせているのです。オーバーラップなど当時主流だった場面切り換えも積極的に使用しています。面白いのはデジタル映画にも拘わらず、懐かしのフィルムの切り換えマークまで入っています。
内容的には市民ケーンの脚本の制作過程を中心に、脚本家のマンキウィッツとウエルズ、ハーストとの関係、そしてハリウッドシステム全盛の当時のアメリカ映画界を丁寧に描いていて、とても興味深く鑑賞することが出来ました。
本作を観て驚いたのはマンキウィッツと新聞王ハーストに交友関係があったこと。MGM社長のメイヤーとも友人関係であり、映画界でマンキウィッツは力を持っていたことが分かったことです。にもかかわらず彼は新聞王ハーストに挑んでいったのです。
市民ケーンはご存じのようにハーストの妨害活動によりオスカーは脚本賞しか受賞していません。しかし世界映画史上のベスト10ではいつも上位に挙がる大傑作です。市民ケーンを語る時、必ず最初に挙がるのは天才オーソン・ウェルズの存在です。反面マンキウィッツの存在について語られることは余りありません。しかしあの傑作の物語を書き上げたのはハーマン・J・マンキウィッツであり、本来はオーソン・ウエルズと同等の評価を得られてもおかしくありません。多分監督のデビッド・フィンチャーもそう思い本作を製作したのだと思います。
本作は脚本の見事さと画面の緻密さと美しさ。主人公を演じたゲイリー・オールドマンの演技の素晴らしさ、リリー・コリンズの演技の見事さなど、その他見所は幾つもあります。
昨年は米国内では余り新作が公開されませんでした。しかしNETFLIXのような映画会社が本作のような実に無骨で素晴らしい作品を提供してくれたことは賞賛に値すると思います。
多分今年のオスカーでは、本作によりネット配信会社の映画が初めて作品賞を受賞すると思います。米映画界もこの現状を認めざる得ない時期にもう来ているのだと思います。