「人魚と夜と音楽と」マーメイド・イン・パリ 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)
人魚と夜と音楽と
これはパリを舞台のショーのような映画だというのが第一印象である。音楽と映像とダンスがずっと続く。音楽はオリビエ・ダビオーという人が殆どひとりで担当しているようだが、どの曲もノリがよくて映画にぴったりである。主人公ガスパールの動きはほとんどがダンスだ。歌と踊りではじまり、人魚発見のシーンから一直線に話が進む。フランス映画らしく人魚を善人にしたりすることもなく、船乗りを次々に殺していった伝説はそのまま活かす。
サブストーリーは人魚の歌声で恋人を殺された女医の物語。科学者だけにそう簡単には人魚伝説など信じないが、残された鱗や青い血液などを分析して、いよいよ本当の人魚だと思うようになる。されば恨み骨髄の人魚に復習しないでいられようか。
人魚の命を狙う人間がいるなどとは露ほども知らぬガスパールは、その残酷さもひっくるめてまるごと人魚を受け入れ、家を燃やされてもさほど気にせず、タイムリミットまでを思い切り充実した時間にしようとする。別れを悲しむよりも人生を楽しむのだ。
フランス映画といえば哲学的な会話や実存的なストーリーがおなじみだが、本作品は兎に角パリの洒落たショーなので、哲学も実存も関係なく、酒があり音楽がありラブストーリーがあるというパリの楽しさだけが満載である。エッフェル塔のライトアップのCGは見たこともないほど綺麗だった。鑑賞して温かい気持ちになる作品である。
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