「【8 1/2】」声優夫婦の甘くない生活 ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)
【8 1/2】
フェリーニの「8 1/2」には現実逃避が描かれる。
ラヤのテレフォンセックスの仕事を現実逃避になぞらえて、これを引用したのだろうか。
それとも、ノスタルジーを呼び起こそうとしたのだろうか。
まあ、両方かもしれない。
少なくとも、ラヤは仕事にやりがいを感じ、電話相手に夢見心地の時間を与えているという自己満足もあった。
しかし、電話の相手は、自分の作った声に恋し、現実の自分と声をマヤのものとは看做さない。
相手の空想が、現実を受け入れられないこともある。
自分が全てをコントロールしているわけではないのだ。
それこそが現実なのだ。
なかなか、自分の殻から抜け出そうとしないヴィクトル。
だが、引用された「8 1/2」は、もう一つの重要なことを指し示していると思う。
このタイトルの理由だ。
フェリーニ、8番目の作品にして、共同制作の作品。
1/2は、共同制作という意味なのだ。
おそらく長く連れ添った夫婦は、あれこれ波風が立つことがあっても共同作業を続けて来たのだ。
変わろうとするヴィクトル。
ソ連東欧の社会主義が崩壊して、イスラエルに亡命したソ連のユダヤ人は、現実逃避をしたわけではあるまい。
イスラエルで、大変な思いをしながら生活していたのだ。
おそらく、支え合いながら。
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