劇場公開日 2020年12月4日

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「『ホーム・アローン』×オセアニアン・バッドテイスト=?? 予備知識なしでぜひ!」ベター・ウォッチ・アウト クリスマスの侵略者 じゃいさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5『ホーム・アローン』×オセアニアン・バッドテイスト=?? 予備知識なしでぜひ!

2020年12月12日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

ポスターのなんだか狙った感じに誘われ、それならいっそ気持ちよく騙されてやるか、ということで観に行ったら、想像以上にちゃんとした掘り出し物で感心しました。

クリスマス・ホラーといえば、『悪魔のサンタクロース』やら『聖し血の夜』やら『サンタが殺しにやってくる』やら『ビースト 獣の日』など、まあいろいろあるわけですが、
『ホーム・アローン』のパロディとして、本作ではとびきりひねりのきいたアイディアがうまく決まっていて、最初から最後まで画面から気をそらさせません。
ブライアン・シンガーやアメナーバル以降常態化し、ホラーにおいても『スクリーム』や『ソウ』で確立され『ゲット・アウト』に継承された、質の良い脚本主導で意想外の展開を仕掛けてくるローバジェットムービーとしても、じゅうぶん及第点の出来だと思います。

ある程度、きちんと伏線は張られているので、逆に展開が読めちゃう人はたくさんいそうですが、
犯人サイドの凶悪さとマヌケぶりの歪んだバランスとか、重要な小道具を前半からちりばめていくスタイルとか、細部までなかなかよく練り上げられていると思います。

これで、犯人の心理状態とか動機とかにもう少し踏み込めていれば、一段高次の映画になったかもしれませんが、あんまりそういう高尚なことは狙っていない様子。ある種の「類型」として処理されているのは、惜しくもあり、気楽でもありといったところ。

とにかく、このあたりでとどめるかなってラインを絶妙に踏み越えてくるので、面白いは面白いですが、まあまあ胸クソ悪い映画であることもまた、確かです。(そのへんが、他のレビュアーさんも軒並み文章では褒めながら3.5評価ってのにつながってるんでしょうw)
笑いも交えてるぶん、余計にタチの悪い印象で、この居心地の悪さとか皮膚感覚の気持ち悪さって、そういやオーストラリアやニュージーランド産のホラー/サスペンスに通底するものなんじゃないのかなあと。

どうもあのへんで作られる映画というのは、どこか得体のしれない病的なぬめりがあって、道徳観に直接ダメージを与えてくるニューロティックなイヤミス映画が多い印象があります。ぱっと思いつく有名作だけでも、『ピクニックatハンギング・ロック』『マッドマックス』『アングスト不安』『ピアノ・レッスン』『バッド・テイスト』『ブレインデッド』『ベルリン・シンドローム』などなど、なんとなくわかるでしょう? そういや、ジェームズ・ワンもアレックス・プロヤスも豪州人だよな。
一番忘れられないのは、『復讐教室』というぶっ飛んだB級TMVで、あのラストには本当に震撼しました。何しれっとそんなネタぶっこんで来るの? マジでやってるらしいのが余計怖いわ! みたいな。

本作『ベター・ウォッチ・アウト』もまた、そういう「白豪の闇と病み」を漂わせる、独特の歪みと肌寒さをまとっていますが、それもひっくるめて愛すべき映画だといえましょう。

クリスマスに独り身をかこち、世で浮かれ立つバカップルどもに怒りと憎しみをたぎらせている諸氏にとっては、最高にいかしたプレゼントになる「ベター・ウォッチ」な映画。
ぜひ予備知識なしでご覧ください。

じゃい