由宇子の天秤のレビュー・感想・評価
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正義とポリシー 事実と虚構 緊張と弛緩
本作は、あまりに深く、重い。
由宇子は、ドキュメンタリーディレクターとして、事実を追い求める。マスコミによって都合よく切り貼りされた情報、虚構の混じったSNSの情報でなく、自らの足で事実を追うのがドキュメンタリーディレクターとしての正義(あえてポリシーと言えよう)。
ところが、ある日突然の父親の告白によって、そのポリシーが揺らぐ。さらに、事態は単にその告白だけにとどまらない。
何が事実で何が虚構なのか。
由宇子は追い詰められ揺らいでいく。
本作では、由宇子の腕時計が印象的だった。
これに対する由宇子の振る舞いは、自身の気持ちを如実に表しているように思う。
また、作中での緊張と弛緩も強烈だった。
ほっこりするシーンは微笑ましいのに
シリアスな場面では息をすることさえ苦しくなる。
由宇子の人間らしい一面と、ディレクターとしての割り切った一面。
とても衝撃度の高い作品だった。
あいつ、すぐ嘘つくから
3年前に起きた女子高生自殺事件を追うドキュメンタリー監督の由宇子は、ドキュメンタリー作成の傍ら父親の経営する個人塾を手伝っていた。
由宇子は塾生の一人、萌に出会う。
片親でお金に困っていた萌だったが、大学に行きたいと塾に通っていた。
しかし、とある衝撃的な事実が発覚し…
真実はどこにあるのか?
加害者は誰なのか?
正しさとはいったい?
それぞれの苦悩と悪が錯綜し、答えの出ない問いをこねくり回す、実に重く苦しい152分。
ここまで救いのない映画は初めてかもしれないというほど、知れば知るほど自分の胸に突き刺さってくる真実。
光を当てれば闇が見える。
こういった日常に潜んでいる問題点を、映画のテーマとして現実的に炙り出したのは本当に素晴らしい。
ある意味誰もが加害者。
償いきれない罪とそれに付随する嘘。
ジャーナリストとしては何としても真実を伝えなくてはならないのに、人としては嘘で偽らなくてはいけないという矛盾。
学校の隠蔽、テレビ局の捏造、免罪のための嘘はいけないと強く思うが、映画ラストの告白も決して正しかったとは思えない。
自他共に守るためならば、嘘は必須であり優しさだと思う。
萌の容体、由宇子のその後など、不明点の多いまま迎える何ともやりきれない結末。
でも、それが現実。これはお話ではない。
他人事が自分事に。
この映画の問いに答えは出ないため、鑑賞者側に考えることが委ねられる。(側って何?って話になっちゃいますが…)
むしろ由宇子同様、自分事として考えなくてはならない。
テーマと内容は申し分ないが、152分も必要だったのかは疑問。
長尺映画を悪いとは思わないが、こういった映画はもう少し簡潔に撮った方が印象にも残りやすいし、説得力もあると個人的には思う。
途中の長回しや、2つの事件の頻繁な場面切り替えは、せっかく張り詰めた緊迫感を薄れさせるような気がした。
それでも取り敢えず観てみて欲しい。
我々の価値観も天秤にかけられている。
予想をはるかに超える濃密な人間ドラマが描かれました。見終わって振り返ってみたのですが、いくら考えても何が真実で何が正解だったのか分かりません。…そんな、とても悩ましい作品です。
予告編の映像が 「観てみたくなる」 内容でした。
プロデューサーに「片渕須直」の名前も見つけて
これは観るしかないでしょう というわけで鑑賞です。
◇
あるドキュメンタリーを作成中の、主人公=由宇子。
川原でリコーダーを吹く男の横顔。
そんな場面から始まる。
自殺した女子高校生の父親らしい。
高校の教師とただならぬ関係になってしまい
学校にバレ
マスコミの格好の餌食にされ
この川原で命を絶った。
このシーンを撮影する場面から
由宇子の人柄が見え隠れする。
・無理やりコメントを引き出そうとはしない
・オフレコで口から出た言葉を「使って良いか」と問いかける
「被害者に寄り添いつつも、公正に」
それが彼女の信条。
この時点で分かる「事件」の関係者は二人。
・女子高校生
・高校の教師
ドキュメンタリーは、関係する人たちを追いかけ
広がり、膨らんでいく。
・女子高校生の父親
⇒ パン屋。 負けるものかと、誰も買わなくなったパンを焼き続ける…
・高校教師の母親
⇒ 何度も引越しを繰り返し、隠れるように暮らす日々…
・高校教師の姉
⇒ 遠くに引越し、小さな娘とひっそり暮らしている
彼らの声を通して
「真の被害者が誰なのか」 を
訴えかける番組を作り上げようとする由宇子。
「公平な立場で公正なジャッジを」
ドキュメンタリーを作成する由宇子の
矜持は、ぶれることが無い。 はずだったのだが
ここでもう一つの事件が起きる…。
◇
由宇子のもう一つの顔。
父の経営する進学塾で「講師」をしている。
教え子の女子高校生。
彼女の妊娠が発覚… しかも
父親が父親だと言う… (なんかこう書くと、ややこしい?)
