ヒルビリー・エレジー 郷愁の哀歌のレビュー・感想・評価
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検尿に応じるか
この話では登場人物が数々の決断をするが、それは観てるこちらにも「お前ならどうするか?」と強いてくるようでもある。状況は切られるように痛々しく苦しい。身を投げるように行われる様々な判断。それぞれが家族のことを案じ、同時に自らをも思う。利己的ではない。自らの無事が、家族全体の幸福に資する自らが優先して守るべきことであるという現実的で誠実な解釈がなされる。ここまでの修羅場を越えて、何たる雄弁さか。 それを頷かせるだけの俳優陣の演技の凄まじさ。エイミーアダムスは、「これがあの!?」という風態で登場するが、ヒステリーに軽々と一線を超えさせるときのブレーキの壊れ方がたまらない。グレンクローズの病院から猫背で立ち去る様の異様さ、孫と正面きって電卓を取ってこいと挑む表情の鋭さなど、侍のようでもあった。 こんな不味そうな食い物を2人で分けるとは。500ドルでこまめにカードを使い分ける技などといった貧困演出も効いている。あの時ドアを突き破ってしっまったら!優秀な本人にも母親の影を潜ませる重要なシーン。トランプがあそこまでの票を取った。白人家族も現代的テーマなんだろう。
何者になるか
名門大学に通い、夢を叶えるチャンスの一歩手前まで来た主人公のもとに、薬物の過剰摂取で母が倒れたとの連絡が入り…。 しばしばヒステリーを起こし薬物に走る母親と、強くも娘に負い目を感じる祖母、そして、そんな家族に苦しめられながらも皆を大切に想う主人公を中心に描かれるドラマ。 希望の職に就けるかもしれない面接を控え、しかし故郷でまたしても問題を起こす母親。助け合ってきた姉に縋られ、故郷に戻る主人公。無事面接に辿り着けるか? 叶えたい夢と秤にかけるのは、少年期のつらい思い出の象徴ともいえる母親。 しかし、忘れてはならないのは、この母親は悪さはしながらも、確かにJDとリンジーの事は愛しており、祖母の力もあったとは言え育ててきた。 二人が母親を捨てきれない理由がちゃんとあると言うこと。 だからと言って許されることではないけれど、本人の言うように努力はしてきたんだろうなと。 ちょっとした努力すらできない人なんてごまんといるし。。 そしてなによりお婆ちゃん。責任を感じているからこそJDを厳しくも守ってきたのでしょう。劇中、何度もカッコいい姿を見せてくれましたよね。 あの状況から彼の元に向かうシーンはグッときました。 リンジーも、最初はJDに粗丸投げかよ!と思ってたのに急に、「採用されるかも」って… いきなりカッコよくなりだして。ちゃんとお婆ちゃんの血引いているな。 皆、大なり小なり道を外しているけど、大事な家族なんですよね。それは冒頭の川のシーンでもよくわかる。 家族の形は様々、例え失敗をしてもそこで這い上がる努力ができるかが大事なわけで、お婆ちゃんが言う通り、最後に自分が何者になるかは自分自身が決めることなんですよね。 簡単に答えのでない問題に考えさせられるとともに、登場人物皆の奔走する姿に惹き込まれた2時間だった。 …カメの下りも実話なのかい(笑)!! 素敵だ。
それぞれのつらさ
HIPHOPなどのアメリカ黒人文化、映画に親しんでいると、貧しくて環境は悪いけど健康な白人男性で努力すれば報われたんでしょ?!と思ってしまった。無実で逮捕されたり射殺されたりする不安定さはないし。が、それこそが分断の背景なのかもしれない。 こっちの方が辛い、あいつらは恵まれてる、と言い合わず、お互いにあいなの状況に気持ちを寄せられたらと思った。 お母さんがエキセントリックでみていてしんどかった。 映画としては平凡な家族映画になっていて、もっとひりひりしたラストベルトの現実を見たかったので物足りず。これなら「オザークへようこそ」のルースの物語の方が好き。
正直なところ、面白くなかった。
役者さんの演技は素晴らしいけど、見ていて憂鬱になる話。ばあちゃんが引き取ったあとのあの鬼のような扱いは見ていられなかった。よくぐれなかったものだわ。 監督も何がよくてこの話を映画化したのかわからない。
既視感は覚えるものも実話ならではの力強さと毎度裏切られない名優二人の熱演に引っ張られる!!
