劇場公開日 2022年3月11日

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林檎とポラロイドのレビュー・感想・評価

全56件中、21~40件目を表示

4.5愛しいヒゲモジャと林檎

2022年6月9日
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鑑賞方法:映画館

表情の少ないヒゲモジャが可愛く見えてくる不思議!

林檎めっちゃ食べたくなるし、
プールのシーンも好き。

レトロなインテリア、車、小物たちも好き。
SONYのラジカセ?みたいのありました。

記憶テストの時の医師たちもかわいい。

この不思議な世界観、好みでした。

今の気分にもちょうどよかった。

ちゃんと最後までよかった。

これがデビュー作とは。
ケイト・ブランシェットが惚れ込んだと言うことですが、今後の作品も楽しみです。

これ見てから、林檎を買いがちです。

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osinco

3.5ホントは、どうだったのか?

2022年5月16日
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彼はプログラムを利用したのか?

それとも、しだいに思い出したのか?

観るものの想像力をかきたてる作品。

一夜限りのアヴァンチュールを彼は受け入れたのか?そうであってほしくないような、そうだったら辛い過去から距離を置けるのか?

謎だらけだけど、心の機微が描かれているようにも思える。

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ミツバチば~や

2.0面白くなかった

2022年5月2日
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鑑賞方法:映画館

寝られる

記憶を失った男は、治療のための回復プログラムに参加した。毎日送られてくるカセットテープの内容に従い、様々なミッションをこなしていった。そんな中、同じく回復プログラムに参加してる女と出会い、親しくなった。新しい思い出を作るためのミッションによって、過去が徐々にわかってくるという話。
なんだかよくわからないストーリーで面白くなかった。

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りあの

3.5かなり早めに勘づいてしまう

2022年4月17日
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鑑賞方法:映画館

記憶喪失者が多発する世界。
その中で主人公も記憶喪失になり、更生プログラムに参加する。
時に誤魔化しつつもプログラムをちゃんとこなす主人公が微笑ましいが、このプログラムが中々容赦ない。
問題になるよ普通笑。

コスプレパーティーでの知り合いいますか?のシーンは笑った。

ただ、記憶喪失うんぬんとにかく主人公の挙動がおかしい。
それも含めて、観ていてかなり早めにあることに気付いてしまう。
その実は…の部分が明らかになるのが面白さの一つかなと思った。だから、もう少し分かりづらくして、後で分かるようにしても良かった気がする。

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いたかわ

2.5リンゴの食べ方の違いとトイレですることの難しさ

2022年4月9日
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鑑賞方法:映画館

いきなり記憶喪失になる人が増えている世の中。彼らへの支援が確立されているのは面白い。眼の前の人が記憶喪失だなとわかると皆が救急車を呼ぶ世界。なんかやさしい。
そんな記憶喪失になったうち、身元不明のままの人が受けるプログラム。新しい自分を作り上げていこうとするものなのだが、これが少し不思議なもの。カセットテープでミッションが送られてくるところからして不思議。それにクラブのトイレで誰かとセックスしてこいってミッションは相当ハードルが高い。こんなミッションこなせないなと思いながら観てしまった。
映画「ブレードランナー」でレプリカントと人間の違いは記憶だから、思い出に関する質問をしていくうちに人間ではないと判定できるテストがあった。それくらい人間にとって記憶は大事なもの。それがなくなってしまうのは全く違う人間になるってことだ。
でも、違う人間でいた方が幸せだったってこともある。とても皮肉的で悲しい結末だった。
たんたんと進む展開に結構退屈してしまったのも正直な感想なのだが、観終わった印象はそこまで悪くない。それにしてもリンゴの食べ方にも文化の違いって出るんだなと違うところで感心してしまった。

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kenshuchu

3.5ポラロイドを捨て林檎を噛じる

2022年4月4日
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21037.過去の記憶と共に生きることを選択

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movie

3.5意外に謎を解くスタイルか

2022年3月30日
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鑑賞方法:映画館

自然に疑問が湧いて解答が提示される。
まず、謎の音。
近所の犬。
何故、林檎?
何故、ポラロイド?
何故、自転車?
映画の紹介にある記憶喪失が蔓延する社会とあるが、作中ではそこまでではなく、どうやら感染もないらしいことがすぐにわかる(感染がないので周りの人がとても親切)。
ポラロイドは仲間を見分ける識別信号として役に立つ(携帯電話のカメラでは役に立たない)。
歌が下手とかダンスが上手いとかは意味がなかったかもしれない。
歌が下手なことより歌詞を覚えていることが大事なんだが、やはり下手な歌は上手い歌より気になってしまう。