新たなドキュメンタリー対象 発生
しかも 当事者が実の父 (あぁ なんてこった)
当初からの事件 と 新たな事件
他人事の事件 と 身内の事件
天秤にかけられるのは
「公平に公正に」 から離れ
「得る物と失う物」 に変わり始める。
「ドキュメンタリーの放送だけは何としても」
何とか実現させようとする由宇子だが、 そこに
自殺した教師の姉から告げられる真実…
「弟の遺書は、私がすり替えた物です…」
事実誤認。 …誤認? いや …隠蔽? 捏造?
…
そして由宇子の下す選択は…
◇
う~ん
重い話なんだろうと 予想はしていましたけれど…
「重い」 + 「息苦しい」 + 「胸が痛む」 という
三重苦のストーリーでした。
思い返しても くすっと笑う場面とか
ほとんど (ひとつも?) 無かった気が…。
少しは 息を抜ける場面が欲しかったかなぁ
というのも正直な感想です。
※どんなおいしい料理でも
味付けの濃いのが続くと
途中、箸休めが欲しくなります そんな感じ
もちろん
役者さんの演技が素晴らしいし
とても完成度の高い作品だと思います。
観れて良かった。
◇あれこれ
子供の父親
結局のところ
お腹の子の父親って誰なのでしょう …はて
誰かれ構わず体を売っていたワケではなさそう ですが
(チャラい男子高校生 の可能性は、ある気がする…)
瀧内公美さん
「彼女の人生は間違いじゃない」
くらいしか観た記憶がないのですが
今作ではなんとも 「強く たくましい女性」
似合ってました。
河合優実さん
妊娠する女子高校生役を好演。
すごく自然体の演技が光ってました。
これからの活躍にも期待。
◇最後に
「新聞記者」
に近い作品かな、と観る前は思っていたのですが、
う~ん 違いましたねぇ…
こちらの方が、泥臭いというか
身近にも起きてそうな事件がテーマだから
感情移入しやすい… とでもいいますか…。
※実際には周りにこういう事件の関係者いませんけど… (汗)
◇最後の最後に
スマホのカメラ
ああいう場面でレンズを向けられると
銃口を突きつけられた時のような緊張感が
体を走りますね… こわ~
※実際にはそんな場面に出くわしたコトありませんけれど… (汗)
☆映画の感想は人さまざまかとは思いますが、このように感じた映画ファンもいるということで。
バックの音楽もなく ドキュメンタリー的な 淡々としたカメラ回しが ...
