サマーフィルムにのってのレビュー・感想・評価
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SFにも時代劇にも何のリスペクトも感じられないのにどこまでも愛おしい、メンドくさい堂々巡りが焼き付けられた不細工なのに美しい青春グラフィティ
主人公は高3女子のハダシ。時代劇が大好きだが所属する映画部が撮影しているのはライバル花鈴が監督するユルフワな青春映画でちっとも面白くない。自作の脚本で時代劇を撮りたいが文化祭では一作しか上映しないのが映画部の決まり、脚本選考で花鈴に乾杯したハダシには予算が回ってこないのだった。そんな折ハダシの前に現れたのが凛太郎。彼の容姿が余りにも自分の脚本の主人公として理想的だったので、舞い上がったハダシは嫌がる凛太郎を無理矢理主役に抜擢、親友の天文部員ビート板と剣道部員のブルーハワイを巻き込んで映画製作に突き進むが、凛太郎には誰にも言えない秘密があった。
正直言うとかなりデタラメな作品。恐らくは『時をかける少女』みたいな話にしたかったんでしょうが凛太郎の秘密は序盤で無造作に暴露されるし、タイムトラベルものなのにタイムパラドックスのことを気にしている様子がほとんどない。ハインラインの名前がシレッと引用されるからと言ってSF小説へのオマージュは全然見当たらない、そもそもハダシが時代劇好きというところに何のリアリティもないのに、その時代劇好きぶりを補強するような描写もない。だいたいこんなタイトルなのに映画部が撮影に使っているのはiPhone。そして出演者のほとんどの演技が寒い。だいたいポスタービジュアルのシーンがどこにもない。どこまでもデタラメなのに余りにも愛おしいのは観ている方が恥ずかしくなるような舌足らずさが全編に滲んでいるから。好きなものを好きと言えない、やりたいことがあるのに難癖つけてやらない、そして好きな人に好きと言えない。このやたらと遠回りでメンドくさい堂々巡りこそが青春、その不細工さを不細工なままでやや粒子の粗いフィルムに焼き付けた尊さにハートをブチ抜かれました。そういう意味ではポスト大林宣彦の作品と言っても過言ではないかと。
登場人物達のあだ名について何の説明もないぶっきらぼうさもいいし、ほぼ素人集団の演技陣の中で一人気を吐いていたのが板橋駿谷。自分が老けてることをやたらと気にしている高校生ダディボーイの存在がパラパラと崩れてしまいそうな儚い映画の核になっていたと思います。もう一人重要なのはビート板を演じた河合優実。青春映画には欠かせないメガネっ子という鉄板キャラをあくまで等身大に体現したさりげない演技力に感動しましたが、『佐々木、イン・マイ・マイン』の苗村役で陰影の深いキャラクターをさりげなく演じていたことを思い出しました。
完璧からは程遠いのに忘れ難い、実に印象的な作品です。
コロナ禍で疲れた心を少しだけ癒してくれる
この映画のジャンルは何といえばいいのだろうか。SF映画というにはあまりにもすべてのシーンが日常的だし、青春ラブストーリーというには恋心の盛り上がりに欠けている。
しかし面白い。主人公ハダシには、情緒不安定みたいな危なっかしさと、それとは裏腹の執念深さというか、諦めない粘り強さみたいなものがあって、そのふたつが自転車の前輪と後輪のように微妙なバランスを保っているようだ。なんとも珍しいタイプのヒロインである。か細いように見えるハダシだが、意外に牽引力があって、周囲をぐいぐいと引っ張っていく。
周囲もそんなハダシの底知れぬ情熱に浮かされるようについていく。理由はわからないが、なんだか楽しそうだからだ。そもそも複数の人間が集まってひとつのものを作るのは、どんなことでも楽しい。衝突して分裂しそうになったり、また収斂したりと、青春そのものである。
本作品はそういった誰もが共通して持っている感覚にうまく訴えかけている。観客は最初から最後までハダシの精神状態を心配しながら鑑賞することになるが、それはハダシと一緒に映画をつくろうとしている生徒たちも同じで、その不均衡が物語を力強く進めていく。
まったくよく出来た映画だ。中学校の作文だったら満点をもらえるだろう。鑑賞後に心に残るものはあまりないが、自分の青春時代を思い起こして懐かしい気持ちになる。コロナ禍で疲れた心を少しだけ癒してくれる清涼剤のような作品だと思う。
毬藻
元乃木坂とか関係ない素敵な青春劇
個人的な思い入れで見たけど良かった。最後が秀逸
予告編を見て見に行きました。
高校生生活の最後の夏休み、映画を作るというのは47年前に私も経験があります。
秋の文化祭に出品する映画作りという点もそっくりです。
脚本を作った監督がいて、撮影、照明、音響と得意分野のスタッフを集めるというのもそっくりです。
監督だけがやたら熱いのもそっくりです。
資金作りのためにアルバイトするのも同じです。
撮影担当が天文部というのも47年前と同じです。
完成前には編集のために徹夜するというのも同じです。
違うのは8mmカメラとスマホの差ぐらいなものでしょう。
そんな個人的な思い入れで見に行きましたけど、けっこう楽しめました。
SF的要素はネタがあるのを映画の中で監督が明かしております。
確かに、そのとおりです。
この先、どうなるのかを見た人に期待させるところで終わらせています。
最後、あのカットで終わらせるのは秀逸です。
勝新を愛する主人公の話
若い皆さんが楽しめたのなら良かった
合わなかっただけなのか?
良くも悪くも学生っぽい。
いいじゃん! おもしろいじゃん!