物語中盤で薄々気が付くようになっているが、最後に謎がとけて半分はスッキリする。

特殊な社会問題とそこで起きるドラマという構造はつい最近みたポゼッサーよりこちらのほうが随分とスッキリ昇華されている。

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アモルフィ

2.0なんかな

2022年3月27日
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鑑賞方法:映画館

54本目。
そう言う事とは思うけど、なんか面倒臭いし、観る人を選ぶじゃとは思う。

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ひで

3.5日常生活に散りばめられる悲哀

2022年3月27日
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いきなり記憶がなくなる病が蔓延してる世界でのお話。その前提を頭に入れて鑑賞した方がいいです。それがないと「ん?何が起きてる?」ってなっちゃいます。僕がそーでした(笑)

さて、本作。シリアスと思いきや何気に笑えるんですよねー。特に治療ミッションへの取り組みについては、なんだか4コマ漫画を見てるみたい。しっかりオチがあるんですよね。そんな「クスっ」を散りばめながら物語が進むのですが、それ以上になんとも悲哀が漂うのです。その悲哀はなぜ漂うのか?というと・・・ってところが本作のミソかなぁって思いました。

人間って過去の嫌なこと、悲しいこと、辛いことっって忘れちゃいたいけど、不思議に覚えてますよね。楽しかった事以上に(これは個人差あるかな?)もしかしたら、楽しい成功体験よりもネガティブな出来事の方がもしかしたら「自分らしさ」があるのかもしれないです。思ったことを考えなくやったら失敗したとか、自分の考えを押し通したら失敗した・・ってありますもん。まぁその積み重ねが成功につながっていくわけですが。

そんなことを考えていると、本作の主人公が治療プログラムを通してちょっとずつ自分というものに触れていく様はそれが要因なのかなぁ?なんて思ったりして。どうなんだろうなぁ。そう考えたら、世の中って悲しみや辛いことが溢れているのかな?・・・あぁ、記憶喪失になりたくなってきちゃった。

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バリカタ

4.0結局、人の悲しみは、人との関係によってしか癒されないのかもしれない。

2022年3月26日
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鑑賞方法:映画館

被写界深度が浅い画が多く、しかしそれが自然と作品に溶け込んでおり、主人公の視点が分かりやすい。

ポラロイド写真に写った記録は、自身の行動ではあるが、能動的な意識は写真のさらに奥深くに刻まれている。

無表情でリンゴを貪りひょろひょろと街を歩き行動する男は、コミカルなミッションを続ける中で、実は人との関りを欲していたのだろう。深い悲しみは忘れたいけれど、それを乗り越えた男は新たなミッション「生きる」ことに挑戦するのだろう。

ヨルゴス・ランティモスの不思議な雰囲気は好みであり、啓示的なラストにも満足した。

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jollyjoker

3.5水底に潜っていく。そこに明るい光は届かない

2022年3月25日
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思い出を失くした男は、それを取り戻すプログラムを実践し記録写真を撮る。
心震わせる記録の最後に見つけたのは、決して失うことのない喪失の悲しみ。
それでも暮らしていくのだろう。

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すぅ

4.0当院がオススメするプログラムがあるわ、通称「新しい自分」プログラム。

2022年3月22日
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鑑賞方法:映画館

なんだなんだこの世界は。ここはどこだ?時代は今か?どこの言葉だ?もしかしてSFコメディ路線?前知識なしのおかげで(それはそれで楽しめるので好き)、ストーリー以前に疑問点が多すぎて画面にくぎ付けになった。観終えてチェックすると"ギリシャ・ポーランド・スロベニア合作"とあった。それだけで、うおお!と唸った。
「心と体と」の世界に近い。画面に出ている物体(林檎、ポラロイドやテープレコーダー、)に仮託された意味、治療機関の課すプログラムの信ぴょう性、そして主人公(あれ?ほとんどのキャラに名前はない?犬だけ?)のとった行動の訳。
いたるところにちりばめられているのが、ヒントなのかトラップなのかフェイクなのか落とし穴なのか、少なくとも騙し絵に惑わされないように用心するときと同じ気分で画面に見入った。
セリフを抑えて、極力観客それぞれの解釈へと誘うような展開は上質。ラスト、意を決したかのような主人公のこの行動はどういう心境か。誰かと答え合わせをしてみたい。いくつか出てくるであろう答えのひとつひとつを。

