由宇子の天秤のレビュー・感想・評価
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人は嘘をつく
由宇子はある学校で起きた自殺事件のドキュメンタリーを撮影中、学習塾を経営する父のある事実を聞かされて揺らいでいく話。
この作品、人が「嘘をつく」ということを丁寧に描いた上で、人とのかかわり合い方、ドキュメンタリーやらメディアやらSNSやら全ての情報の受け取り方を示してくれてる映画なのかなと思った。
まず、嘘は自分を守るために必要なことで、人が生きる上では当たり前の行動ということ。なので今作の登場人物たちもよく嘘をつく。由宇子は自分の立場を守るために萌に優しいふりをして嘘をつき、その萌もまた自分を守るために由宇子に嘘をついていた。ここには書かないけどさらにもう1人。
この人達が自分だったらと考えると、嘘をつかない行動より嘘をつく行動の方が容易に想像がつく。嘘は人にとって本能的な防御なんだろうな。
そして、人が完璧に理解できるのは自分のことだけで、他人については自分の目で見て聞いて感じることだけが真実ということ。なので登場人物達は、相手が嘘をついているかなんて全く疑わない。自分のことで一生懸命すぎて他人のことなんて考えてられないし、そもそも人を疑ってかかる人なんてあんまりいない。
この2つはドキュメンタリーの性質に似てるなと思った。1つ目の人は自分を守るために嘘をつくということは、取材対象者はカメラの前で少なからず自分をよく見せようと取り繕う。これはカメラが向けられている時と居ない時で言動が違ったり、カメラが向いてない思っている時にポロッと本音が出てきたりするので明らか。
2つ目の他人については自分が感じてることが真実ということは、ドキュメンタリーは製作者側がついた嘘を受け取って、自分の中で真実を見つけるしかないものだということ。これはドキュメンタリーは製作者側が伝えたいことがあって作られるものなので、どれだけ中立に撮ろうとしてもそこに意図的なものが入ってしまうことは必須だと思うから。
なので、ドキュメンタリーは嘘をつく(こんなタイトルの映画なかった!?笑)ものということを前提にして見る方も作る方も向き合っていかないといけないんだろう。ドキュメンタリーに限らず人は嘘をつくという前提があれば、SNSなどの色んな情報を自分の中で冷静に受け止められるんじゃないかな。
とはいえ自分も衝撃的なドキュメンタリーを見るといつも「そうだったのかあぁぁぁ」ってそのまま受け取ってしまうんですけどね。
予備情報が多くて期待しすぎてしまった
もっとフラットな気持ちで何の予備情報もない状態で観たかった。
個人的には最後は目が覚めずあのままいきなりエンドロールの方が断然よかった。
その方がその後の展開をあーだこーだ想像できるから。
人は皆、結局は自分が一番可愛いと思う生き物なのかなと。
どちら側でもないと言っていた由宇子でさえ最後は高校生の噂だけで父親の罪を少しでも軽く思いたいという一心で問い詰めてしまうのだから。
仮にめいが嘘をついていたとしてもそれで父親の犯した罪が軽くなるわけでもない。
本当に体を常習的に売っていたなら、塾の月謝も払えていただろうし、さほど高そうに見えないイヤリングも時計も自分で買えたと思う。
1度や2度したかもしれないけど近くで見ていた由宇子ならわかったはず。
あの男子高校生は本当はめいの事が好きで振られた腹いせに嘘をついたのかもしれない。
誰がどう嘘をついていたかなんてわからない。
嘘かもしれないけど最後まで信じてあげてほしかった…
けど、やっぱり一番罪深い人間はあの教師だろうな。
そしてめいの父親のような人間が一番怖い。
告白すればあーなるのは予想できた。
観た後にいろいろと考えさせられたのは久しぶりです。
真実は闇に葬られる
ネグレクト、貧困などをはじめとする社会問題や、真実を伝えないマスコミなどの闇や問題を炙り出した問題作ではないだろうか。
