「多くの子供たちに観てほしい!」ロン 僕のポンコツ・ボット おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
多くの子供たちに観てほしい!
冒頭、いかにもアメリカらしい新製品紹介のプレゼンとして、この物語のカギとなるBボットが登場します。その豊富な機能と、テンポのよい鮮やかなプレゼンのおかげで、一気に作品世界に引き込まれます。ユーザーのことをしっかり理解し、趣味嗜好に合わせて最適なサービスを提供する、しかもコミュニケーション機能も兼ね備えた自律型ロボットとしてのBボットは、もう完璧です。こんなロボットがいたらさぞ楽しかろうと、大人でも欲しくなります。
本作の主人公は、友達付き合いが苦手なバーニー。でも、決して友達が不要なわけではなく、むしろ人一倍欲しがっています。でも、どうしていいかわかりません。巷で大流行のBボットも、彼だけ持っておらず、それを級友にからかわれます。そんなある日、父と祖母がBボットをプレゼントしてくれますが、実はそれが不良品。ここから、バーニーとBボットのロンとのおかしな交流がスタートします。
流行の物を持ってないことから生まれる疎外感、目の前の人ともガジェットを介しての交流、ネットに繋がりを求めての承認欲求など、今まさに子供たちのまわりではさまざまな問題が起きています。それを共感的にわかりやすくあっという間に提示してみせ、バーニーとロンとのちぐはぐだが温かい、きわめてアナログな交流を通して、真の友情とは何かを描き出す、ディズニーらしい脚本に脱帽です。
ただ、作品テーマはシンプルに胸に響いてくるので、会社経営者のいざこざはなくてもよかったかなとも感じました。そこだけちょっとテンポが落ちた気がします。また、終盤でクラスメイトが急にバーニーとの友情を取り戻すのですが、ここはもう少し丁寧に描いて欲しかったかなとも感じました。
折しも、日本中の子供たちに一人一台のPC端末が貸与されるようになりました。近い将来、似たようなことが起きるかもしれません。ネットに繋がりユーザーサービスに徹したガジェットがもてはやされる現代において、ロンはその対極の象徴として描かれます。ネットに繋がらない、会話もうまく成立しない、でもキュートで憎めない。そんなロンとバーニーの交流が、真の友情について考えるきっかけとなる本作。ぜひ多くの子供たちに、子供をもつ親たちに観てほしい良作です。