劇場公開日 2020年10月9日

「まったく、あんたらのやることと言ったら!」シカゴ7裁判 ショコワイさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0まったく、あんたらのやることと言ったら!

2021年2月24日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

1 1968年のベトナム反戦運動を巡る史実を題材にした法廷劇。

2この映画が採り上げたのは、暴動の共謀罪に問われた反戦運動家の裁判を巡る史実。判決という事実を改変するわけにはいかないので、どんな作り方をするか心して見た。時代背景や思想など重たい所はサラリと流し、娯楽作品として面白く見せる工夫をしていて上手く作られていると感じた。

3良かった点は、①冒頭から時代背景、反戦運動家の紹介、政府の思惑が順次簡潔に語られ、舞台を一気に法廷に持ってくる導入部の手際の良さ。②被告たちと代理人が、法の番人としては最悪の判事とバトルを繰り返しながら、あの時何が起きたのか?を示していく、テンポの良さ。③被告人のグループは、必ずしも同質ではなく素性や主義主張に違いがあることを明確にし、優等生タイプ、劣等生タイプ、ブラックパワ−に焦点をあてた。そのうえで、最後にはある方法で戦争終結の強烈なメッセージを表す。④被告人や人権派弁護士、権威主義的な判事、良心のある検事などの人物造形がことごとく適格でドンピシャリはまっていた。
 反面、良くなかったのは、タイトルの工夫のなさ。これでは人は興味を持たない。また、二重否定のセリフをそのまま訳すなど翻訳にも工夫があれば良かった。

4 この映画は、五十年前の歴史的史実を題材に、国家権力は大義の名のもとに、時には権力者の自己都合をもって、行政や司法機関を使って平気で事実を捏造し、正義に反することを行うことを示した。そして、健全な社会体制であれば、その過ちは見直され自浄作用が働くことも示された。政府によるさまざまな出来事や不祥事が起きている我が国では、自浄機能が正しく発揮できるのか危惧する。

ショコワイ