劇場公開日 2021年11月5日

「神話、ヒーロー伝、そして人間ドラマ」エターナルズ サブレさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0神話、ヒーロー伝、そして人間ドラマ

2021年11月6日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

楽しい

不死の種族であるエターナルズが地球の危機に立ち向かう物語。
エターナルズは人間社会では神話として語り継がれており、ゆえにこの映画での彼らの立ち位置は神あるいは英雄といったところ。と聞くと、やはり雷神ソーを思い出す。しかしソーのシリーズとは異なり、かなり『神話』的な描かれ方がされていると感じた。
というのは、話の登場人物は二人を除いてエターナルズのみだからだ。その二人の地球人のうち一人の出番は少なく、もう一人はまさにエターナルズの『神話』を記録する語り部として振る舞う。ソーにあまり『神話』を感じなかったのはメインキャラクターが地球人、しかも科学者でソーとまあまあ対等にやりあっていただったからだろう。ラグナロクは神話がどうとかいうレベルではないし。

しかし、今作エターナルズは『神話』として描かれるだけではない。いつものマーベル作品同様ヒーロー伝でもあり、そして人間ドラマも描いている。
まずヒーロー伝。コスチュームに身を包んだ10人の超人たちが、各々の能力を駆使してディヴィアンツと闘う。当然、まずかっこいい。そして、10人も新しく出てきたのだから、当然過去のヒーローと能力が被っている。しかしそれがいい。強さや利便性を突き詰めれば、超常能力は必ず似るものだ。私は賢くデザインされた能力を見るのは好きだ。また、能力には戦闘の向き不向きがあるが、彼らが地球人類の繁栄を補助する目的で派遣されたことを考えれば、それも妥当だろう。
次に人間ドラマ。彼らも人間同様に恋もすれば葛藤もし、家庭を持ったり社会的成功を望んだりする。しかも、単に人間ドラマをエターナルズに置き換えたわけでもなく、各々彼らなりの悩みを抱えて生きてきたことがわかる作りになっている。
何よりも良いのが、彼らが決して無敵の力を持つ完璧超人ではないことだ。彼らも不意打ちを食らえば死ぬし、戦闘向きでない能力を持つ者は前線に立たず補助に努める。戦闘力で言えば、ソーやハルク、ヴィジョンなどより強そうな者はたくさんいる。しかし、だからこそ、それが良い。神話的存在が人間を導いているが、高みから操るわけでもなく命がけで戦い、オフの時には人間らしく振る舞う。この段階的なギャップがこの映画の魅力といってもいいだろう。

最後に予告と実際の内容の違いについて話したい。予告では「エンドゲームは始まりにすぎなかった」と銘打たれっていた。そう聞くとつい、これからのMCUフェーズがエンドゲームを超える大規模な物語を紡ぐものと思ってしまうが、そうではない。ただ単に、この映画の物語がエンドゲームで起こった出来事を発端として始まったというだけだ。
シャンチーのときには「最強ゆえに力を封印した」などと大嘘で宣伝していたが、それよりはマシか。だがどうにも最近予告と実際の内容が大きく異なる作品が増えている気がする。

サブレ