「魔物」アメリカン・マーダー 一家殺害事件の実録 U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
魔物
知人に紹介されNetflixにて鑑賞。
演出は入っているものの、構成される絵は全て実際のものというとんでもないドキュメンタリーだ。
しかも殺人事件。
こんなものを作れるアメリカって国がそら恐ろしくなるし、この作品を持ってして提示しなくてはならない現状に戦慄を覚える。
通報から始まり終息までを赤裸々に描く。
ドラマの脚本のような事が実際に展開される。
ただ内情はドラマのような事ではない。
「肉声」が持つリアリズムはとてつもなく…その状況やら心情やら…果たしてコレを見続ける事は、罪深い行いではないのかと葛藤する。
完全なる傍観者だ。
見続けるのは興味が湧くからだ。
殺人事件の犯人が捕まるまでに。
実際に殺人を犯した人間をただただ見る事になる。
…人の死に肉薄する事を「興味」だけで行っていいのであろうか?
見終わった後に思うのは、発見が色々あった事だ。ソレはアメリカならではの事もあるのだけれど、殺害を吐露された側は激昂するわけではなく途方にくれるのだという事。どう処理していいのか分からないのだろう。
警察の対応も実に冷静で、追い詰める事を一切しない。事が露見するに至り突き詰める事はありもするが、ともすれば犯人に同情してるようにも見える。
彼の肩を軽く叩くジェスチャーなどは「元気だせよ」と合図を送るかのようだ。
殺害に至るまでの変遷をメディアで流す事は、とても大きな賭けではあるが、ある種の抑止力になる可能性だってある。
エンタメとして消化してはいけないし、されてはいけない。
コレを作品として世に送り出した事が意義あるものであるようになればいいと思う。
通報から4日で犯人は捕まる。
その間の捜査や報道が映しだされるのだが、当事者達とメディアを介した人間との温度差が際立つ。
SNSで発信される部外者の騒音は耳障りでしかなく、個人の正義感を知らしめたい欲求なのかなんなのか知らないが、やめた方が世の為人の為だ。
自分の為にやる事では断じてない。
亡くなった方のご冥福を祈ると共に、彼女達の死が報われる世の中に向かっていってほしい。
☆4とか付けてはいるが作品の評価ってわけではなく、この作品を作った意欲を尊重したい。☆が1つ足らないのは、やはり、どおしても、コレ程までにセンシティブで衝撃的な内容をメディアで流す必然性にいくばくかの疑問も感じるからである。