「理想の夫?」総理の夫 odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
理想の夫?
原作者の原田マハさんは執筆の動機を「なぜ日本の総理は当たり前のように男性なのか?それをフィクションで覆してみたかった。凜子は私の理想そのもので、彼女を支える夫・日和は何があっても妻を信じ、陰ながら守り抜く。本作は政界を舞台にした、信じ合い支え合う夫婦愛の物語です。」
としている。 今どき珍しいくらい、そのまんまの映画、それにしても2時間はちと長い・・。
普通、映画製作陣は政界を題材にすれば権謀術数うずまく血生臭い権力闘争劇に関心が向くだろう、アメリカの政治ものやサッチャーの伝記など硬派なサスペンス調のものが多い中、本作は極めてゆるくてお伽噺のようですね。出生、学歴、暮らしぶりからして恵まれ過ぎ、これで庶民感情が分かるのだろうかと嘘っぽいくらい美化した一本調子。
凜子が掲げる社会福祉と増税のビジョンなど改革と言うには程遠い感、望月さんの「新聞記者」ほどの政界風刺や山崎豊子さんほどの人間ドラマも無く、原作本の推薦の帯は安倍昭恵さん、出版元も実業之日本社だから作者の立ち位置、日和見感が察しられる・・。
日本で硬派な政治ものはタブーなのだろうか、よくて三谷さんの「記憶にございません!」のような笑いのオブラート仕立てがせいぜい、もっともイデオロギーを前面に押し出すよりほのぼの路線を貫く方が万人向けのような気はします、その点ではブレない河合監督は潔いとも言えるでしょうか・・。
田中圭さん演じる夫は頼りない反面、余計な口出しもせず優しい心の持ち主、キャリアウーマンの妻からみると都合の良い夫像なのかもしれません。
映画「20センチュリー・ウーマン」の中で母が息子に言うセリフ、「男って難題にぶつかると解決に躍起になるが、できないと分かると何もしない、解決できない時に寄り添うってことが下手なのよね」というのがありました。まさに女性が求めるのはこの夫君のように寄り添うことが上手な人なのでしょう・・。