観た後、重低音がずっと鳴っている感じ、ずっしり重い、難しい作品だ。
ユウコが手がけているドキュメンタリーような事件が自身の身にも降りかかるのだが、常に自分ならどうするか?と自問自答してしまう。
感情を伴う人間はどうしても自分の都合のよいようにはかってしまう。
皆、何かを守るために嘘をつき、正義と感情との間で葛藤しているのだろう。
それにしても、火口の二人での妖艶な役から本作のようなプロデューサー、塾講師としての顔も演じきる瀧内公美の役者魂には圧倒される。本作ではほぼスッピンで熱演し、彼女のことをまた好きになった。
たった一回で
ドキュメンタリーが舞台のせいか、長く回す傾向があって152分。長回しの意外な効果として、こちらに考えさせる時間を与える点に気付かされる。転じて転じて、頭の中で天秤がガチンガチンと揺さぶられる。「そのやり方は逆に危険。後で説明つかなくなる」「現実的にはこれで収まれば…」「そこは怒って自己防衛して良いのでは」「それは直視せずに流した方が良いのでは?」などなど、一体どこまで続くのか、ラストにおいても終わった気もしない。
後で行動原理を再構築してストーリーにして伝えることはよくある所で、実際は利己と利他のいずれもが混じったその都度の判断の連続でしかない。「その時は萌を優先する」と「報道部の連中怒るでしょうね」が等価であったりする。
実にクールでカッコいい瀧内公美が黙っているシーンでも存在感を示す。それは善悪を超えた正しさを体現しているようでもある。そのあたりがこの映画における毒である。
出てきた途端に「ああっ、こいつは!」と思ってしまった梅田誠弘の弱さと狂気が入り混じった表情。最後に至るまで彼の一挙手一投足に目が奪われた。
疑問
1.塾のお父さん、精子少ないはずなのに妊娠したと本当に思ったのか?
2.塾看板の新入生募集をマジックで、つぶしたのは誰?
3.最後、主人公は生き返るが、ほんと日経あんな事あるのか。
4.その後、被害者お父さんさん、やっちゃったお父さんを殺しに行くよなぁ。主人公は生き返ってそれを止めにいかないんだなぁ。
町山さんがラジオで絶賛してたのと、プロデューサーが片淵監督というこ...
町山さんがラジオで絶賛してたのと、プロデューサーが片淵監督ということで、気になってたこの作品を観てきました。
劇伴なし、ほぼすべてのシーンで主人公を追い続けるカメラ。懸命に誠実に取り上げようと追いかけていた事件と似たような状況に陥ってしまい、当事者としての判断を迫られる主人公の姿に心がヒリヒリする思いでした。急いで帰ってきてしまい、パンフを買いそびれたので、再度買いに行かねば。
天秤で量ることができる重さには限界がある
由宇子のお父さんの見た目がthe善良なこともあって、本当だったら衝撃の事実なんだけど、予告編でほのめかしているから驚きはない。そこは残念。それでも由宇子が、スマホで撮影しながら父親を問い詰める迫力には、見ている自分も後ずさりしたくなる。
視聴率が稼げるシナリオに事実をつなぎ合わせて報道する体質というのは、今も昔も変わっていない。報道をそのまま受け取ってしまうだけでなく、一種の娯楽として消費する自分達も存在する。それが一転して当事者になると、ハイエナが群がってくる恐怖に襲われる。
BGMがないため、目の前で起きている事実と錯覚するようなリアリティはあるんだけど、由宇子の父親とメイの父親のリアクションがちょっと現実離れしていてストーリーに乗れなかった。
河合優実の演技はすごくいい。次回作はラブコメらしいのですごく楽しみ。
∑(゚Д゚)【緊急動議 傑作なので上映館を増やして下さい】
誤りをすぐ正すのか?それとも嘘で誤魔化すのか?こう質問されて大概の人は前者を選択するでしょう。
自分の父親が未成年を犯し子供ができてしまったら?どうしますか?その未成年は素行も悪く売りをやっているような子だったら?堕胎させて無かった事にしますか?