監督ロン・ハワード × 主演エイミー・アダムス × グレン・クローズ = (明らかに!!)賞レース狙いの家族ドラマ。 ラストベルトの貧しい白人層を描くのはロン・ハワード監督らしい温かな眼差し、優しい手触り。手堅い作りでありがちなドラマに落ち着いている印象は拭えないけど、それでも実話だけあって役者の頑張りもあって力強い。何より、出演作で毎度素晴らしい演技を披露しては賞レースに絡んでいる印象すらある名優エイミー・アダムスとグレン・クローズは安定の圧巻っぷりで、それだけでも本作に見る価値を与えてくれる。 エイミー・アダムスが演じるのは向こうの田舎らしい気性の荒く薬物中毒な母親、毒親。グレン・クローズ演じる祖母も強く、二人揃ってパンキッシュ。子供時代にこんな目に遭っていたら普通にトラウマになりそうなくらい。ヘイリー・ベネットは本当よくちょくちょく見かける、ティーンくらいの若いときの娘役もまだ自分でしちゃうのか。すごくかわいいからまだいけるけど、何かのシーンで横顔映ったときに顎とかで少し年齢感じちゃったのはナイショ。 …だけど、正直類似した要素を持った作品だったら、本作より心に響いた良作名作は結構あると思う。今年見たもので言えば『ハニーボーイ』がすごく良かったしなぁ。 ケンタッキー州ジャクソン 売られた喧嘩は買え。助け合うのが家族の掟だった。10年、痔で苦しめ!ここが文明社会?パートナーが嫌な奴でついカッとなった、ニュージャージーのどこか。善と悪、そして中立のターミネーター。これで500ドル、これで1000ドル。僕の未来は家族の未来でもある
悪くはないんだけど
ヒルビリーの話だというので勝手にウィンターズボーンみたいな重苦しい話だと思ってしまったので、なんか愛に溢れたサクセスストーリーでちょっと肩透かしでした。いい映画だと思います、でも私はこれ求めてなかったな。
本気の想い
2011年イェール大学に通い思い描いた職場への就職の面接を控えた前夜、食事会に出席する主人公に、母親がヘロインの過剰摂取で病院に運ばれたとの連絡が入り巻き起こっていく話。 オハイオで生まれ育ったけれど、心の故郷は祖母の故郷のケンタッキーという主人公が、14年前に少しの間夏を過ごしたケンタッキーから話はスタート。 オハイオの自宅に帰り、看護師の母親と暮らす姉と主人公、そして近くで暮らす祖母と、近くで暮らす祖父という少年時代と、2011年の話を織り交ぜながらみせていく。 ちょっとしたことでブチギレて、我を忘れて暴力を振るうし、男を取っかえ引っかえだし、ドラッグにも手を出す母親。 問題を起こすと二言目には努力した、努力したと言うけれど…。 そしてそんな母親に厳しいことを言う様だけれど、負い目からか直ぐに許して擁護してしまう祖母。 底辺で穏やかとは言えない暮らしから、名門大学に通えることになる要素がみえてくるどころか更に沈んで行く中、祖母が倒れたことが切っ掛けで変化が起きていく。 それでも最初はなあなあだったけど、自分の将来を本気で考えるてくれていることに気付き、大ケガする前に立ち上がった主人公も流石だし、テストの報告は涙もの。 2011年のパートも、自分だったら絶対に縁を切るだろうと思う程のワガママっぷりに辟易。 姉ちゃんも、なんだかんだとJ.D.を頼っており、見捨て様とする主人公を窘めておいて、自分はムリとかむちゃくちゃだなとは思ったけれど…。 コレが実話だというのだから驚いた。 婆ちゃんには感謝しかないし胸アツだった。
どんな家族にも歴史がある
過去と現在を織り交ぜながら、家族の課題を解決していく様子がうまく描かれています。 子どもが抱える家族の問題。子どもの視点、子どもに負わせる大人のずるさ。 それらを、とてもリアルに描いていると思いました。 グレン・クローズの祖母役、メチャ迫力。しかも、実在の方と本当にそっくり。 彼女の女優魂が出てますね。 薬物からの再生だけではない、どの家族にもあるだろう、家族の物語でした。
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