劇場公開日 2021年1月22日

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「韓国の「本能寺の変」」KCIA 南山の部長たち コージィ日本犬さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5韓国の「本能寺の変」

2021年1月26日
PCから投稿

外見的には全然似てないのに、キム部長役のイ・ビョンホンと、朴大統領役のイ・ソンミン、クァク警備室長役のイ・ヒジュンの三人のなりきり演技には圧倒されました。
実に面白い、近代ドラマとして楽しみました。

『タクシー運転手 約束は海を越えて』『1987、ある闘いの真実』などに見るように、そろそろ韓国では、軍事政権時代の出来事を過去とみなし、一種の時代劇へと昇華しているような気もしました。
わずか40年前くらいのことではあるのですが(軍事政権時代を嫌悪してる人も多いのかも)。

本作も実録ものと言いながらも、エンタメ的な切り取り方が目立ち、フィクションの部分が多かった印象です。

犯人のキム部長(=モデルの金 載圭)に対して同情的で、参加していないはずの1961年「5・16軍事クーデター」に朴正煕と共に参加していたように改変され、憂国の士のように描かれていました。
キム部長の姿が、最近のNHK大河『麒麟がくる』で、(本能寺の変へと連なる)明智光秀の信長への殺意の積み重ねと、ダブって見えたりしました。

また、暗殺された朴正煕元大統領については、経済成長を成し遂げた人物という側面には触れず、民主化運動を弾圧し、お気に入りの役人だけを贔屓し、国家の金を横領した独裁者という部分のみを強調していました(長期政権後半の腐敗具合はあながち間違ってはいないようですし、経済成長自体が政府発表のまやかしという説もあるようですが)。

犯行動機については諸説ある中、ドキュメンタリー原作者や、監督・プロデューサーの恣意的選択が入るので、犯人その人でもなく、その時代にその場所にいなかった神ならぬ我が身には何が真実かはわかりかねますが。

ただ、先に例に挙げた明智光秀や、その後世の中を簒奪した豊臣秀吉、幕末の維新志士や新選組らが、魅力的人物として描かれるのと同じように、(世が世ならテロリスト同然にもかかわらず)歴史の大きなうねりを生んだ人物は、ドラマになりやすいのだなと。
この基になった事件自体、韓国版の「本能寺の変」みたいなもんだし。

さらに、これが韓国でヒットした背景には、最近判決のおりた娘の朴槿恵元大統領への国民の憎悪に近い反感が、その父・朴正煕にも向けられたのではないかと思ったりもしました。

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コージィ日本犬