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栗太郎

2.5たんたんと綴られて

2022年3月22日
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前半戦眠くなってしまった😥
全体的に台詞も少なめで、何だろう何だろうって思いながら観てた感じ。
最後もそうなの?的な
ごめんなさい前半戦の眠気のせいなのか読み解けませんでした。。
記憶喪失ものと言うので作風全く違うけどメメントと比べてしまった自分がいました。

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asgy213

5.0#19 主人公が愛しくなる傑作‼️

2022年3月21日
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鑑賞方法:映画館

冒頭では主人公がただの頭がおかしい人かと思うんだけど、絶対何か裏がある。

いきなり記憶喪失になる病気が蔓延している社会で、主人公の行動はどこか他の患者と違うから。

淡々とリハビリプログラムをこなしていく中で、女性と性的な関わりを持つことを極端に避ける点も変だ。

でも最後の最後に彼の真実がわかると、それまで淡々としていた意味が全部理解出来て愛しさが溢れて来る。

これ作った人凄い。シナリオも良いけど、1970年代みたいな雰囲気もGOOD。

もっと沢山の映画館で上映して欲しい。

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chicarica

4.0ナイフで林檎を切って食べたくなった

2022年3月21日
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鑑賞方法:映画館

特に説明がなく、おじさんが記憶喪失みたいなところから物語がスタートして、記憶を取り戻すために医者から指示されたミッションをクリアして証拠の写真を撮っていく。おじさんはクリマスソングまで完全に忘れている様子でした笑
終始不思議な空気感があり、主人公以外にも舞台になっている街では記憶喪失の人がいっぱいいてみんな記憶を取り戻すミッションをやらされてます。
主人公は作中にほぼ感情を出さず抜け殻のようなですが、ふと自分の中の何かと葛藤しているように見えるシーン散りばめられています。
あとはずっと無心で林檎を食べている姿に自分も林檎が食べたくなりました笑

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matt42

3.5観客一人一人に答えがあるのかも

2022年3月21日
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悲しい


林檎とポラロイド鑑賞

突然記憶喪失になる奇病が流行している社会
主人公もある日突然記憶喪失になり、病院に収容されたのち症状回復プログラムに参加することになる

回復プログラムは、いわば人生の生き直し
自転車に乗る、車を運転する、仮想パーティに行く、クラブでナンパする、お葬式に参列するetc

淡々とした映画
大きな波はないけど、小さな波が不定期に寄せては返し、ラストへ繋がっていく

主人公が記憶を無くす直前から物語ははじまり、淡々とした中に、仮装パーティやクラブのシーンなど、独特のゆるいユーモラスなシーンがクスリと笑える変な吸引力を持ちつつ、全体的には同じトーンで物語は進む

ハネケとかランティモスとかカウリスマキとか好きな人に合いそう、って思ったら、ランティモスの助監督努めてた人らしい

ラストシーンは、印象に残るラストシーントップ10に入るかも
はっきりとした答えを出さず、観客に委ねる終わり方なんだけど、これ悩む
劇中の黒い犬が再登場するシーンとか、買いかけた林檎を台に戻すシーンとか、どう受け取るかで答えは変わる

観客1人1人に答えがあっても良いのかな
彼は忘れたのか、忘れたかったのか

個人的に、☆5中☆3.2

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12shiho28

4.0知恵の実では癒やされぬ哀しみ

2022年3月19日
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鑑賞方法:映画館

「ん?」「んんん?」「ん!」「ん〜」等々、頭の中で「ん」がゲシュタルト崩壊を起こす映画でした。好物でございます。
直ぐに2回目を観る気にはなれないけれど、忘れた頃にふと思い出したらゆったり観たい作品でした。最初は滑稽さもあって、皮肉めいたSFコメディなのかなー?なんて思ってましたが、何かが見えて来た辺りから「愛しさと切なさ」が込み上げてきて、ラストシーンでは静かに落涙しておりました。良い余韻と良いタイトルだ。