単純な選択だと正しい事を選択しますが、対象やその非道が具体的だとそうでない場合もあるのかと思います。特に近親者が起こした事件は世間体などが大いに働き、人は真実から目を背けるもんなのでしょう。多いに共感できます。
主人公の由宇子は真実を追うジャーナリストとして、父親が未成年を妊娠させた娘として、上記2つの立場を同時に味わう事になるのです。そして、、、
もしこの映画のラストが被害者と加害者が明日に向かって仲直りをするものなら凡作だったでしょう。私は容赦なく★2.5だったでしょう。
あのラストは、、、、、凄い、、、、コレが人間なんだよ。現実はそうなるんだよ。リアリティのあるラストに感動です。
人は弱いんだよ。
PS:上映館増やすべきでしょう。傑作ですよ。
主体性がないが故に成り立つ社会
主軸が無くても何となく、出鱈目でも確実に動いている社会。誰も責任は取らないし、また取れない。正義を振りかざした側から、足元がぐらつく。自分に関して関心は薄く、他人に対しては異常なほど関心を示す。「オマエは誰だ?」と問われれば、直様「オマエこそ誰だ?」と問いをはぐらかし、発端を曖昧にする。これも人間の真実の姿には違いないのだろうが、立場の違いはちょっとした切っ掛けで交代する。社会的な強弱の差はさほどでもない。先ずは自らに関心を持つことだ。現象ではなく、存在というところで。
余談だが俳優陣の演技には目を見張るものがあった。監督の演出の上手さもあるのだろうが、これほど見せる演技が出来る俳優たちが世に埋もれている無念さもあるのだが、今後の日本映画の未来もまだまだ捨てたものではない。テレビサイズの映画ではない映画がスクリーンに現れる本数もこれからはますます増えて来るだろう。楽しみだ。
自主製作でここまでの作品を作るのは天晴れです。
自主製作でここまでの作品を作るのは天晴れの一言に尽きます。
渋谷の劇場では監督自らチラシ配りをされていて、その情熱にもいたく感心しました。
ただ、そのチラシが継続的な支援を求めるオンラインサロンの勧誘みたいな内容でした。
ここまで頑張って海外のベルリン映画祭に入選しているような監督さんでも次回作を作るのは大変なことなんだなと思うと、なんだか暗雲とした気分になりました。
改めてポスターを眺めてみると海外の映画祭にはたくさん入選しているけど、日本の映画祭は皆無なんですね。
日本にも自主製作映画系を応援すると謳っている映画祭が沢山あると思うんですが、その映画祭って一体誰を支援しようとしてるのかしら?
独り善がりで劇場公開しても客が呼べないアマチュア映画ばかりを選んでないで、この監督こそ支援しろよと思いましたね。
まぁ、日本の映画祭に入選しても無意味だと思って、監督側が無視している可能性もありますが。
内容に関してですが、ちょっと構成がチグハグなところが散見していて、整理されていたらもっと見やすくもっと面白くなったと思いました。
一体何が正しくて何が間違っているのかを観客に考えて貰いたくて、監督が意図的にそうした部分はあると思うのですが、興行的に成功しないと次回作が作れないなら尚更、もっと観客に分かりやすく伝える努力は必要です。
具体的に言うと、主人公と同行するプロデューサーが局から社員として勧誘されている、カメラマンには子供が産まれる、というセリフがあったシーン、あれがもっと前半にないといけません。
それを聞いたからこそ、主人公は自分の父親の醜聞を握りつぶそうとするんじゃないのかと。
現在の形だと、取材する事件では正義感から悪や権力に反抗するのに対し、プライベートでは真逆の、真実を握りつぶす悪を演じています。
主義思想が完全に矛盾していて、観客としてはこの主人公をとても応援できないし愛せません。
父親が教え子を孕ませたことを知った主人公は父親なのに糾弾する。
刑法で罰せられるだけじゃなく世間から袋だたきにされると分かっていても、矛盾したことが許せないから実の父親でも同じように断罪すると覚悟を決めた。
ところが、プロデューサーの昇進やカメラマンに子供が産まれることを知った。
このままでは自分の行動が仲間や他人の人生まで狂わせることなってしまう……。