バックの音楽もなく
ドキュメンタリー的な
淡々としたカメラ回しが
この作品とマッチしていて良かった
いつもクールな由宇子
私が同じ立場だったら
父親の件は難しいけれどやはり
同じ選択をしたと思う
最後は作品のオンエアがなくなったから
彼女なりにケジメをつけたのかな
それにしても
何があっても取り乱すこともなく
冷静に判断できて、惚れ惚れするね
演じてる瀧内公美さんも良かった
若い頃の田中美佐子さんに
雰囲気がちょっと似てる感じがした
これからも注目していきたい
2021年ベストムービー!⭐️✨
なかなか強烈な2時間半だった。
ラストに明かされる2つの真実に鳥肌が立った…。
2人の"不幸な"女子高校生(「自殺した女子高校生」と「主人公の父の子を妊娠してしまう女子高校生」)へ思いを馳せないと、この作品は薄っぺらく面白くも何ともないなと思った。
萌に最後まで寄り添えなかった由宇子の立場が、何とも歯痒くて、悲しい。
*しかし、この作品の登場人物はみんな、何て不幸なんだろうか…笑
天秤は、所詮いつかは、バランスを失う。
「天秤」と言うからには、二つの相反するものの対立・対比・比較・平衡が主題となっているはずで。
報道加害を追いかけていたドキュメンタリー作家である由布子が、報道被害を恐れ、事実を隠す側に回る。隠された真実を追う姿勢と、事実を隠蔽する側に回ったと私的行動の対比。
作品であるドキュメンタリーが世に出るまでだ。と言う自己弁護により、かろうじて平衡を保っていた由布子の天秤は、萌のついた嘘への疑惑と、矢野志帆の真実の暴露によって崩れる。放送が中止となった夜、真実を明らかにすべきと考えた由布子は絞殺されそうになるが、息を吹き返してスマホを手に取る。おそらく、自分自身の天秤の経験を、これから記録として残していくために。
てな感じなんでしょうか。
まずは、長い。次に、息苦しい。救いも無い。詰め込み過ぎ。陳腐。暗い画面に、ダレダレな展開。滝内公美が良かった、としか。
せめて120分以内。息を吹き返した後の由布子の生き方・行動の変化があるのか無いのかの具体的な描写。が欲しいなぁ、って思いました。
割と期待していたので、正直物足りなく。
で、この後に連続して、アフリカン・カンフー・ナティーースゥ、を見てガハハになって帰って来たんですわ。足して二で割ったら、良い感じだったのに。って、足せるか、この二本?
2つの出来事
を通して事件を起こしてしまった人や、その周りの人の苦しみを描いています。マスコミや、その報道を受けての一般の人々の執拗な責め。怖さを感じます。最後はみんながマイナスになったまま終わってしまったので、その点は残念です。瀧内公美さんは前から作品を見てますが、密やかな色気と強さを持った良い女優さんですね。
父娘そろって聖者ではなかった話
事前に評価を観て、鑑賞を決めた。
マイナス評価がほぼなかったので、かなり期待感を持って渋谷ユーロスペースに向かう。
しかし結果として、正直期待外れ。
内容とは関係ないが、開始早々上映トラブル。しばらく暗転のまま。
終了後も何かのトラブルで、別の映画の予告の音声が大音量で流れるなど、期待外れ感を一層増加させた。
ヒロインの心が逡巡するのは仕方ないとして、なんか正義に対する一貫性がない、というか、やはり「自分の都合」で「正義」の定義をころころ変えてる事に共感できなかった。
「お父さんは自分の都合だけで決めてる」、だぁ?
命と放送を天秤にかけたら、どう考えても命でしょ?
完全にあんたの都合で決めてるやん。
教師の奥さんの告白を隠そうとしたのは何故?
はっきりとはわからないのに、赤ん坊の父親を自分の父親だと決めつけたのは何故?