【”エモい”が炸裂】
気づいていたのに
おすすめされた映画
何も情報を仕入れずに観た感想を述べますね
時代劇が好きな主人公のはだしが、自分の脚本映画を作るお話。
周りに撮ることを薦められながらも、納得のいく主役を見つけられなかったところに突如イメージにピッタリ当てはまるりんたろうが現れる
さまざまなことがおきながらも、夏休みという限られた時間の中で映画を撮ることに
高校生のまっすぐにひたすら「映画を完成させる」という目標だけに走り続ける姿は、青春そのもので何かのために頑張れるということの素晴らしさを見せつけられました。
短い夏の中で、さまざまな感情が行き交いもちろん全てが楽しいいい思い出ではありません
こんな簡単に乗り越えられるの?という解決方法ではありましたが、それをきっかけにお互いの見えていなかった部分を見ることができさらに映画のクランクアップに拍車がかかっていく
充実するほどにあっという間に過ぎていく時間に私も思わず高校生の時代を振り返って重ねてしまいました
そしてなんと言ってもラスト
ここ最近見た映画の中で終わり方がとても好き
この後どうなるんだろう、想像力がとても膨らむ
タイトルではじまりタイトルで終わる
まるでアクションとカットのように
映画の中で映画を見ました
ただ最後の最後まで、もう一つの作品を作っていたかりんちゃんがよくわかりませんでした
悪いやつなのか、いいやつなのか、はたまた何も考えていないやつなのか
もっと主人公を引き立てられる役だったんじゃないかな?
特にラストのところ、急に出てきた感がすごかった...
ハダシとビート板の表情に注目
青春炸裂
傑作青春ものでした。
『あどりぶシネ倶楽部』+『映像研には手を出すな』+『時をかける少女』 という雰囲気と言えば伝わるでしょうか?
そして主人公が「時代劇マニア」という斬新さ。
乃木坂46は全然わからない私ですが、元センターの伊藤万理華、この作品で覚えた!
役者として真剣かつ高スペックなのが、ほんとに冴えないブサイクな変顔ばかりする時代劇マニアの女の子を、見事に演じきっていたところ。
ビート版たちサブキャラもいい。
『なつぞら』に続いて、板橋駿谷が37歳で「老け顔の高校生」役で、これにも大笑いさせてもらいました。
そして、話(脚本)がほんとにいい。
SFテイストを交えつつも、悪人のいない、登場人物がみんないい奴ばかりな優しい世界なのも楽しい。
未来へ想いを繋げるために、今を一所懸命生きる姿も素晴らしい。
あとで思い返すと低予算っぽい作品でしたが、観ている間は全然気になりませんでした。
斬るか、勝負するか、告白するか
高校が男子校だったから、共学の高校の文化祭前の話となるとちょっとテンションが上がってしまう。みんなで何かを作り上げたり、やり遂げようとする話が大好きだ。
本作は文化祭の準備をする話ではなく、文化祭で上映する映画を撮影しようとする話。少し違うが、テンションが上がってしまう。しかも、正規の映画部の作品を乗っ取ろうとする。そして撮影しようとするのが時代劇。はだか監督の時代劇に対する熱量がハンパじゃないのもさらにいい。こういう熱い思いって心に響いちゃうんだよ。
個性豊かな人間が集まって、紆余曲折しながらチームとしてまとまっていき、そこに恋愛も絡んでいく。ちゃんと笑えるところもあるし、青春映画として完璧だった!もう、なんか楽しそうで、キラキラしてて、愛おしかった。
ちょっと違った雰囲気で面白かったのが撮影後に編集するシーン。映画部の部室を2つに分けて正規組と反乱組を対比させ、その2つをつなぐように、音声担当の男の子の恋を描くという表現が短いながらもよかった。
観る前は、本広克行監督の「サマータイムマシンブルース」と「ビューティフルドリーマー」みたいな映画かと思っていた。でも観た後はちょっと印象が違う。最近観た「青葉家のテーブル」もそうだが、何かを創作し悩む人を描きこうとする映画なんだ。斬る、勝負する、告白するをうまくミックスさせたラストも清々しかった。今後も松本監督をチェックしていきたい。
主演の伊藤万理華さん
新たな青春讃歌から狼煙が上がる。
正直単なるアイドル映画だと侮っていました。評価に引っ張られて行ってみたら、なんの、なんの。時代劇ヲタクの女子高生映画監督ハダシと寄せ集めの仲間達が繰り広げるひと夏の物語。果たして自主映画「武士の青春」は無事完成し文化祭に間に合うのか?!そして突如目の前に現れた凛太郎の正体とは。
新たな青春讃歌ここに誕生!
伊藤万理華が初々しかった。ちょっと空回りで浮き足立ってる感じがハダシにピッタリ。しかもご本人は20代半ばですか。全く違和感なかった。逆に板橋駿谷の違和感はもはや神がかっている。めっちゃ笑えた。金子大地は今後ますます注目ですね。
「2時間かけて他人の物語なんて誰も見ない」そんな未来。映画というコンテンツはどこへ向かうのか。館内が暗くなったら至福の時間が始まる合図。再び明かりが灯るまで無駄な時間なんてきっとない。そこには早送りもスキップも一時停止もない。松本監督は見事に、実に鮮やかにこの先映画業界が対峙してゆくこの問題に警鐘を鳴らした。余韻が深く残る最高のタイミングで訪れたラストカット。箒を交える二人の武士の背景に狼煙が上がったのを見た気がした。
タイトルなし
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