劇場公開日 2021年6月4日

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「生きる指針を問われる映画」トゥルーノース shironさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0生きる指針を問われる映画

2021年6月4日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:試写会

『トゥルーノース』を見る前にこのレビューを読んでいるあなた!
さては、見るかどうするか迷っていますね。
大丈夫です。このレビューに辿り着いた時点で既に興味があるのですから、絶対に見て損はありません。
ものすごい映画の誕生に打ちのめされることでしょう。

ガッツリ社会派ながら、しっかりエンタメ!
ドキドキハラハラにユーモアやロマンスまで。決して堅苦しくて重いだけの映画ではありません。むしろ人間の営みや自然の摂理を描くシーンに大号泣。
替えのマスクが必要でした。
タブーに切り込み、映画が持つ力を再認識させてくれる骨太な作品。
個人的には第3回大島渚賞を差し上げたい!
人間の尊厳や生き方を問いかける映画ですが、決してこれは過去ではなく“今”の物語。見上げる空は繋がっている。

カクカクしたキャラクターに違和感がある人。
はい。よくわかります。私も予算が足りなかったのかな?なんて思ったクチですから。
監督がトークショーでおっしゃっていたのですが、今も現実に12万人が収容されている強制収容所の事を知って欲しいけれど、リアルに描くとトラウマになりかねない。
適度にリアルだけど一定の距離を置いて観られるように調整した結果、あのデザインになったそうです。
(詳しいトークショーの内容はtumblrや公式サイトで読めます)

映画産業でもユダヤ系の方々が力を持っているのは紛れもない事実なので、ドイツの強制収容所の物語が映画化される機会は多めですが
北朝鮮の強制収容所に関しては、まだまだベールに包まれており、暴くことで少なからず軋轢が生まれる…韓国では作るのが難しいであろうテーマを、なんと日本/インドネシア合作で作り上げたところが凄い!
在日コリアン4世である監督ならではの偉業と言えるのではないでしょうか?

私が子供の頃、近所の焼肉屋さんの友達が日本人の名前とは別の名前を持っているのが羨ましかったけれど、後で歴史的な背景を知ってショックでした。
日本からの帰還事業で朝鮮に渡った約9万3千人の内の2割~3割は、そのまま収容所に送られたそうです。
監督の家族も、私の友達の家族も“日本に残ることを選択した家族”になるわけですが、“帰る”選択をしていたら、運命は大きく変わっていた。
もちろん、収容所に送られた中には、日本人妻や子供たちも含まれています。
間違いなく、日本の問題でもあることに気づきました。

インドネシアが出資しているところも興味深いのですが、実は監督が東南アジアのアニメーターネットワーク「すみません」を作ったからで、
映画の前後に可愛いワンちゃんの絵で「すみません」と謝ってきますww
監督は本当に面白い方で、物議をかもす映画だから、とりあえず先に謝っておこうと団体名にしたそうです。
(詳しくはトークショー記事をお読みください)

時に映画は社会を動かす力を持っている。
『トガニ』や『ロゼッタ』のように1本の映画が社会を動かすことだってある。
それは映画のエンターテイメント性が人々の心を動かし、どんな映画でもドキドキハラハラの中で主人公の喜びや悲しみに寄り添った半擬似体験を生むからに違いない。
ちょうど従兄弟ぐらいの距離感の出来事に感じられます。
12万人と数字で聞くと驚き圧倒されるけれど、そこに一人一人の顔や人生が見えた時に初めて身近なものに感じ、向き合うことができるのではないでしょうか?
(『パトリオット・デイ』のレビューでも書きましたが)
映画のタイトル『トゥルーノース』には英語の慣用句としての「絶対的な羅針盤」の意味が込められているそうです。
この映画が描くのは「北の真実」だけではなく「どう生きるのか?」自分の生きる上での指針を問われる映画です。

shiron
shironさんのコメント
2021年6月27日

CBさん、コメント有難う御座います。
共感していただけて嬉しいです!

URLが入力出来なくて残念ですが、10年前に製作が始まったばかりの頃の映像がYouTubeにUPされています。
いろいろ違っているので、見比べると面白いです。(別人のような監督の姿も含めww)

shiron
CBさんのコメント
2021年6月26日

> この映画が描くのは「北の真実」だけではなく「どう生きるのか?」自分の生きる上での指針を問われる映画です
俺も、そう思います。みんな、観ようね!

CB