「愛し、見護る者たち」エターナルズ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
愛し、見護る者たち
キャップやアイアンマンはもう居ないアベンジャーズ。
もし、再び地球を未曾有の危機を襲ったら…?
“見護る者たち”が居た。
7000年前。捕食者の頂点、“ディヴィアンツ”が地球を襲った。
宇宙の絶対的存在である“セレスティアルズ”は“彼ら”を派遣。
長き闘いの末、遂にディヴィアンツを殲滅。各々、地球の暮らしに溶け込んでいた。
長い長い歳月が流れ、そして現在。
地球規模の巨大地震、殲滅したと思ったディヴィアンツの襲撃&復活…。
再び地球に危機が…。
アベンジャーズでは到底無理。
彼らでなければ。
宇宙の不死身の種族、エターナルズ!
今年公開のMCU3本の中でもダントツの大作。
それ故『アベンジャーズ』級のメガヒットと期待を!…ところが、MCU初の鈍い評価。ロッテントマトでこれまでどんなに低くても70%台だったのに、初めて50%を下回り…。
実際、見た人からも賛否両論。
なのでいつものMCUよりちと不安だったが、いやいや、やっぱり安定のMCU。フツーに面白かったよ。
(もはやお馴染み、別アカウントを作って知能指数の低いクソレビューを投稿し続けているアホ同一人物はどーでもいいとして)
確かにこれまでのMCUとは毛色が違う。
ヒーロー映画ではある。
その一方、神話のような世界観。
それならばソーだって同じ。
しかし、ソーが赤ちゃんレベルに思えるスケール。
7000年もの遥か太古から人類を守り、時に人類に知恵を授け導いてもきた。
“THEヒーロー”なアベンジャーズとは違う、“神々”に近い存在のエターナルズ。
その10人の戦士。
セルシ。物質を操る能力を持つ。現在は博物館で働き、デインという男性と交際。
イカリス。浮遊能力を持ち目からビームを放つ、戦闘時はリーダー的な存在になる最強戦士の一人。セルシとはかつて恋人同士。
スプライト。見た目は少女だが、幻影を見せ変身能力を持つ。現在はセルシと暮らしている。
キンゴ。指からエネルギー弾を放つ。現在は人気ボリウッドスターとして活躍。
ファストス。発明家。現在は息子と恋人と共に平穏に暮らしている。MCU最初の同性愛ヒーロー。
マッカリ。超高速の持ち主だが、聴覚障害の少女。MCU最初の聴覚障害ヒーロー。
ドルイグ。他人の心を操る能力を持つ。何処か陰のある性格で、現在はアマゾンで暮らしている。
ギルガメッシュ。パンチ一発でディヴィアンツをKOするほどの最強戦士。心優しき性格でもある。
セナ。宇宙エネルギーを武器に形成して闘う、最強戦士の一人。ギルガメッシュと組む事が多く、現在はある理由から彼と人里離れた荒野で暮らしている。
エイジャック。エターナルズのリーダー。治癒能力を持つ。現在も人類や仲間たちを見守ってきた…が、
『X-MEN』や『アベンジャーズ』同様、ヒーローが多く登場する作品は各々が個性や能力を発揮してこそが、醍醐味。
話題の一つのキャスティング。
中国系、イギリス人、パキスタン人、アメリカ人、黒人、アイルランド人、韓国人、メキシコ人…と、グローバルな人種が集った。
話的にはジェンマ・チャン演じるセルシが実質の主人公。女性メンバーは彼女を含め計5人、(見た目が)子供は2人。同性愛者に聴覚障害者。
今のハリウッドをあざとく反映した多様性と陰口叩く声が聞こえてきそうだが、個人的には改めて世界には多くの人たちが居ると思った。
同時に、もはや白人アメリカ男性だけじゃない。誰もがヒーローになれる時代。
これだけ多くヒーローが登場すると“推し”が出てくる。
特に日本なんかでは、アンジー!アンジー!!アンジー!!!だろう。(ポスターでもセンター取りだし)
私の推しは、マ・ドンソク!マ・ドンソク!!マ・ドンソク!!!
遂に我らアジアの兄貴にして漢、マ・ドンソクがハリウッド・デビュー! しかもMCU参戦というニュースを聞いた時からワクワクしていた。
役柄もぴったり。超タフでパワフルで、頼れる。愛する人をずっと支えるほど優しい。
ハリウッドに行ってもやっぱり兄貴は漢だぜ!
