「リアル過ぎて重い…」ある人質 生還までの398日 ケイさんの映画レビュー(感想・評価)
リアル過ぎて重い…
デンマーク人である主人公ダニエルがISISの人質となり、監禁されてから奇跡の生還を果たすのだが、そこからも話は続き、共に監禁されていたアメリカ人ジェームズが処刑され、彼の葬儀に出て、家族に遺言を伝えるまでを描く。実話だけにかなり重たい気分で終わる。ISISと言っても、一つの組織ではなく、様々なテロリスト集団から成り立っており、先進国から来たジャーナリストや国連支援者を人質にとっては多額の身代金を要求し、それを活動資金に充てる誘拐ビジネスを行っている。一体、どこにイスラム教の教えがあるのだろうか。全ては西側諸国への報復、負の連鎖から来るものなのか。拷問シーンや、監禁場所からの脱出シーン、他の人質たちとの食事シーン、生きた心地がせず、何をするにも常に怯える恐怖感・緊張感、交渉人の存在が物凄くリアルだった。テロと交渉しないことを決めているため身代金にも一切協力せず、助言だけするデンマーク政府には何とも無力さを感じる。後藤さんの時の日本政府の対応を思い出す。非常に難しい問題だと思う。個人の意志で危険な地域と分かって入っているため、政府としてはその救出に国民の税金を投入できない、またそれがテロリストを支援することにも繋がるから。表向きにはテロに対応しないとしているが実際はどうなのだろうか。いくら自己責任とはいえ、自国民を見殺しにして良いのだろうか。エピローグで、その後のダニエルが家庭を持ち、今も写真を取り続けていることに安堵したが、彼自身や家族にとっては一生消えない心の傷だろう。しかし、ダニエルのように自らの意志でこの国に入った者よりも、元々そこに住んでいたのに国を追い出され、迫害され、難民となっている人々が多くいることはあまり報道されていないため、身近に感じにくいが、忘れてはならない。そういう報道のために彼らが危険を承知で紛争地域に入って行くのだろうが、解決が見えない暗い気持ちになる。