なんかこう、考えの一貫した熱いジャーナリスト像を勝手に期待してただけに、
ブレブレの普通の人間らしい主人公に、ちょっとがっかりした。
それから最後のシーンも、もちっと考えてほしかった。
あのまま動かないとか、ピクピクして生死が分からないままでエンディングを迎えるとか。
その方が鑑賞側としては面白味が増したと思う。
そして申し訳ないが、一番興ざめやったのは、映画が終わった後、出口でニコニコしながら名刺を配ってた、この映画の監督。
いや、そんなにニヤつかんでよ。
こっちは、「うーん、この映画なぁ~」と真剣に考えて難しい顔してんのに、作った方の監督がニヤついてるって、どうなんよ。って感じ。
テレビ放送される可能性は低いやろうなぁ。
放送されたら観るかなぁ~。観んやろうなぁ~。
オヤジのサロンパス
いつもの映画館で
今週から夕方の回が設定されて見易くなり
しかも今日は金曜日のサービスデー 行くしかない
1時間早退
いい曜日時間の割に観客は少な目 5~6人
なぜかオラの列に4人
町山智宏氏がラジオで今年一番だと絶賛していて
楽しみにしていた
なるほど かなり心は揺さぶられた ラストは衝撃的
と思いきや…いい間だった
エンドロールに音楽なし ん? 全編通してなかったか
映画の中で あぁこういう瞬間が一番幸せだよなぁと
思わせられたシーンがいくつかあった
・ババ抜き
・オヤジのサロンパス
・焼き飯
・映画のチケット
こういう些細なことにヒトは幸せを感じながらも
心のどこかにトゲが刺さっている
トゲを抜くと自分は楽になるかもしれないが
幸せを保っていたバランスを崩すおそれがある
タイトルいい
ドキュメンタリー番組で間接的に関わる事件と
リアルに直面する出来事
自ずと違う天秤を使う
主人公の最後の行動天秤が狂ってしまったのか
使い分けていた天秤がひとつに統一されたのか
塾生募集の看板を塗りつぶしたのは誰で何の理由でとか
あのエピソードは何を表しているのか…とか
疑問も残ったがこれから想像するのも楽しそうだ
語り合える知り合いはいないので各種レビューも楽しみだ
最近スクリーンで観る日本映画比率が高くて且つ質がいい
嬉しいことだ 「脚本 監督 編集」の共通点がある気がする
ゴージャスな洋画にも頑張ってほしい
終了後いつもの駅前ベンチで缶ビール
これもささやかな至福の時間だ
新コロ緊急事態が解除されて街に活気が戻って嬉しい
正義が人を狂わす
マスコミ報道によって人生が狂った家族と、それに携わる由宇子の正義が描かれる…
ラストは想像にお任せのパターンって事は、マスコミ報道の渦中に曝されるって事か…辛い映画だ
「正義中毒」って言葉を思い出す
確かに正義は大事だけれど貫く事で一生、辛い過去を背負う事も覚悟しなきゃいけない…
疑問に思ってるのは、妹さんは兄の強行動画をいつ手に入れたんだろう…
その前にその動画は誰が撮ったんだろう(本人の性癖?)
しかしながら、この場面の妹さんの勇気に由宇子も同調しラストで告白する
由宇子の正義は、カンニングを塾長の父親が生徒の前で晒した事から確立したのかな
そして気になるのは「人参をぶら下げられた馬」…ご褒美は成果でしかないこと
そして、気になる事を必ず動画にしインタビューする癖も、シロクロハッキリ付けたい正義感なのかな
一生、胸に秘め自分を騙して生きていくのは、暴露して世間から叩かれるよりも罪悪感として辛いのかも知れません
家族という括りで犯罪者と同じ仕打ちを受けるという世間の常識が変わる日を願います…少なくとも兄弟姉妹に責任はないです
ましてや勤務先やご近所さん…波紋は拡がり収縮の付かない正義中毒。
シロクロハッキリ付ける正義感より、グレーな方が生きやすいし「知らぬが仏」って言葉もあり(ラストの告白は自己満でしかない、相手にとっては憎悪を産み苦しむだけだ)
ドキュメンタリー監督の木下由宇子(瀧内公美)は、3年前に起きた女子...