にしても、マ・ドンソクがあのアンジーと同じ画面に映って共演する日が来るとは…。何だか、チョウ・ユンファが『アンナと王様』でジョディ・フォスターと共演した時の事を思い出した。
話題その2。こちらが一番の話題であろう。
この異色のヒーロー作品のメガホンを撮ったのは、驚き!の抜擢。
『ノマドランド』で今年のアカデミー賞の覇者である、クロエ・ジャオ!
彼女のこれまでの作風は元より、スケールや予算だって180度…いや、全くの別世界。
これまでの作風は詩的なアート系。中国人でありながらアメリカ大西部への郷愁を感じさせるロードムービー。
そんな彼女が何故何故どうして、MCU大作を…?
実はMCU作品のファンだというジャオ。
全くの畑違いの監督を抜擢するのは、MCUでは珍しい事ではない。
驚くべきは、抜擢したのは『ノマドランド』の前の『ザ・ライダー』で注目された後だという。これもある意味、目利きだろう。
初ジャンルではあるが、セナとギルガメッシュが暮らす荒野は、ジャオの作品の舞台設定を彷彿。
また、エモーショナルな濃密なドラマやアクション面ではこれまでの作品で出来なかった事をたっぷり詰め込んだという。
キンゴが指から放つエネルギー弾。これ、大ファンを公言する我が日本の『幽遊白書』の浦飯幽助の“霊丸”を意識したという。アジア人初の女性オスカー監督が少女の頃、日本のコミックの大ファンだったなんて嬉しい限り…。
ネタバレになるのでちと控えるが、クライマックスに登場する超バカデカイ“手”と“顔”。何だかうっすら、『エヴァ』の世界観を感じた。
そのクライマックスや要所要所、たっぷりCGを駆使したディヴィアンツとの能力バトルは迫力満点。
だって彼らは不死身の戦士。闘いのスケールも比ではない。
作風はMCUの中でもシリアス寄り。しかし、ちょいちょいユーモアも挟む。アベンジャーズ雑談やライバル会社ネタにはウケた。
アクションの見せ場はあるし、ちょいちょいのユーモア。
が、その合間合間のドラマ。何分、2時間半の長尺。
長い、退屈、眠たくなった…の声、声、声。
確かにこれまでのMCUの快テンポよりかはスローテンポ。
でも、それが何処か神のような存在の彼らに合っていた気もするし、今回初めましての面々なのだから各々のドラマや描写はじっくり描いてくれて寧ろ有難い。
彼らは何者で、何処から来たのか。
その使命。何の為に闘うのか。我々人類との関係。
ディヴィアンツを殲滅し、解散。しかし本当は…。
再びディヴィアンツとの闘いに備え結集した時、自分たちの衝撃の事実を知る。
これもネタバレになるが、触れないと筆が進まないので、ネタバレチェックを付けるとして。
自分たちエターナルズとディヴィアンツはセレスティアルズによって“造られた”存在。
ディヴィアンツが星を襲い、エターナルズが闘う。その際放出したエネルギーで新たなセレスティアルズを生み出す。
終焉、誕生の繰り返し。
自分たちは“神”どころか何者でもない。良く言えば有能なロボットかクローン、悪く言えば使い棄てのただの道具に過ぎなかった…。
(見てたら、あれ、これってちょっと『まどマギ』っぽいぞと思った)
7000年も生きてる割りに根暗な恋愛関係や苦悩のドラマばかりとの辛辣な声も。
それでいいじゃないか。人類だっておそらく太古の昔からそう。
それに、事実を知った彼らを思えば尚更。
今感じているのは、何なのか…?
偽の感情なのか…?
そんな事は断じてない。
悲しみ。
憎しみ。
怒り。
ある者の裏切り…。
その反面、
喜び。
幸せ。
愛。
彼らとて我々人間と同じ。この感情は、本物。
だから闘う。
愛し、護る為に。
犠牲や悲劇の末、危機を回避したエターナルズ。
また彼らに平穏な時が…。
が、思わぬ“存在”が脅威に…!
新たな危機。
“リターン”も気になるが、それ以上に、恒例のエンディングのオマケ映像。
アノ人物の弟…!?
セルシの恋人の正体。その時の謎の声の主は何と…!
MCUワールドはまだまだ拡がっていく!