「その時代の社会を面白く風刺するのが映画の役目」総理の夫 映画野郎officialさんの映画レビュー(感想・評価)
その時代の社会を面白く風刺するのが映画の役目
新しいかたちの政治エンターテインメントが誕生した。しかしただの政界を舞台にした映画とも違う。
働く女性、事情があって働けない女性、働くことを選ばなかった女性、そしてそれを支える男性たちみんなを応援する映画になっている。
政治、経済、環境、福祉と現代の問題に軽やかに触れながら、子どもを生み育てていく社会を中心に描かれていく。
鳥類研究以外に何も取り柄のない男が、突然妻が総理大臣になったことで巻き込まれていき、世の中に目をむけ向き合っていく物語。
政治と鳥類研究がどう繋がってくるのかと思っていたら、そういう意図があったかと納得。
「鳥は向かい風に向かって飛んでいく」という言葉が重要な役割を担っていく。
この現実に総裁選が行われるタイミングに公開とはなんだか運命を感じる。
深くまでは語らないが政治の仕組みを分かりやすく盛り込むことによって、普段距離を感じている人も政治に興味を持ち、前向きに変えていきたいと感じさせてくれる内容になっていると思う。
こういった映画がきっかけになるのは素晴らしいことだし、それがエンターテインメントの力であり役割である。
別に性別で区別するつもりはないが、女性総理が誕生したら本当に何か変わりそうだなと思わせてくれる。
それぐらい中谷美紀はハマり役だったし、艶麗さと力強さを併せ持っているリーダーに相応しい存在。
また脚本が当て書きされたという通り、どこか頼りないけど優しさと熱い想いを持った夫も田中圭そのままのようだった。
ふたりともキャラが滲み出ていて、俳優とはやはり人間性が大切だと改めて感じた。
笑いあり涙ありで、じんわり温かくなってそっと背中を押してくれる作品。