「平和」ある人質 生還までの398日 U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
平和
目が離せない。
圧倒的なリアリズムと言っていいのだろうか?
これを映画と呼んでいいのだろうか?
…日本に生まれた事をこんなに幸運と思えた事がない。今もどこかで同じような事が起こっていると思うと身の毛がよだつ。
まだ記憶にも新しいISに人質として拘束された男の話だ。チラシに感動の文字があるけれど、感動なんかしなかった。良かったとは思うけれど…感動よりも圧倒的に恐怖が勝る。記録映像と言って過言がない程の再現度に思うのだ。
実際、現地でロケをしたのだろうか?半壊してる街並みも、荒涼とした風景も、とてつもない説得力がある。
今、このレビューを書きながらも理由の分からない戦慄を覚えてる…これまでの映画の範疇を遥かに超えたように感じてる。
なんなんだ、コレは。
「君子危うきに近寄らず」
まさにコレに尽きるのだけど…彼が拘束されるまでの経緯を鑑みるに、同情しか生まれない。
あの時、彼はどうすれば良かったのだろうか?
偏に、戦場に出向くには覚悟も知識も人脈もなかったように思う。あったら多少は違うのかもしれないが、圧倒的な暴力の前では役に立たないかもしれない。
現地の護衛の無責任ぷりったらない。
なすがままだ。抗いもしない。
雇ったから信頼していいって思い込みは、瞬く間に裏切られる。そしてコーディネーターに諭される。「抵抗してはダメ。必ず助けるから」
…俺だって同じ行動をとると思う。
その結果が、13ヶ月に及ぶ拘束と、繰り返される拷問と飢餓と屈辱。
もう痩せ衰えて、怯える眼が真に迫っていて…いやもう、演技に思えない程だ。
また当時の映像も再現されるので、具体的なリアリズムを伴った恐怖にまとわりつかれたりする。
……。
…もうレビューを書きながら思い出すのも嫌なので、ここらで諦めようと思う。
とにもかくにも、現状の平和を噛み締める。
彼のような境遇に合わなくて良かったと、ご先祖様に感謝する。
あんなもの見たら、日常に起こるトラブル等、トラブルとも呼べないんじゃないかと考える。
肝が据わるというか、寛容になれると言うか…極限を疑似体験できたって事なのだろうか。
…俺は何を見たのだろうか?
コレは映画でいいのかな?
創作物である事は間違いないんだけど、創作を凌駕する何かにあてられてる。
この作品に挑んだ制作陣と俳優陣に敬意を払う。
重く澱んだ空気が全く途切れなかった。
作品の外の世界を全く感じる事はなかった。
今後、同じような感想を抱く作品に出会える気が全くしない。
コメントありがとうございます!
制作陣と俳優陣に敬意、本当に仰る通りですね。
アメリカ民主党が中国共産党にちょっかい出すなど、日本の周りもきな臭くなってきています。
本当に心から平和を祈ります。