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lynx09b

3.5良い治療方法

2022年3月18日
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人生は、忘れたいことばかり?本当に?
痛みとか喪失感とか、過去の嫌なこととか、今大絶賛進行中の嫌なこととか。
全て忘れて全く新しい自分になって、ゼロからやり直せたらそれはそれで良いのかもしれない。
でも、その山盛りの嫌なことの中に、奥の方でキラッと輝く何かがあったりするのだ。
都合よく良いことだけを覚えておくなんて無理で、90.%の嫌なことと、10%の宝石みたいな素敵なことが、常にセットであり続けるのだ。
でも時が経つと嫌な思い出の素敵な部分だけが残る。それには膨大な時間がかかるのかもしれない。
そしてやっぱり与えられた時間を生きていくしかなくて、諦めとか踏ん切りとか、なんかもうとにかく折り合いつけて生きていくしかないのだ…

…という映画でした。たぶん。
ラストシーンで全てが分かると、心の中にじわじわ染みてきます。
そしてこの作品を自分の人生のどのポイントで観るかで、受け取り方がちかってくるのかも。
60歳、70歳と、各年代で見かえすと、自分の気持ちが変わってて、きっと面白いのかも。
そしてやっぱり「新しい自分療法」は意味があったんだと思いたいです。

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hanako

2.5ヒゲモジャ男ばかりなのはなぜ?

2022年3月17日
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喪失からどのようにして再生するかーー
というテーマをユニークな切り口で展開される。

記憶喪失する人が続出する世界を描く発想がユニーク。
脚本もユニークで、ラストは良い。
インテリアはシンプルでオシャレ。
そもそもギリシャの映画が新鮮。

それにしても、あんなに髭を生やした男性がたくさん出てきているのはなぜ?宗教的な理由?
あそこまで髭がはえると清潔感に欠けるよね。そればっかり気になって見ていた。

とにかく眠気と闘った90分でした。
静かなる映画てもあひ、眠りを誘う作品です。

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マキ

4.0失った人生は心に空いた穴

2022年3月17日
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鑑賞方法:映画館

 面白い作品だ。記憶とは何かについて、改めて考えるきっかけとなった。記憶喪失が蔓延するという発想は奇抜だが、それ以外は至って常識的である。常識的にするためには記憶の代用をしてくれるスマホやPCが邪魔だ。だから時代設定はそれらがまだ一般的でない年代にしたと思う。1970年頃だろうか。その場で一枚限りのポラロイドカメラを小道具にした発想もいい。

 人格は記憶によって形作られる。生まれたばかりの赤ん坊には、人権はあるが人格はまだない。遺伝的な気質に加えて、乳児期から幼児期にかけて決定する気性、それに記憶が累積することによって人格となる。
 記憶とは脳に入力された情報である。情報は五感から得られるものと、想像や思考によって獲得されるものがある。その大半は潜在意識に蓄積されて、ときどき取り出される。思い出すという現象だ。日常生活や仕事に必要な記憶は顕在意識に置かれて、すぐに取り出せるようになっている。
 俗に記憶喪失と呼ばれる症状は、逆行性健忘症といって、顕在意識の記憶が損なわれた状態である。潜在意識にはすべての記憶が残っているから、損傷したシナプスが回復するなど、脳の回路が復旧したら、再び顕在意識に取り出される。つまり思い出すのだ。自分の名前は記憶の最初から繰り返し情報を重ねているから、忘れることはまずない。

 本作品はそういった医学的な常識とは裏腹に、医師が奇想天外な治療法を施す。毎日様々な行動を課せられるのだ。患者は街の至るところにいて、何故かみんな真面目で大人しい。課題は日常的な些細なことから、真面目な人が日常生活ではあまりしなさそうな課題まで多岐にわたる。脳や記憶とどんな関係があるのだろうと考えながら観るから、単に踊っているだけの映像が違った意味合いを持つ。
 顕在意識の記憶がなくなっても、潜在意識には残っているから、人格を喪失することはない。しかし長期の記憶がなくなると人生を失う。記憶が戻らないのなら、新たな記憶を獲得すれば再び人生を始められるというのが本作品である。ただしこれまでとは別の人生だ。それが本人にとって幸福なのかどうか。

 痴呆症になって家族の名前さえ忘れてしまうのは、当人にとって人生を失ってしまうのと同じことだが、失ったことさえ認識できなければ不幸ではない。人生だけでなく人格も喪失しているからだ。
 しかし健忘症は人格がありながら、人生の一部を喪失している。これは不幸だ。主人公が知り合った女性が課題をこなす姿に虚しさを感じたのは、当方だけではないだろう。おそらく主人公も同様の虚しさを感じたはずだ。記憶をなくすことで失った人生は、心に空いた穴である。

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耶馬英彦