「「すくって」という言葉が、「金魚すくい+人を救う」の掛け言葉の「和ミュージカル」。外国でもウケると思う一方で、これだけ日本語の力に依拠した作品に、外国人に通じる字幕を付けるのは至難かもと思うのでした。」すくってごらん お水汲み当番さんの映画レビュー(感想・評価)
「すくって」という言葉が、「金魚すくい+人を救う」の掛け言葉の「和ミュージカル」。外国でもウケると思う一方で、これだけ日本語の力に依拠した作品に、外国人に通じる字幕を付けるのは至難かもと思うのでした。
奈良の伝統的な住宅群という「the古き日本」を舞台に、歌舞伎役者・尾上松也の演じる「和ミュージカル」です。
しかしイロモノ映画ではありません。
それこそ世界中のミュージカル映画と肩を並べるほどの本格的な出来ばえの作品でした。
映像にはアカ抜けたアイディアが溢れており、まるで現代芸術のように、絵を観るのがほんとうに楽しかったです。
たとえば尾上松也が営業に駆け回るシーンの斬新なことユニークなこと、これほど豊かな発想による愉快な映像を、私は観たこともありませんでした。
また、この映画には、歌舞伎をリスペクトするように「中入り」があるのです。
よくぞこんなアイディアが沸いたものだと思います。
1分20秒の素敵な中入り。
たっぷり観客を楽しませてくれる仕掛けです。
もちろん役者たちの歌と演技の力量の素晴らしさがあってこそ成立した作品です。
日本のミュージカル映画にありがちなのが、俳優の歌の力量が足りなくて映画がショボーーンというパターンですが、この映画に限っては、演者の全キャスティングを監督が吟味し抜いて選んだのだろうと感じました。
歌も演技も上手い出演者揃いで、まったく心配ありませんでした。
ももクロZの百田夏菜子。
映画初主演ですが、歌も演技も、おそらく監督が求める100%を発揮していたのではないかと思います。
一曲だけ歌を披露した石田ニコルの歌の力量も驚くべきもので、まずなによりこの人の歌の実力を見抜き、キャスティングした監督に拍手を贈りたいと思います。いったい監督はどうやってこの才能を発掘したんだろうか。
今後、おおいに彼女の歌にも注目したいと感じました。
ミュージカル俳優の柿澤勇人の、手慣れて物おじしない演技と歌唱力も、素晴らしかったです。
一点だけ残念だったシーン。
「主人公が仕事ができること」をパソコンで示すために、キーボードをメチャクチャに叩きまくるシーンがあるのですが、ディスプレーに無意味な文字列が並ぶのをそのまま写していたんですね。
そこはCGを使って良いのだから、メチャクチャにキーをたたいていても、画面の方はちゃんと何か凄い仕事がガンガン進んでいるように工夫してもらいたかったと思いました。
残念だったのは、この一点ぐらいかな。
日本人が誇りに思える和ミュージカルの逸品として、100点満点を付けたいと思います。