ドキュメンタリー監督の木下由宇子(瀧内公美)は、3年前に起きた女子高生自殺事件を追っていた。
自殺した女子高校生は、「彼女が通う教師と深い関係になり、結果として自殺」というのが世間で言われていることだった。
しかし、彼女の自殺の後、関係を持ったとされる教師は、身の潔白を記した遺書を残して、自殺。
遺書には、「学校に嵌められた」云々が書かれていた。
由宇子は、遺された女子高校生の父親を取材するとともに、教師遺族の取材を試みていた・・・
といったところからはじまる物語で、そんな矢先、学習塾を経営する父・政志(光石研)と塾に通う女子高校生・小畑萌(河合優実)が関係を持ってしまったことを知ってしまう・・・と展開し、ふたつの同じような事件の狭間で、由宇子は揺れ動くことになる。
3年前の事件については「真実」と、事件が引き起こした遺族の困窮した現在の生活を追うのだが、父が引き起こした事件については隠蔽する方向へ動いていく。
緊迫感を生む物語が展開され、観ている間は退屈はしないのだけれど、かといって惹き込まれていくところまではいかない。
どうしてだろうと観終わって考えたのだが、脚本はよく出来ているのだが、どうも頭でこしらえた物語といった感じが強く、描写にリアリティがあるのがかえって、その拵え物感を強く感じさせる結果となったのではなかろうかしらん。
描写的には、教師遺族(教師の母親)の描写がリアルで、演じている丘みつ子のリアルさには胸が痛くなります。
もうひとつ物足りなさの原因となっているのが由宇子のキャラクターで、ジャーナリズムの正当性を通そうとするがゆえのエゴイズムが滲み出す、いわば「汚れ役」なのだが、演じている瀧内公美の硬質的な雰囲気のせいなのか、脚本の書き込み不足なのかはわからないが、灰汁にまみれた感じがしないせいかもしれません。
それでも随所にいいシーンはあり、ここぞというときに由宇子が取り出して相手に本心を告白させるスマホなどは、小道具としても上手く、これがエンディングで効果的に使われている。
どこか物語の奥底や余白に潜む理解はできないが感じさせるものが足りないので、傑作・秀作とまではいかないが、2時間半を超える力作であることは間違いありません。
予備情報が多くて期待しすぎてしまった
もっとフラットな気持ちで何の予備情報もない状態で観たかった。
個人的には最後は目が覚めずあのままいきなりエンドロールの方が断然よかった。
その方がその後の展開をあーだこーだ想像できるから。
人は皆、結局は自分が一番可愛いと思う生き物なのかなと。
どちら側でもないと言っていた由宇子でさえ最後は高校生の噂だけで父親の罪を少しでも軽く思いたいという一心で問い詰めてしまうのだから。
仮にめいが嘘をついていたとしてもそれで父親の犯した罪が軽くなるわけでもない。
本当に体を常習的に売っていたなら、塾の月謝も払えていただろうし、さほど高そうに見えないイヤリングも時計も自分で買えたと思う。
1度や2度したかもしれないけど近くで見ていた由宇子ならわかったはず。
あの男子高校生は本当はめいの事が好きで振られた腹いせに嘘をついたのかもしれない。
誰がどう嘘をついていたかなんてわからない。
嘘かもしれないけど最後まで信じてあげてほしかった…
けど、やっぱり一番罪深い人間はあの教師だろうな。
そしてめいの父親のような人間が一番怖い。
告白すればあーなるのは予想できた。
観た後にいろいろと考えさせられたのは久しぶりです。
疑問
1.塾のお父さん、精子少ないはずなのに妊娠したと本当に思ったのか?
2.塾看板の新入生募集をマジックで、つぶしたのは誰?
3.最後、主人公は生き返るが、ほんと日経あんな事あるのか。
4.その後、被害者お父さんさん、やっちゃったお父さんを殺しに行くよなぁ。主人公は生き返ってそれを止めにいかないんだなぁ。
∑(゚Д゚)【緊急動議 傑作なので上映館を増やして下さい】
誤りをすぐ正すのか?それとも嘘で誤魔化すのか?こう質問されて大概の人は前者を選択するでしょう。
自分の父親が未成年を犯し子供ができてしまったら?どうしますか?その未成年は素行も悪く売りをやっているような子だったら?堕胎させて無かった事にしますか?
単純な選択だと正しい事を選択しますが、対象やその非道が具体的だとそうでない場合もあるのかと思います。特に近親者が起こした事件は世間体などが大いに働き、人は真実から目を背けるもんなのでしょう。多いに共感できます。
主人公の由宇子は真実を追うジャーナリストとして、父親が未成年を妊娠させた娘として、上記2つの立場を同時に味わう事になるのです。そして、、、
もしこの映画のラストが被害者と加害者が明日に向かって仲直りをするものなら凡作だったでしょう。私は容赦なく★2.5だったでしょう。
あのラストは、、、、、凄い、、、、コレが人間なんだよ。現実はそうなるんだよ。リアリティのあるラストに感動です。
人は弱いんだよ。
PS:上映館増やすべきでしょう。傑作ですよ。
自主製作でここまでの作品を作るのは天晴れです。
自主製作でここまでの作品を作るのは天晴れの一言に尽きます。
渋谷の劇場では監督自らチラシ配りをされていて、その情熱にもいたく感心しました。
ただ、そのチラシが継続的な支援を求めるオンラインサロンの勧誘みたいな内容でした。
ここまで頑張って海外のベルリン映画祭に入選しているような監督さんでも次回作を作るのは大変なことなんだなと思うと、なんだか暗雲とした気分になりました。
改めてポスターを眺めてみると海外の映画祭にはたくさん入選しているけど、日本の映画祭は皆無なんですね。
日本にも自主製作映画系を応援すると謳っている映画祭が沢山あると思うんですが、その映画祭って一体誰を支援しようとしてるのかしら?