そこではじめて、主人公は父親の醜聞を握りつぶそうとする。
……のが、せめて愛せる主人公の行動じゃないでしょうか。
その先は、主人公は違法な手段で教え子の堕胎をしてしまう。自己保身のためにも。
加害者側に立ってしまった主人公が、今度は取材する事件で世間から疎まれる加害者家族の肩を持つような番組を作って放送してしまった。自分を正当化する意味でも。
そのあとに、加害者家族が証拠を隠蔽していたことを明かして大問題になってしまう。
主人公は加害者家族に肩入れしたことが間違いだったと気付く。
すると、じつは教え子が男子生徒とも肉体関係を持っていたと知る。
さらに、教え子がウリまでしていた噂も知る。
父親が教え子を孕ませたわけじゃない、きっと別の誰かが孕ませたんだと考えた主人公は教え子を嘘つき呼ばわりして非難する。
すると、嘆き悲しんだ教え子がその場から逃げ出して交通事故に遭ってしまう。喋れない状態に。
真相は闇の中だが、教え子を孕ませたのは自分の父親だったという既成事実が出来上がってしまい、堕胎が教え子の父親や世間にバレてしまった主人公にはバッドエンドが訪れる。
で、よかったような気がします。
まぁ、個人の好みと言われればそれまでですが、その方がシンプルで分かりやすいし、エンタメとして面白いと思います。
社会的なテーマ性や作家性はあるので、この監督に足りないのはエンタメ性です。
それで90分以内に収まって、良いセリフが3個ぐらい、良いシーンが5個ぐらい、良い劇伴も数曲あれば、商業映画も入れた中で今年度邦画のナンバー1を取れたんではないかと思います。
そんな次回作を期待します。
とてもよかった
2時間半もあるのだけど充実していて時間の経つのが速い。ドキュメンタリーの事件が中心なのかと思うとそうでもなくて、由宇子の仕事も含めた生活が丹念に描かれる。
子供の貧困に心が痛い。あのようなつらい状況の子どもには嘘があっても、そういうものだという前提で寄り添うべきだ。
由宇子の行動が遠因となってメイの事故につながる。結果論ではいろいろな判断が正しくなかったと言える。
お父さん、57才で一発で妊娠させられるとは思えないので、メイの子どものお父さんは若者だと思う。
メイのお父さんが絵にかいたようなボンクラおじさんで、若さを失った若者みたいな、切ない。
瀧内公美
最初から最後までひたすら重い展開が続くが、二時間半飽きさせず見せる
手持ちカメラを多用し、長回しも多く、音楽も使わないのに見せる技術
とにかく瀧内公美に尽きる
存在感、演技力、素晴らしい(若い頃の田中美佐子に似てた)
必ずしも一般受けはしないと思うが、今年ベスト級の凄い映画
エンタテイメントスリラー。
比較することに意味があるかわかないけども、例えば「パラサイト半地下の家族」は主な撮影に77日かかっている。 「由宇子の天秤」パンフレットの監督自身の撮影日誌によると、この映画は全ての撮影を14日間で撮影しなければならなかった、そうだ。
事前のリハーサルは行ったようだが、もし、この映画に、せめて4週間の撮影と予算があれば、さらに影響力のある作品になったことは間違いない。この映画にすでに寄せられている絶賛を見ると、余計にそう思ってしまう。
物足りない、ということではない。
素晴らしく練られた脚本であり、映像、演出、演技、音声、美術、全てにプロの仕事がなされたもので、自主映画とは全く次元の違う、エンタテイメントスリラーである。
大きな2つのストーリーが同時進行する。
そのどちらも、由宇子目線で物語は進行するのだが、彼女の立ち位置が全く違うのだ。
片方は、彼女が隠蔽された事実を追う側であり、もう片方は彼女自身が事実を隠蔽しようとする側に置かされる。周りの嘘にも翻弄され続けるが、彼女自身も時に嘘をつく。登場人物すべてが、嘘ではないにしても、知っていたことを言わなかったり、言えなかったことが、誤解を生じさせる。
それらの嘘や隠蔽のほとんどは、悪意によるものでなく、自己防衛だったり家族への思いやりを原因とするもので、我々の日常に起こる嘘や隠蔽と全く同質のものだ。だから、見ているこちらが物語に引き込まれていく。普段はその感情の行先を決定してくれる音楽さえない。(笑)
