劇場公開日 2020年12月11日

NETFLIX 世界征服の野望 : 映画評論・批評

2020年12月8日更新

2020年12月11日よりヒューマントラストシネマ渋谷、池袋シネマ・ロサ、ユナイテッド・シネマアクアシティお台場ほかにてロードショー

NETFLIXの大成功と、彼らとガチで戦って敗れたライバルの攻防の記録

「ハウス・オブ・カーズ」や「オレンジ・イズ・ニューブラック」、直近では「全裸監督」や「愛の不時着」といったオリジナルドラマのストリーミング配信で世界中から支持されているネットフリックスですが、もともとは、DVDを郵便で家に届ける「無店舗DVDセル&レンタル」の会社として、1997年にスタートしています。ネットで注文を受け、郵便で送る。送料は安いし店舗代もかからないので、ビジネスは順調に伸びていきます。

しかし当時、全米では「ブロックバスター」というレンタルDVDショップ(日本におけるTSUTAYAやGEOみたいなもの)が圧倒的なシェアを持っていて、やがて、急成長したネットフリックスとガチでぶつかることになります。

この映画は、創業からブロックバスターを倒す(自滅させる)までのネットフリックスの歴史を、初代CEOのマーク・ランドルフ(後に退社)や彼の仲間たち、また、ライバルのブロックバスター元CEOや幹部たちにインタビューしながら構成したドキュメンタリーです。

画像1

興味深いのは、ブロックバスターの元幹部の発言でしょう。彼らは、結構惜しいところまで行ってた。激しい戦いを繰り広げ、一時は相当にネットフリックスを追い詰めました。だけど、大株主の采配ミスで倒産への道を歩まざるを得なかった。ブロックバスターの元CEOだったジョン・アンティオコが、大株主とのいざこざで退職する際、「私は、ネットフリックスの株を買うと宣言し、実際に買った。しかも大量にね」と語ります。彼らは戦いに敗れましたが、今となっては痛恨事でも何でもなく、むしろライバルの株式を買って儲けちゃってた。「転んでもタダでは起きない」スピリットが大事なんだなあ。

また、この映画は、2019年に邦訳が出版された「NETFLIX コンテンツ帝国の野望」という本のスピンオフ映画と言ってもいい。本の著者ジーナ・キーティングは、映画の方にも「原作者」および「脚本家」としてクレジットされています。

本の方は、映画より遙かに詳細にネットフリックスの偉業の数々に言及しています。例えば、精緻なことで知られるレコメンドエンジン「シネマッチ」の開発プロセス。当初、在庫管理のために、新作映画のDVDをレンタルしたがる顧客に同ジャンルの旧作をレコメンドするのが役割だったシネマッチが、やがて協調フィルタリングを使って個々の顧客に最適な映画を推薦するものに変遷し、そのマッチング性能を追求するために、賞金100万ドルを懸けたアルゴリズムコンペティションを開催するようになる……。ネットフリックスは「優れた映画体験を提供するためにテクノロジーを使い倒す」取り組みに、かなり手間ひまかけていることが分かります。

ネットフリックスという会社の成り立ちや成功の歴史を、1時間45分で理解できるのがこの映画。そして、より詳しく彼らのテクノロジーや企業文化について知りたい人は、本も合わせて読むことを強くオススメします。

駒井尚文

Amazonで今すぐ購入

関連ニュース

関連ニュースをもっと読む
「NETFLIX 世界征服の野望」の作品トップへ