独り善がりで劇場公開しても客が呼べないアマチュア映画ばかりを選んでないで、この監督こそ支援しろよと思いましたね。
まぁ、日本の映画祭に入選しても無意味だと思って、監督側が無視している可能性もありますが。
内容に関してですが、ちょっと構成がチグハグなところが散見していて、整理されていたらもっと見やすくもっと面白くなったと思いました。
一体何が正しくて何が間違っているのかを観客に考えて貰いたくて、監督が意図的にそうした部分はあると思うのですが、興行的に成功しないと次回作が作れないなら尚更、もっと観客に分かりやすく伝える努力は必要です。
具体的に言うと、主人公と同行するプロデューサーが局から社員として勧誘されている、カメラマンには子供が産まれる、というセリフがあったシーン、あれがもっと前半にないといけません。
それを聞いたからこそ、主人公は自分の父親の醜聞を握りつぶそうとするんじゃないのかと。
現在の形だと、取材する事件では正義感から悪や権力に反抗するのに対し、プライベートでは真逆の、真実を握りつぶす悪を演じています。
主義思想が完全に矛盾していて、観客としてはこの主人公をとても応援できないし愛せません。
父親が教え子を孕ませたことを知った主人公は父親なのに糾弾する。
刑法で罰せられるだけじゃなく世間から袋だたきにされると分かっていても、矛盾したことが許せないから実の父親でも同じように断罪すると覚悟を決めた。
ところが、プロデューサーの昇進やカメラマンに子供が産まれることを知った。
このままでは自分の行動が仲間や他人の人生まで狂わせることなってしまう……。
そこではじめて、主人公は父親の醜聞を握りつぶそうとする。
……のが、せめて愛せる主人公の行動じゃないでしょうか。
その先は、主人公は違法な手段で教え子の堕胎をしてしまう。自己保身のためにも。
加害者側に立ってしまった主人公が、今度は取材する事件で世間から疎まれる加害者家族の肩を持つような番組を作って放送してしまった。自分を正当化する意味でも。
そのあとに、加害者家族が証拠を隠蔽していたことを明かして大問題になってしまう。
主人公は加害者家族に肩入れしたことが間違いだったと気付く。
すると、じつは教え子が男子生徒とも肉体関係を持っていたと知る。
さらに、教え子がウリまでしていた噂も知る。
父親が教え子を孕ませたわけじゃない、きっと別の誰かが孕ませたんだと考えた主人公は教え子を嘘つき呼ばわりして非難する。
すると、嘆き悲しんだ教え子がその場から逃げ出して交通事故に遭ってしまう。喋れない状態に。
真相は闇の中だが、教え子を孕ませたのは自分の父親だったという既成事実が出来上がってしまい、堕胎が教え子の父親や世間にバレてしまった主人公にはバッドエンドが訪れる。
で、よかったような気がします。
まぁ、個人の好みと言われればそれまでですが、その方がシンプルで分かりやすいし、エンタメとして面白いと思います。
社会的なテーマ性や作家性はあるので、この監督に足りないのはエンタメ性です。
それで90分以内に収まって、良いセリフが3個ぐらい、良いシーンが5個ぐらい、良い劇伴も数曲あれば、商業映画も入れた中で今年度邦画のナンバー1を取れたんではないかと思います。
そんな次回作を期待します。
とてもよかった
