皮膚を売った男のレビュー・感想・評価
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実在の「美術品」エピソードと難民問題で人間とアートの自由を問う
御伽噺のような設定だが、人体に彫ったタトゥーを美術品として売買するエピソードはほぼ実話で、ヴィム・デルボアという現代アーティストの作品「TIM」に着想を得ている。
デルボアはティム・ステイラーという男性の背中に作品としてタトゥーを施し、展示会場では観客側に背を向けて彼を座らせていた。「TIM」はドイツのコレクターに落札された。ちなみに、デルボアは保険会社の社員役で本作にカメオ出演している。
シリア難民の人権問題にこの奇想天外なアートを絡めて、独特の切り口で人間の自由について問いかけてくる映画。
ちょっとした発言のため官憲に追われ難民となったものの、恋人に会うため高名なアーティストの作品のカンヴァスとなり、「美術品」となることで移動の自由を手にしたサム。ところが恋人と連絡はついたものの諸事情によりすれ違い続け、サムは目的を果たせないまま、作品として扱われながら流浪してゆく。
割と淡々と話が進んでゆくが、サム本人の意向を全く顧みない人権団体とのやり取りなど、皮肉めいたおかしさを感じるシーンもある。直接関係のない第三者が、当事者の個々の事情を汲まずにプロパガンダのネタ扱いするのはよくあることだ。
他にも作品である背中に吹き出物が出来てしまったり、薄口のユーモアがちょいちょい挟まれる。人権の問題をしっかり織り込みながらも、語り口はライトだ。
ところがラストはペースが一転して、短時間での急展開。うまくまとまり過ぎでは?いややっぱ現実はエグいな、からのええええ?!感情の高低差とスピード感に、一本取られた気分になる。
アートを題材にしているだけあって、色合いや構図の美しい場面が多い。様々な美術品が額縁のように作品を彩っていて眼福だ。
サムを演じたヤヤ・マヘイニは、演技経験は学生時代だけで本職は弁護士だそうだ。でも全く違和感のない演技だし、何といっても作品のカンヴァスとなる肉体が自然で美しい。ベネチア国際映画祭で受賞したのも納得の、役にはまった存在感だ。
恋人のアビール役のディア・リアンは薄い色の瞳が印象的な美人。そしてモニカ・ベルッチはカッコよさに迫力がある。重ねた年齢に相応しい、こなれた美しさ。
美術品としてモノ扱いされた方がむしろ自由という、シリアの国内情勢に自然と思いを馳せる。アート作品のあり方と人権問題、ふたつのことを考えさせてくれる作品。上手いです。
人体にアートを刻まれた男がたどる運命
監督が実際に美術展で見たタトゥーの作品がモチーフになったそうですが、「人体にアートを刻まれた男がたどる運命」というワンアイディアで、こんなに波瀾万丈なストーリーを作れるのかと感動しました。もの凄いハイコンセプトな作品です。チュニジアの女性監督、カウテール・ベン・ハニアの作品で、日本では彼女の映画が公開されるのは初めてです。モニカ・ベルッチが重要な役どころで出演しているのも驚き。2021年のアカデミー賞国際長編映画賞にノミネートされましたが、それも当然のクオリティーです。オスカー受賞して欲しかった。
現代の寓話を超えたところにあるもの
なるほどそうきたか、と思わず手をうった。衝撃や驚愕とも違う、ゆっくりと沈み込んでいくような現代の寓話がそこには刻まれていた。あの揺れる列車の中でヒロインへの愛を高らかに宣言したときの、何も怖いものはない、と言わんばかりの満ち足りた表情。かと思えば、次のシーンではその自信がいとも簡単に崩され、国を追われるまでになる皮肉。それからいろいろあって王子様とお姫様はめでたく結ばれましたーーーとなるのがストレートな寓話ならば、本作はそこに変数が差し込まれる。それが”アート”の存在だ。それも主人公がアートそのものに化してしまうという皮肉。そうやって皮肉に皮肉が掛け合わさり、いつしか立場が何度も反転していく流麗さは見惚れるほどだが、そこで「はいおしまい」にはせず、主人公たちを元の場所へと立ち戻らせようとするところ、そうするための展開をもう一つ盛り込むところに、願いや祈りにも似た作り手の崇高な意志を感じた。
難民問題に現代アートを絡めてみたら
シリア内戦の影響で祖国を追われ、恋人との関係も絶たれた男は、ヨーロッパ在住ビザを手にして、各地を渡り歩く。こう書けば実にハッピーな話なのだが、彼が手に入れたのは何と、背中に刻印されたタトゥのビザ。男の美しい広背筋に惚れ込んだアーティストが挑んだ究極の現代アートが、一旦は男にかりそめの自由をもたらすのだが。。。。。
しかし、買い手やキュレーターの意図によって動かされ、そもそも見せ物でしかないことにうんざりした男は、やがて、引き離された恋人と本当の自由を手に入れるために、とんでもない行動に打って出る。
