「古典のような普遍性」クルエラ 津次郎さんの映画レビュー(感想・評価)
古典のような普遍性
クルエラの物語を知らず、もっと若年層向けの話だと思って見たが、コメディ気配に包まれているものの、愛憎の寓話だった。途中に大きな岐点があり、印象が変わる。
白い顔に隈取りなので、ヒール値をもったヒロインだと思うが、じっさいの彼女は優しく人情深い。エステラであろうとクルエラであろうと性根には慈悲を持っている。悲しい過去をもち、ときには傷つきながら、ワルぶった外貌をしつつ、ファッションデザイナーを夢見て、解ってくれない世間を相手に奮闘する。
人々が、被服に関心を持っていなければ、デザイナーが君臨することはできない。着飾って集まる階級がいなければ、需要/供給が成り立たない。よって(クルエラの世間は)都市とブルジョアの比較的狭い世間だと思う。オリバーツイストを彷彿させる泥棒稼業をしてきた孤児が目指す世界としては、とてつもなく高い野望にちがいない。
──もっとファンタジーな話だと思っていたが、底辺を味わうエステラには現実的な風合いがあった。
とうぜん現実にもバロネスのように人の褌で相撲を取っている傲慢なデザイナーがいるにちがいない。エステラもバロネスも、現実的な人物像だと、個人的には思った。
映画はぜんたいに衣装賞な感じで映える。
近年レトロな音楽・風俗を取り入れた映像作品が多いが、80sが多いと思う。70sは新鮮な気がした。デイヴィッドボウイが化粧していた時代。ボヘミアンラプソディのころ。ロンドンの街並みはそのままで70sを具象できる。なにげにすごい。
エマストーンを見ながらよく目が大きいひとだと思う。やはりそう思った。嫌われ役に徹したエマトンプソンも巧い。Mark Strongはじつに執事然とした人だが、やはり執事だった。
ディズニーのキャラクターはいずれもストーリーを持っているのだろうか?伝承の気配さえ感じるとても豊かな外伝だった。
ところで(ごぞんじかもしれないが)エマストーンがSNLにゲスト出演している寸劇で神回のがある。あらましは「当選に期待通りのリアクションをしてくれない一般庶民」。すでに笑えるでしょ。Dream Home Extreme Isn't Exciting SNL。この動画になんども幸せにしてもらった。