「今、どっちに感じればいい?」と問いかけ続ける150分になる。
自宅から近い上映館が高崎シネマテークで今日観てきたのだが、なんと高崎での撮影がメインだったそうで、行く直前にその情報を知った。 群馬に近い場所に17年ほど住んでいるが、群馬県は文化レベルが高い地域という認識なので、それを聞いて妙に納得した。
素晴らしい映画なので沢山の方に観てほしい、と思います。
太田光さん。野村邦丸さん。日大芸術学部が作った映画とも言えますよ。宣伝してくださいな。
娘がねじれる時
フリーのドキュメンタリー映像監督の木下由宇子。不純交際が噂された中学校教師と女生徒が自殺した事件の学校側の陰謀と煽ったマスコミの責任を問うドキュメント番組作製と父親の個人経営の学習塾の講師を掛け持ちし、とても忙しい。新しく入塾したひとりの女子を気にかけていたが、娘が塾で嘔吐する。塾教師と生徒の垣根を越えて世話をするゆっこ先生。娘の家庭は父子家庭で父親はティッシュ配りなどの不安定なバイト生活。ガス代未納で止められているアパート。娘は妊娠していた。
「由宇子の天秤」
天秤にかけられるものは何と何なのか?彼女が世に問う作品と父親?ドキュメンタリー映画の放映日と娘が抱えている時限爆弾?
急激な展開(教師の妹の放映取り下げ要求、娘の秘密)により未成年性犯罪ばかりが目立つ暗澹たる内容になってしまった感じ。病院の駐車場で娘の父親に、娘の妊娠の相手は自分の父親の塾長だと言ってしまうのは父親の怒りの矛先をわざと自分に向けさせようと発作的にとった偽悪的行動なのか?正義感と偽悪的行動の大きな揺れ幅に見ている私の天秤は壊れてしまいました。渾身作の番組は放送中止(お蔵入り)になってしまう。
キャストの俳優さんの演技、とくに丘みつ子、松浦祐也が良かっただけに詰め込み過ぎの釈然としない展開にもやもや感だけが残りました。
瀧内公美自身の魅力と安定の演技。タバコ吸う設定で、塾のバルコニーで少女に一本くれる?っていう場面が良かったですw チョコチップスティックパンだったけど。サービスショットはお風呂掃除の場面くらいでしたね。
子宮外妊娠にしてしまうと、男の責任がボヤけてしまい、少女の命を救うことが先決問題になると思うので、👤(闇)医者は病院に行かせるのが正しい行動だったと思うので、スッキリしなかった。途中までは良かったのですが、終わってみるとやるせない脱力感に包まれました。個々の場面は良かったと思うんですけどね。
見応え十分🎦
正義を貫く難しさ。結局身近な身内が大切だと気づいて自己嫌悪に堕ちながらも自己の成果を守るためスタッフみんなに迷惑をかけるなどと後追いの理由付けを口にする自分にまた自己嫌悪。でも正義を貫けないと気づく。堂々巡り。でも仕方ないですね。みんな自分が一番大切ですから。身につまされます。
この主演女優、瀧内公美、凄い。存在感と雰囲気が良い。他の作品も観てみよう。
ストーリーの前半は良かった。中盤から帳尻合わせや伏線回収に転換する辺りから急に弱くなった。惜しい。もっと突き抜けないとドキュメンタリーチックの度合いが急減してしまう。おまけにラストが中途半端。
でも観ないと後悔しそうな作品である。間引きしていたが満席でした。上映館増やしても良いのでは。
エンタメにはない訴えのある秀作。
是非映画館で🎦
女性たちについて
売りをやってた萌、加害者家族の母、姉、姉の娘、教師にレイプされた女子高生、ラストの由宇子。
色々なテーマが盛り込まれた作品だと思います。その中で最も印象に残ったのが、女性が被害者になる現代の構造。彼女達、社会に守られていなかった。ドキュメンタリーの放送・製作側、社会に守られていた。
萌も加害者家族の姉も守られていないから嘘をついた。だけど、守られている者も守られていない者を世間にさらして利益にしていく。嘘をつく。そんな業界の仕組みもエグかったです。
主演の瀧内公美さん、素晴らしい演技で好きになりました。
どう受け止めたらいいのか、、
2時間半の長尺ですが、ストーリー、役者(特に子役たち)の演技に最後まで釘付けでした。
