「今まさに作られるべき映画であり観られるべき映画」皮膚を売った男 ぱんちょさんの映画レビュー(感想・評価)
今まさに作られるべき映画であり観られるべき映画
現代の多くの課題を多角的に拾い上げ、議論できるように周到に仕組まれた設定が、まるで罠にように観客を待ち受ける。一筋縄ではいかないが、結果的に104分の中で観客は、重い課題を背負わされ、持ち帰ることになる。
ストーリーとしては、些細な理由で難民となったシリア人のサムは、避難先のレバノンでたまたま芸術家から背中をアートのために売らないかと持ちかけられるが…ということになるが、そこから想像されるよりもあまりにも多くの分断を目にすることになる。
線を1本引けば彼岸と此岸で分断が起こり、そこに不均衡とビジネス、差別が発生する。体制側と反体制、シリアとレバノンそしてベルギー、難民と先進国民、資本側と搾取される側、買う側と売る側、そして男と女…
そうした分断は、この作品では展示される作品側(サム)と観客の間に引かれる一線として、分かりやすく観客に提示される。あまりにも鮮やかな手つきで提示されるために、それが自分たちの課題だとその時は気付かないかもしれないが、それは時限爆弾のように後から僕等の上にのしかかる…
脚本も演出も撮影も良いし、役者もみな素晴らしかった。
今まさに作られるべき映画だし、今まさに観られるべき映画。今年ベスト級。
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