シリア難民の現実をそのまま映すのではなく、軽々と国境を越えられるアートと越えられない生身の人間とをうまく対比させた挙句、想定外の結末まで用意した、これは難民問題を扱ったこのジャンルの画期的作品。何しろ、先が読めないストーリーはエンタメ的な楽しみすらある。
主演のヤヤ・マヘイニはシリア人の俳優で脚本家でもある。怒りと共にカメラを見据える眼差しは強烈で、姿勢によって変わる背中の表情と共に、しばらく忘れられない存在になりそうだ。
Satire on the Art World a la The Square
From a salesman's point of view, The Man Who Sold His Skin is nearly a carbon copy of The Square, acting as a parody of the art world with bizarre situations unfolding on screen. But the film has a little more heart with a love story at its center, and it often teeters the other way from silliness to lighthearted drama. With a Tunisian female filmmaker, it's some fresh directorial perspective.
難民、アート、越境、戦争、テーマがてんこもり
電車の中でテンションが上がり過ぎて政治批判をしちゃったことが発端で、逮捕→役人が親戚で逃げられる→ヨーロッパでひよこ選別で生計立てつつ、アートイベントで食べ物をくすねる人生。
施しを与えようとする芸術家の助手に、くたばれ、っていうシーンは尊厳とは…と思ったねぇ。
同じ人間なのに、生まれた場所と人種でこんなにも人生が変わってしまうのか、、という感想は日本でぬくぬくと育ってるからだろうな。
逃げなきゃならん彼氏(主人公)を待てず、彼女が保身で体裁結婚するのもわかる。
いやいや、あぶねえもん。女は精神的には強いけど、フィジカルは男には勝てねえよ。
主人公の体がいい。筋肉がいい感じでムキムキ。
最後は巨匠も逃がさへんでー!って感じかと思いきや、本当に空飛ぶじゅうたんで自由を与えてて、嬉しいラストだった。
なんだかアッサリ
もっと面白くなりそうというか、アイディアはすごい面白いのに、あらすじだけ教えられたみたいなアッサリ感。あと主人公とその彼女なんだか老けてない?もうちょっと若者の話のほうがしっくり来たと思うんだけど。
人として越境できない私が商品として越境する
あらすじを読んでぜひ観たいと思ったが、実際見てみたら、思ったほど暗いものではなく、現代の難民と、現代アートの問題を絶妙に絡めた、ブラックユーモアも少しあるような作品だった、
とはいえ、ラッカに暮らすサムの家族、母親は足を失い家には男の家族はいない。
現代アートと言われて流通するものはうんざりだ
現代でなくてもそうなんだが、
アートは金額で価値が決まるものではない。
0円になるか億単位の値段がつくかは、作品そのものには関係ない。
バンクシーが痕跡を残した壁、ただのコンクリートを剥がして売る奴がいる。
最後サムの背中は、、、ヒューマントラフィッキングの問題難民避難民の問題オークション現代アートの金をめぐる問題それにシリアの国内密告と圧政暴政、当時落下を制圧していたISの問題、
そんな中ギリギリの駆け引きみたいなことをしているが、サムが彼女との電話での稚拙な駆け引きじみたやり取り、突然シリアの列車の中で革命自由結婚!とはしゃぎ出すところ、飄々と、システムの中でアーティストとしての地位と金儲けしながら本当にやりたいことを実現している作家、モニカベルッチの美しきたくましい仕事ぶり、、、
ネタバレしますが最後はあっけらかんとハッピーエンドで、えっ?!となりました。
テーマが面白く、これでシリアのことにも興味が湧くなら素晴らしいと思う
モニカベルッチ
違法契約
刺青のアート性は良いとして所有権は当人だろうし、不法行為にあたらない範囲で、芸術家に残る権利をどのように契約で設定できるのだろうか。話が人身売買といった話にまで飛んでいくのは、リアリティを欠いた感もあるが、テーマとしては面白い。もう少し掘り下げて欲しかったところ。
メインはシリア情勢そのものだろう。母に起きたことを示す画像がショッキングである。そういう意味ではラストの着地は蛇足感を感じた。
不当逮捕から国外に逃亡した男性が背中を「売って」タトゥーを入れ、生...