もっとらしい正義や倫理観に当て嵌めることが出来ない問いを突きつけられて、鑑賞から2日経っても、自分なりの答えが見つかりません。
信念がぐらつくほどの力を持った作品
人は、常に何かを選び取って生きていくものだと常々思っていますが、こんなにしんどい選択を1人の人間に次々と仕掛ける物語に、観ている私たちも気持ちの共鳴を感じながら、どんどんしんどくなっていく…でも、「どうなるんだろう」「どうするんだろう」そんなことが気になって、最後の最後までずっと釘付けでした。
「本当のこと」は、それを伝えているもの、つまり当事者本人にしか分からない。
伝えられた相手が、伝えられたことを信じればそれが「真実」として物事が進み、人を動かします。でも、真実を伝える正直さや、正しいと思う正義が、余計な、あるいは不幸な結果を生むこともある、と…映画を見て、そんな感想を持ちました。
主人公の由宇子は、自分の信じた「真実」を世に伝えるため、その一心で突き進む、とにかく真っ直ぐで怯まない、凛々しく格好良い女性です。
が、そんな彼女に「真実をそのまま伝えられない」不条理や不都合が、ごく個人的な範囲で、全く自分には非がない状態で起きます。
責任感の強い由宇子は、不都合の当事者が自分の一番身近な人たち(うち一人は「自分が守るべき」弱い立場の少女)なので、自身の責任において事態を回収しようと試みるのです。
しかし、それは徐々に彼女を追い詰めていきます。
「本当のことが周りに知れたら、その当事者に取り返しのつかない危害や不幸が襲い掛かる」ことが考えられるので、そうならないように由宇子は奔走します。当事者の少女から一番の信頼を得て、どうするのが彼女にとって最善なのかを考え、守ることに懸命になります。
守れそうな方向へ物事は進みかかるのですが、またそこに予想もできない別の真実(おそらく少女の嘘)が第三者の発言で突きつけられます。
世間の嫌な空気や、ネットやメディアの無責任な発言や煽り、そういうものとは「自分の信念」を以て闘えることも多いのですが、信じた相手がやむにやまれぬ状況でついた嘘や虚偽行為に自分が向き合う時、どうすればいいのか…答えはそう簡単には見つからない。映画は「では、貴方ならどうするのか」を見ている側に容赦なく問いかけて来ます。
守ろうとしたその子は自分に嘘をついていたのか…由宇子は本当のことを知ろうとしますが、失敗してしまいます。当事者の少女はその結果暴走し、不幸な事故に遭ってしまいます。
少女を救うため、彼女の父親に、自分の誠意を以て、真実を告げようとしますが、ここでも失敗し、いきなり命の危険に関わる目に遭います。
正直であること、誠実であること、私はそんな価値観に支えられて生きています。
しかし、この映画で描かれている物語を見てしまうと、そんなものは厳しい現実の前にはいとも簡単に崩壊するものだと思い知らされます。
まさに、「天秤」でぐらぐらとするように「嘘や不誠実が必要な場面もある、不可抗力となることもあるのだ」と納得せざるを得ませんでした。
だからと言って、自分の価値観が変わるということはないのですが、人が自分の身を守るため、生きて行くために「使わねばならない」手段に嘘や偽りがあるのも厳然たる事実。
映画を見た後、多くの人は、考えるのでなく「考え込んでしまう」そんな「ずっしりと、とてつもない重さ」のある作品でした。
こんなにすごい物語を書き、映画を生み出した春本監督、すごいキャラクターを体現した瀧内公美さんや河合優実さん、梅田誠弘さんをこれからも追いかけたいと思います。
【”世界は善意と嘘と少しの悪意で出来ている。”正義と誹謗中傷などの悪意、嘘、忖度に揺れる心を、瀧内公美が渾身の演技で魅せる。不可思議な人間の心の機微を炙り出した世界観にドップリと浸った作品でもある】
ー 今作の主人公を演じる、瀧内公美さん
・「日本で一番悪い奴ら」での淫蕩なシャブセックスをする婦人警官にビックリしつつ一発でやられ、
・「彼女の人生は間違いじゃない」での福島第一原発事故で、仕事を無くした父(保証金で食べている:光石研)と小さな家に住む福島県公務員と、週末東京でデリヘル嬢を掛け持ちしながら生きる姿にやられ、
・「火口のふたり」にビックリし(殆ど、全裸じゃん!)
