劇場公開日 2020年12月11日

「二人の天外者」天外者(てんがらもん) 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0二人の天外者

2021年6月25日
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鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

悲しい

興奮

幕末~維新後の偉人と言えば…
坂本龍馬、勝海舟、西郷隆盛、政治家なら大久保利通、伊藤博文…。
恥ずかしながら、この人物の名は初めて知った。
五代友厚。
しかしその生涯や才能はまさしく、“天外者”!

武士から政府の役人、そして民間実業家へ。
立ち止まるという事を知らぬようなその生きざま!

元は薩摩藩士。
ペリー来航で揺れる日本。
しかし五代はこれを、日本が大きく変わる時!
「誰もが夢見れる国にする」
「俺なら出来る」
「俺に一日早く学ばせるという事は、この日本が一日早く進歩するという事」
何ちゅー異端児。大言壮語。自惚れ屋。
それ故、旧幕府側からは目の敵。毎日のように追われ、時には命を狙われる。
が、改革派からは目を掛けられる。勝から“日本を変えるかもしれない男”と言わしめ、大久保から信頼厚く、伊藤や後の三菱財閥の岩崎弥太郎とは旧知の仲。イギリス人貿易商トーマス・ブレーク・グラバーの支援で海外留学にも。
特に龍馬とは厚い友情育み、志共にし、この国の未来を語り合った。
留学中、あの事件が起きた時…。

明治。新しい時代。
でもそれは言葉だけで、国や民の生活は何も変わらない。
政府の役人であったが、この“縛られた”立場を退官し、本当の意味で日本を変える為、実業家に転身。
それからが凄い!
鉱山、造幣局、製造工場、証券取引所、商工会議所設立、大学設立、金属工業、貿易商、運輸会社、商船、銀行…。
誰もが自由に働く。誰もが自由に働ける職を作った。
それが日本を動かし、本当の意味で夢の実現に突き進んだ。
産業革命で近代日本の礎を築いた大実業家。
言わば、もう一人の渋沢栄一。

龍馬役の三浦翔平がなかなかハマっている。
弥太郎役の西川貴教も好助演。
幕末~近代日本に生きた男たちを熱く演じる。
森川葵は哀しい遊女を、蓮佛美沙子は支える妻を健気に。

でもやはり、この人の存在感無くして本作の魅力は無かっただろう。
三浦春馬。
単に最後の主演映画だからって捉える人もいるだろう。じゃあ、『ダークナイト』のヒース・レジャーは…? 間違いなく、本作は彼の最後の主演映画で彼の代表作になった。
それで魅せた全身全霊の熱演。体現。確かにちとオーバーリアクション気味かもしれない。が、それほど熱く演じたのだ。それほど熱く五代友厚を生きたのだ。
だからこそ、未だ信じられないあの急逝が…。

“天外者”とは鹿児島県の方言で、凄まじい才能の持ち主の意味。
確かに五代は“天外者”な才で、誰にも真似出来ぬ凄まじい事をやってのけた。
何もそれは私腹を肥やす為ではない。
この国…さらに言えば、この国の未来。
子供、孫、100年先ーーー。
人はどうしても自分や目先の安定を重視する。
別にそれが悪い訳ではない。一個人、生活するなら当然だ。
しかし、この国全体の未来を思うなら…。
今、我々が堪え忍ぶ必要がある。歯を食い縛る必要がある。踏ん張る必要がある。
そうすれば、きっと。いや、必ず。
クライマックスの五代の熱弁は最大のハイライトで、胸打つ。

冷静に“映画”として見て、多少難あり。
演出はステレオタイプ。重厚さに欠け、TVSPドラマっぽくも。かと言って青春群像時代劇なので、あまり重厚過ぎるのも…。
病に伏せた遊女はるを勝手に外に連れ出すなどツッコミ所もあり、一番の難点は時間経過。海外留学行ったと思ったらいつの間にか帰って来たり、妻と出会ったと思ったらすぐ子供産まれてたり。
2時間弱の尺に収めるのは幾ら何でも無理。
何故なら、天外者!

大言壮語で自惚れ屋でもいいじゃないか。それを有言実行したのだから。
才ある無いがあるかもしれない。でも、最終的にはそれじゃない。
目的を持って、突き進む事。
知られざる偉人で、我々と同じ夢見人、五代友厚の姿をこの目に焼き付けた。
そして同時に、

爽やか好青年から味のある役者へ。
三浦春馬さん。
どんな“天外者”になっていっただろう。
もうすぐ、突然の死から1年が経とうとしている…。

改めて突然の死を惜しみつつ、このタイミングで見れた事に胸が熱くなった。

近大
りかさんのコメント
2023年4月1日

こんばんは♪
突然失礼致します。
ー4/5、TOHOシネマズ68劇場にて「天外者」春の特別上映vol.2実施決定ー
とありました。
もしよろしければどうぞ❣️詳細はお近くのTOHOシネマズか他実施劇場にて。返信不要です。🌷

りか