劇場公開日 2020年11月28日

「強い人間のお話です。」凱歌 バリカタさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0強い人間のお話です。

2020年12月3日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

凱歌、勝って歌うもの。英題を直訳すると「勝利の歌」
なぜこの題名?異質な感じを持って鑑賞。

本作品は不当な差別、扱い、偏見を乗り越えてきた元ハンセン病患者の
ご夫婦のドキュメント。また、本作は不当な扱いの中でも最も人間の尊厳を
傷つけるであろう、断種にフォーカスしています。過去を明らかにし世の中に
アピールすることを目的にした作品ではないかな?って思います。

断種に関しての当事者の方々の話は聞くに耐えません。
克明な手術の様子や実行してた医師達の発言、行動などが話されます。
あまりに残酷な過去です。

人としての存在意義、いや存在自体を否定されてきたハンセン病を患った方々は、
打ち負かされて、叩きのめされ、社会から抹殺されてきたのでしょう、
息を潜め身を潜めざるを得なかったのでしょう。

山内さん夫婦はその中でも、許される権利を行使し、穴の空いたココロを埋める
努力をし、周辺の理解者の方々の助けもあり、すごい境地に達します。
精神的な境地に。

国や周囲、場合によっては家族からも存在意義を否定される中、
自ら存在意義をつかみとる、ゆえに行動に移せるのでしょう。
ゆるぎないその意思は伝播し、現代の同病者の光となり支えとなる。

まさに礎となっています。
山内さんご夫婦のケースはまれでしょう。
それが叶わなかった方々も含め、今の礎となっていると思います。
だからこそ同症状の19歳の子には笑顔がある。
辛い事も沢山あるだろうけど、笑顔がある。
自身の将来を考え、悩む19歳がそこにいる。

将来を奪われた方々が礎となり、
「あなたには将来があるのよ!」と強く背中を押す。

礎になりえたのは、人間扱いされず、存在意義を否定されながらも
人間の尊厳を諦めず人間として生きようとした人のまさに
「勝ち得た」ことなんだろう。

ゆえに「凱歌」なのだろうか?

演出としては、関係者のインタビューが長回しでそのまま入ってる。
故に、直に話を聞いている気になる。空気まで伝わってくる、
「手触り」を感じる映像であった。

自分自身、強く、強く、、、ありたいと心底思った。

バリカタ