「ちょいネタバレ。」天外者(てんがらもん) ナオコフさんの映画レビュー(感想・評価)
ちょいネタバレ。
映画そのものはかなりカットされた残りを繋いだものということで、大河ドラマの総集編といった様相。
女性脚本家が三浦春馬に当て書きした五代友厚のキャラクターは先進的すぎて周囲から理解されない孤高の人物。
武器商人グラバーが語り部となっているが史実でも五代らへのそれなりのリスペクトはあったもよう。三浦春馬自身も才能の理解者は日本人のみならずイギリス人演出家やデザイナー、アメリカ人舞台演出チームなど国際色豊かだ。何より外国人に与えられた仕事の方が才能相応だったりする。
諸々念頭に置いて映画を観るとさらに理解が深まるだろう。ただ、遊女はるとの恋愛はしっかり描かれているのに晩年まで五代を支え、子までなした奥さんがあっさりとしか描かれていないのが腑に落ちない。はるは空想の人物なのでエピソードはいらないと思ってしまうのだが。豊子だって没落を味わい夢が欲しかったのでは?夫と新しい国を夢見たのでは?
最後に故三浦春馬さんの演技だが100点満点だろう。「日本人の筋肉は植物性たんぱくで作る」ところからこだわる人なので、やや細身ながらバネのような強靭な肉体と陰影に富んだ表情は大変豊かでしかも自然だ。磁器のような白い肌に艶やかな黒髪がトレードマークだが、日焼けした青年期の風貌は子供の頃よりsoldierとして鍛え抜いた侍そのもの。舞台で鍛えた滑舌も良く時代劇のわざとらしいケレン味なしだ。
いや、この人本物じゃないか! 正直申し訳なく思うほど、この人は本物なのだ。
日本の俳優にはあまり見ない論理的にキャラクター作りをやっていく頭脳派なのだ。聞けば事務所の若手に特別講師として演技指導もしていたという。年を重ねればプロデュースや演出もやっていただろう。龍馬役の演技に迷っていた盟友三浦翔平さんと比較しても春馬さんの演技のバリエーションには驚くばかりだ。(翔平さんが演技下手なわけではないが)
三浦春馬さんの悲劇的な死から毎日情報を集めレビューをまとめた。知ってから観るのと知らずに観るのでは違うと思うがちょっと踏み込んで書きすぎてしまったかもしれない。