「百年先を見通すが故」天外者(てんがらもん) movie mammaさんの映画レビュー(感想・評価)
百年先を見通すが故
ずっと見たかった作品。
五代友厚の半生を三浦春馬が演じる。
薩摩に産まれ、長崎で学び、イギリスに渡り、薩摩に一瞬帰るも大阪で港を開き資本経済の礎を築いた、五代友厚。
士農工商制度の中で下級藩士に産まれて剣道にも優れていた才助だが、語学に長けていた努力が最も素晴らしいなと思った。地頭の良さは、幼名に才助、諱に友厚と名付ける親のセンスからも持って産まれたかなと思われるが、語学には努力が必要だ。英語の重要性を子供のうちから気付き身に付け、薩摩藩の武器調達を使命に鹿児島から長崎へ。
土佐の坂本龍馬とも長崎で出会い、所謂日本に武器を売りつける役割のグラバーとも出会い、未来の日本のあり方に想いを馳せていく。
元々大砲が遠くに届かない山あいの地形の薩摩では、武道を叩き込まれる。
なので剣に長けた五代だが、無闇に斬ることを好まず、ピストルも好まない。
大量の武器を買って使うより、他国を知り外交する頭脳が余程国益になるだろうと言う考え方。
その通りだと思えるのは、五代が生きて示したその価値観の上に成り立つ日本で平和に育っているからで、侍社会でその価値観を胸に秘めるだけでなく行動した五代に感服しかない。
後の伊藤博文がイギリスに行くため幕府から金銭援助を受ける支援もしたが、五代友厚自身はグラバーに頼んでイギリスを見に行く。
映画では出島時代に識字ができ知識を求める遊女と親しくなり、薩英戦争で連行された五代を解放させるため遊女はグラバーの嫁になりイギリスにも渡り、おそらく結核を五代にうつし亡くなったくだりがあるが、実際には五代は結核で亡くなったとしかわからない。
それでも、イギリスに行ったのも、上海で薩摩藩のために船を調達したのも確かである。
そしてイギリス産業革命を目の当たりにし、日本も武士が幕府に尽くし、トップダウンで富も肩書きも全てが決まる世の中ではなく、全員が意思や夢を持てる社会の実現に奔走していく。
アメリカの鉄道網とフランスの通信網を取り入れていたら、一生欧米のインフラ奴隷にされていたのだから、国鉄と国営通信を選んだ五代の先見の明は素晴らしいし、不平等条約に気付き立ち上がった精神にも感服しかない。そして五代の周りには、理不尽にうんと言えない意志の強い女性が寄る。
自惚れやとも言われた薩摩の若者が、侍としての生き方を捨てて、早々に洋服を着て明治維新後に孤軍奮闘大活躍する。
先を行きすぎて周りに理解されない苦悩を分かち合えた、土佐の坂本龍馬、岩崎弥太郎や山口長州の伊藤博文などとの出会いと交流はそれぞれの使命推進の確信、自身に大きく繋がっただろうし、先をいく者たちに国のレベルを引き上げて貰った。
ただ、上記の者たちが元々極貧すぎる生まれでは無く、教育を考えてくれる環境があり、また、国の命で海外に行く機会を掴んでいたことを考慮すると、人間お金をかけて育てた分大きく育つんだなとも感じた。
その機会を得るために知識機転勉学をどんどん身につけるべきだし、それをしている中国インドの発展は凄まじい。日本は後手中心思考に甘んじてしまっている気がするが、海外に先回りして法律も貿易も軍事も外交も、条件を飲むのでは無く叩きつけるくらいの勢いを取り戻したい。