「大人向けに再構築された神話」エターナルズ bionさんの映画レビュー(感想・評価)
大人向けに再構築された神話
マーベルが『エターナルズ』の監督としてクロエ・ジャオに白羽の矢を立てた理由がよくわかった。スクリーンいっぱい広がる自然の美しさに陶酔してしまう。『ノマドランド』でもそうだったが、映像が何かを語っている。
それに加えて、人間の内面も丁寧に描かれている。過剰なセリフもなく、予備知識がなくても登場人物のパーソナリティが自然と理解できる物語仕立てになっている。10人もメンバーがいるのに全然こんがらないのは不思議。
チームがまとまって人類の危機に立ち向かう単純な展開を予想していたが、500年の空白期間があったために個々の考え方に多様性が生じ、思いもよらないドラマを生み出している。意表をつく展開に、思いっきり引き込まれた。
バラエティに富んだ人種で構成されるヒーローチームというのは定番になってしまったが、エターナルズには、手話を使う聴覚障害者も含まれている。そして同性愛者も。
クロエ・ジャオ監督が描く多様性は、押し売り感が全然なく、物語に自然に溶け込んでいるところが素晴らしい。そして、人類の悪行の象徴として原爆で破壊し尽くされた広島を映し出す勇気を褒め称えたい。
メンバーの名前が神話由来であるのは、一目瞭然だが、この『エターナルルズ』は大人向けの神話として見事に再構築されている。ラストで見せるイカリスの行動は、神話にふさわしい。
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