2時間半もあるのだけど充実していて時間の経つのが速い。ドキュメンタリーの事件が中心なのかと思うとそうでもなくて、由宇子の仕事も含めた生活が丹念に描かれる。
子供の貧困に心が痛い。あのようなつらい状況の子どもには嘘があっても、そういうものだという前提で寄り添うべきだ。
由宇子の行動が遠因となってメイの事故につながる。結果論ではいろいろな判断が正しくなかったと言える。
お父さん、57才で一発で妊娠させられるとは思えないので、メイの子どものお父さんは若者だと思う。
メイのお父さんが絵にかいたようなボンクラおじさんで、若さを失った若者みたいな、切ない。
エンタテイメントスリラー。
比較することに意味があるかわかないけども、例えば「パラサイト半地下の家族」は主な撮影に77日かかっている。 「由宇子の天秤」パンフレットの監督自身の撮影日誌によると、この映画は全ての撮影を14日間で撮影しなければならなかった、そうだ。
事前のリハーサルは行ったようだが、もし、この映画に、せめて4週間の撮影と予算があれば、さらに影響力のある作品になったことは間違いない。この映画にすでに寄せられている絶賛を見ると、余計にそう思ってしまう。
物足りない、ということではない。
素晴らしく練られた脚本であり、映像、演出、演技、音声、美術、全てにプロの仕事がなされたもので、自主映画とは全く次元の違う、エンタテイメントスリラーである。
大きな2つのストーリーが同時進行する。
そのどちらも、由宇子目線で物語は進行するのだが、彼女の立ち位置が全く違うのだ。
片方は、彼女が隠蔽された事実を追う側であり、もう片方は彼女自身が事実を隠蔽しようとする側に置かされる。周りの嘘にも翻弄され続けるが、彼女自身も時に嘘をつく。登場人物すべてが、嘘ではないにしても、知っていたことを言わなかったり、言えなかったことが、誤解を生じさせる。
それらの嘘や隠蔽のほとんどは、悪意によるものでなく、自己防衛だったり家族への思いやりを原因とするもので、我々の日常に起こる嘘や隠蔽と全く同質のものだ。だから、見ているこちらが物語に引き込まれていく。普段はその感情の行先を決定してくれる音楽さえない。(笑)
「今、どっちに感じればいい?」と問いかけ続ける150分になる。
自宅から近い上映館が高崎シネマテークで今日観てきたのだが、なんと高崎での撮影がメインだったそうで、行く直前にその情報を知った。 群馬に近い場所に17年ほど住んでいるが、群馬県は文化レベルが高い地域という認識なので、それを聞いて妙に納得した。
素晴らしい映画なので沢山の方に観てほしい、と思います。
太田光さん。野村邦丸さん。日大芸術学部が作った映画とも言えますよ。宣伝してくださいな。
娘がねじれる時
フリーのドキュメンタリー映像監督の木下由宇子。不純交際が噂された中学校教師と女生徒が自殺した事件の学校側の陰謀と煽ったマスコミの責任を問うドキュメント番組作製と父親の個人経営の学習塾の講師を掛け持ちし、とても忙しい。新しく入塾したひとりの女子を気にかけていたが、娘が塾で嘔吐する。塾教師と生徒の垣根を越えて世話をするゆっこ先生。娘の家庭は父子家庭で父親はティッシュ配りなどの不安定なバイト生活。ガス代未納で止められているアパート。娘は妊娠していた。
「由宇子の天秤」
天秤にかけられるものは何と何なのか?彼女が世に問う作品と父親?ドキュメンタリー映画の放映日と娘が抱えている時限爆弾?