・「裏アカ」・・・、は無かった事にして・・・。(スイマセン・・)
個人的には、潔く肌を出しながら、物凄い演技をする女優さんである、と思っている。
そして、4度目の驚きの作品を鑑賞した。ー
◆感想
・序盤は、ドキュメンタリー映画監督の由宇子(瀧内公美)が、女子高生自殺事件を追う展開に、”メディアの過剰な演出と、学校側の隠蔽体質を追う映画かな・・”と思いながら、観賞。
・だが、物語はこちらの予想を遥かに超える展開で、怒涛の如く進んでいく。
ー 女子高生自殺事件のドキュメンタリー作品では、正義の側に立つ由宇子が、父親(三石研)のまさかの行為に動揺し、ドキュメンタリー作品放映のために、それを隠蔽する側に回って行く様・・。
アイロニック且つ、人間の弱さ、狡さ、忖度する心を、瀧内公美さんが、ほぼ笑顔無き演技で魅せる。ー
・父親が経営する学習塾に通う、父と関係を持った女子高生に近づき、優しく勉強を見てあげたり、ご飯を作ってあげたり、お金の無い父親の代わりにガス代まで払って・・。
ー ここでの、彼女の行為は善意なのか、狡猾な行為なのか・・。彼女の心は、揺れている、揺れている・・。ー
・物語は、ドキュメンタリー製作と、父親が犯した行為を隠蔽しようとする由宇子の二つの顔を並行して描いている。
そして、ドキュメンタリー作品で描こうとしていた”学校の隠蔽体質を告発する”と言うテーマが根底から崩れ落ちる真実が、露わになり・・。
ー このシーンも、真実を知ったのは由宇子だけ、という絶妙の設定が効いている。そして、父が関係を持ったという女子高生の”ある噂”。
由宇子の心は、更に揺らぎ始める。
正義と悪意と、忖度と、懐疑心がせめぎ合う心の葛藤。ー
<ラストシーンは、物凄くシニカルだ。
真偽が不明なのに、父と関係を持った女子高生の一度は心が通じ合った父親に言ってしまった言葉。
ー 私は、このシーンは由宇子の正義の心が、悪意への誘惑に勝ったシーンだと思った。ー
そして、女子高生の父親から衝動的に首を絞められた後に、息を吹き返した由宇子のスマホに残された伝言。
”貴女のドキュメンタリー作品は・・”
153分という長尺さを全く感じさせない、見事なストーリーテリングと、瀧内公美さんや光石研さんを始めとする俳優陣の演技と共に、この作品が醸し出す、不可思議な人間の心情の機微を炙り出した世界観にドップリと浸った作品である。>
前評判通りの傑作
決してセンセーショナルに煽るでもなくドラマ的に描くでもない。音楽なしで、主人公視点で描くことで150分の長時間を飽きさせることなく描いている。工夫とかアイデア、練られた脚本でこうなるかと感心する作品。
渋谷ユーロスペース席飛ばしもなくかなり密で椅子の座り心地も悪い。ただし本作のような作品を上映してくれるスピリットに感謝。
全189件中、121~140件目を表示