「メタ・フィクション崩壊」エターナルズ うそつきカモメさんの映画レビュー(感想・評価)
メタ・フィクション崩壊
ほとんど予備知識もなく、わりとフラットな状態で見ることが出来たのですが、冷たく平板な印象を感じただけで、言葉を選ばずに言うなら退屈な映画でした。もうマーベルの起こすマジックに乗っていけなくなるのかもしれません。
ついでに言うなら、『スパイダーマン ノーウェイホーム』は、過去最大級にのめり込んで見ることが出来たので、やっぱり思い入れのあるキャラクターは欠かすことが出来ないのだなと再認識したところです。
残り50分くらいでしょうか。ようやく映画が面白くなったのは。それほど変わらないはずなのに、ほかのMCU作品と比べてとにかく時間が遅い。
クロエ・ジャオ監督の『ノマドランド』には、浸るような癒しを感じたのですが、スーパーヒーロー映画にその手法は合わなかったようです。なにしろ登場人物たちが魅力に乏しく、何が起きても鷹揚で、しかも多牌気味。初登場の人物たちが何を目指し、何と闘い、誰を中心に活動していくのか、映画の描き方がフォーカス出来ないまま、いたずらに時間が過ぎていく展開は、やっぱり退屈としか言いようのない物です。
しかも細かいつじつまも合わないまま。いちいちそれをあげつらうこともしないつもりですが、どうしても気になることがあります。空を飛ぶ主人公のことを「スーパーマンだ」と子どもが憧れのまなざしを向けたこと。「じゃあ僕をクラークと呼んで」なんて、おどけてしまうあたり、当然DC映画の許可のもと撮られたのでしょうね。
しかし、よく考えてください。
この世界にはハルクもソーもキャプテン・マーベルも実在するのです。どうしてスーパーマンなのでしょう。監督の思い入れなのか、それともクラーク・ケントすらもが実在するとでも言うのでしょうか。どうやら、スターウォーズの映画もこの映画の世界には存在するようで、さすがにジェダイ騎士は架空のエンタメ扱いのようですが、もはやメタ・フィクションの崩壊と言ってもいい現象でしょう。
『デッドプール』や『スパイダーマン』ならば許されたとしても、この映画では似つかわしくないユーモア(いや、悪ふざけ)でしょう。
多様性や文芸作品っぽさを強調して、よりMCUの可能性を拡げたかったのでしょうが、残念な出来上がりでした。
エターナルズは、帰って来なくていい
2022.1.16