劇場公開日 2021年5月27日

「歴史的快作を壊した、ヴィランの言い訳」クルエラ 今日は休館日。さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0歴史的快作を壊した、ヴィランの言い訳

2021年7月4日
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『オーシャンズ11』にしたかったのか、『ジョーカー』にしたかったのか。そこで迷子になったのが、この映画の明らかな落とし穴である。

冒頭から映画の軸となるファッションと音楽を柱に、攻めたカメラワークと洒落た演出、軽快なテンポ。キャラクターの個性も相まって「ここ十数年の映画の中でも、最上級に格好良い作品のひとつ」と思わせるに充分なスタイリッシュさ。
“タランティーノばりの音楽遣い×ウェス・アンダーソンばりの画作り”、は言い過ぎかもしれないが、イギリスのカウンターカルチャー隆盛とクルエラの台頭を重ねる構成も素晴らし過ぎ。とにかくどの場面もキマっていて、無茶苦茶格好良い。
「こりゃ大当たり間違いないわー」と、こちとらアガりまくりである。

が、

雲行きが怪しくなったのは、人間ドラマの配分が高まってきたあたりからか。

なぜクルエラが悪の道に堕ちることを、出自の不幸や外的要因で正当化しなくてはいけないのか。

純粋な悪(もしくはアナーキズム)を描けないのが、ディズニーだからなのか、子供をターゲットに含めているからかは知らないが、この「言い訳」が映画を壊していく。
そもそも復讐心の起因が突発的で、そこまでのストーリーとの因果関係がなさすぎるのである。急な進路変更を成立させるべく、脚本は突如ご都合主義に走り、威風堂々としていたバロネスさえも、小物感ぷんぷん。クルエラは単なる似非ジョーカーですし。あーあーあー。キャラクターの整合性のなさを、「サイコ」という一言で片付けるのは乱暴すぎ。後付けで思いついちゃったのは誰ですか?良いアイデアですけど、やっちゃ駄目です。

すると途端にさっきまで格好良かったファッションや音楽までも、中身を伴わない軽薄な演出に見えてくる。ダサい、興醒め、メッキ感。

軽快かつスタイリッシュに突っ走ってくれたら良かったのに……。「たーのしー!かっこいー!」だけじゃダメなのかね。格好良さも人間ドラマも、共倒れしてしまいました。

とはいえ

冒頭から前半部の、ファッション×音楽を軸とした“格好良さ”は特筆に値する。本当に見事。
そして何よりバロネス役のエマ・トンプソンの素晴らしいこと!彼女の立ち振る舞い、表情、指先まで神経の行き渡った芝居を見るだけでも、お釣りが手からこぼれ落ちるほどの価値がある。まさにfabulous!なのよ。

本当にとってつけた「ジョーカー感」だけが悔やまれる。白塗り×お口真っ赤でキャラかぶってるし。
その辺りって、本当に監督がやりたかったことなんですかね?

今日は休館日
今日は休館日さんのコメント
2021年7月15日

確かにそうですね。なんか私的に余計だったんですかね。

ジョーカー自体は全然好きなんですけど。

今日は休館日
よんしんさんのコメント
2021年7月15日

ほぼ、「ジョーカー」の批判ですね

よんしん