不当逮捕から国外に逃亡した男性が背中を「売って」タトゥーを入れ、生きた芸術品となる。
やむを得ない事情があったわけだが、上半身裸で「展示」されたり「競売」にかけられるのは屈辱でもあっただろう。
それでも元カノと復縁してシリアに戻り、ハッピーエンドかと思いきや、終盤の展開はひとひねりあっておもしろかった。
シリアの不自由
シリア。バスに乗っていて恋人に告白され、調子に乗って「革命だ!自由をわが手に!」と叫んでしまったために危険分子として逮捕されて、からがら身一つでレバノンに逃げる主人公。シリアの不自由。のっけから悲惨でとぼけた幕開けです。知己もないレバノンで路頭に迷って美術展のパーティに紛れ込んだ彼に提案された仕事は「背中を美術品として売ること」だった。ビザがタトゥーされた背中は芸術品として美術館に展示されることに。面白い映画でした。シリア難民の救援団体が乗り出したり、ISが彼を拉致したりと、中東ならではのくすぐりが入っていてなかなかコクのあるコメディになってました。それから、芸術の業界に対する皮肉も笑える(否定はしていないと思う)。
モニカ・ベルッチ演じる変な女がいいスパイスになってました笑。
ヒロイン(ディア・リアンというらしい)の目の色、凄いですね。トルコ石みたいな緑がかった灰色。
芸術ではなく、人身売買では?
内戦から逃れるために難民となったサム。お金とビザを手に入れるために芸術家の誘いに乗り、背中にタツゥーを入れて展示物に。お金と自由を手に入れ、有名になれると勘違いしていたサム。でも実際には美術館に行って、背中を向けて座り続けるだけで顔もみせられず、故郷の家族に有名になったと自慢することすらできない。その辺りはサムの考えが甘かったんだろう。
多額の保険をかけられて、オークションにもかけられていく様は、まさに人身売買。
まあ,理解のある芸術家だったから最後はサムのために一芝居協力してくれたから自由を手に入れる事が出来たが、また誰からも相手にされない生活が始まる。命の危険に晒され続けるよりいいだろうが。
なかなか興味深い作品だったが、結婚した元カノとの未練がましい関係はなくても良かった気もする。
こんな自由はイヤダ。
皮膚が皮肉になる時ー。はっ!?駄洒落!!
自由とは、なんだろう、、、。
アートは稀有であればある程な訳で、あ、そうかそうね欲望と芸術の間にアーティストは悩まされる訳ね。
本当人間て愚かで嫌だなぁ。爆破擬は少しスッキリ。
どの立場で見るかによって評価が分かれる
シリア難民の背中のタトゥを芸術作品として発表し、最後にオークションにかけるという話。
これはシリア難民のことをバカにしているという人権問題と考える見方と
難民の背中を芸術作品として、好きなところに行けるという特典付きという見方
それによって評価が分かれてくる。
ただ、自分の背中を提供すると決めたのは自分である。だから、まわりがとやかくいうことではない。それでシリア難民の地位を下げることになるのであればそれはまた別の問題である。
意思のある芸術作品とみていくと、安直にOKしたものの彼にしかできない人生を送ったのだと認めてあげたい。静かに暮らしたいという彼の願いもウィットに富んだ結末で離ればなれになった恋人と一緒になれたのは救いである。
もしタトゥーが売買されたら・・・
内戦の続くシリアから脱出し、難民となったサムは、現代アートの巨匠からサム自身がアート作品にならないか、いう提案を受けた。大金を手にした代わりに背中にタトゥーを施し、アート作品となったサムは、高額で取引される身となった。売買され国境を越えたサムは、やがて元恋人に会いに行くが、彼女は結婚していて・・・という話。
タトゥー作家の作品は人の皮膚に彫った刺青だから、これをアート作品と言えばそうなんだけど・・・、面白い設定だなぁと思った。
作品の売買と人身売買が表裏一体で、体調管理が契約事項で、などコメディ部分もあり、見応え有った。
アピール役のディアリィアンが美しかった。
money money money
この世の全てをお金に換算するのが当たり前の世の中となってますが、皮膚はその象徴というか。このお金で全てを測る方法そのものが狂っていて、人間の究極の狂気の象徴として富裕層が描かれてました。人類がお金に取り憑かれて倫理観を失くしていることに改めて向き合わされる作品です。
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