急激な展開(教師の妹の放映取り下げ要求、娘の秘密)により未成年性犯罪ばかりが目立つ暗澹たる内容になってしまった感じ。病院の駐車場で娘の父親に、娘の妊娠の相手は自分の父親の塾長だと言ってしまうのは父親の怒りの矛先をわざと自分に向けさせようと発作的にとった偽悪的行動なのか?正義感と偽悪的行動の大きな揺れ幅に見ている私の天秤は壊れてしまいました。渾身作の番組は放送中止(お蔵入り)になってしまう。
キャストの俳優さんの演技、とくに丘みつ子、松浦祐也が良かっただけに詰め込み過ぎの釈然としない展開にもやもや感だけが残りました。
瀧内公美自身の魅力と安定の演技。タバコ吸う設定で、塾のバルコニーで少女に一本くれる?っていう場面が良かったですw チョコチップスティックパンだったけど。サービスショットはお風呂掃除の場面くらいでしたね。
子宮外妊娠にしてしまうと、男の責任がボヤけてしまい、少女の命を救うことが先決問題になると思うので、👤(闇)医者は病院に行かせるのが正しい行動だったと思うので、スッキリしなかった。途中までは良かったのですが、終わってみるとやるせない脱力感に包まれました。個々の場面は良かったと思うんですけどね。
女性たちについて
売りをやってた萌、加害者家族の母、姉、姉の娘、教師にレイプされた女子高生、ラストの由宇子。
色々なテーマが盛り込まれた作品だと思います。その中で最も印象に残ったのが、女性が被害者になる現代の構造。彼女達、社会に守られていなかった。ドキュメンタリーの放送・製作側、社会に守られていた。
萌も加害者家族の姉も守られていないから嘘をついた。だけど、守られている者も守られていない者を世間にさらして利益にしていく。嘘をつく。そんな業界の仕組みもエグかったです。
主演の瀧内公美さん、素晴らしい演技で好きになりました。
【”世界は善意と嘘と少しの悪意で出来ている。”正義と誹謗中傷などの悪意、嘘、忖度に揺れる心を、瀧内公美が渾身の演技で魅せる。不可思議な人間の心の機微を炙り出した世界観にドップリと浸った作品でもある】
ー 今作の主人公を演じる、瀧内公美さん
・「日本で一番悪い奴ら」での淫蕩なシャブセックスをする婦人警官にビックリしつつ一発でやられ、
・「彼女の人生は間違いじゃない」での福島第一原発事故で、仕事を無くした父(保証金で食べている:光石研)と小さな家に住む福島県公務員と、週末東京でデリヘル嬢を掛け持ちしながら生きる姿にやられ、
・「火口のふたり」にビックリし(殆ど、全裸じゃん!)
・「裏アカ」・・・、は無かった事にして・・・。(スイマセン・・)
個人的には、潔く肌を出しながら、物凄い演技をする女優さんである、と思っている。
そして、4度目の驚きの作品を鑑賞した。ー
◆感想
・序盤は、ドキュメンタリー映画監督の由宇子(瀧内公美)が、女子高生自殺事件を追う展開に、”メディアの過剰な演出と、学校側の隠蔽体質を追う映画かな・・”と思いながら、観賞。
・だが、物語はこちらの予想を遥かに超える展開で、怒涛の如く進んでいく。
ー 女子高生自殺事件のドキュメンタリー作品では、正義の側に立つ由宇子が、父親(三石研)のまさかの行為に動揺し、ドキュメンタリー作品放映のために、それを隠蔽する側に回って行く様・・。
アイロニック且つ、人間の弱さ、狡さ、忖度する心を、瀧内公美さんが、ほぼ笑顔無き演技で魅せる。ー
・父親が経営する学習塾に通う、父と関係を持った女子高生に近づき、優しく勉強を見てあげたり、ご飯を作ってあげたり、お金の無い父親の代わりにガス代まで払って・・。
ー ここでの、彼女の行為は善意なのか、狡猾な行為なのか・・。彼女の心は、揺れている、揺れている・・。ー
・物語は、ドキュメンタリー製作と、父親が犯した行為を隠蔽しようとする由宇子の二つの顔を並行して描いている。
そして、ドキュメンタリー作品で描こうとしていた”学校の隠蔽体質を告発する”と言うテーマが根底から崩れ落ちる真実が、露わになり・・。
ー このシーンも、真実を知ったのは由宇子だけ、という絶妙の設定が効いている。そして、父が関係を持ったという女子高生の”ある噂”。
由宇子の心は、更に揺らぎ始める。
正義と悪意と、忖度と、懐疑心がせめぎ合う心の葛藤。ー
<ラストシーンは、物凄くシニカルだ。
真偽が不明なのに、父と関係を持った女子高生の一度は心が通じ合った父親に言ってしまった言葉。
ー 私は、このシーンは由宇子の正義の心が、悪意への誘惑に勝ったシーンだと思った。ー
そして、女子高生の父親から衝動的に首を絞められた後に、息を吹き返した由宇子のスマホに残された伝言。
”貴女のドキュメンタリー作品は・・”
153分という長尺さを全く感じさせない、見事なストーリーテリングと、瀧内公美さんや光石研さんを始めとする俳優陣の演技と共に、この作品が醸し出す、不可思議な人間の心情の機微を炙り出した世界観にドップリと浸った作品である。>
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