由宇子の天秤のレビュー・感想・評価
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否応無く考えさせられる~~
いじめによって自殺した少女の事件を追っていた
ドキュメタリー作家の由宇子の身近に
思いもよらぬ出来事が起きる。
その思いもよらぬ出来事に対して
自分はどうするのか~?
何を書いてもネタバレになってしまうので
正直何も書けません。
正義とは何か?
みたいな薄っぺらい話では無くて
人間とは常に自分にとって都合の良い事と
人としての正義を天秤にかけて動く。
人の行いとして正しくとも
今の様なネット社会、情報化社会では
どこから火の手があがって
どんな風に捻じ曲げられて広まってしまうのか
全く予想がつかない。
そんな生き辛さや息苦しさが否応なく
押し寄せて来て
一か月以上前に観たのだけど
自分の中で消化できないまま~~
観た後に観た人同士で色々語り合いたくなる映画です。
いつまでも三毒との闘いなのか
自分にとっての「正義」と
人としての「正しさ」を天秤にかける女性の話です。
青臭いと言われながらも「番組は放映されてナンボ」というビジネスマンとしての清濁併せ持った正義感を持つ主人公。
外観を撮ってはならないという要請も、作品の価値を向上させるために無視。
つまり彼女が何よりも優先させているのは「彼女にとっての正義」であり、それは「人としての正しくなさ」も内包するということです。
(由宇子がモラルに欠けた人間という意味ではありません。むしろ逆と言っても良いです。)
由宇子は芯のある女性であり、問題が発生した際にも自身の正義に従って問題を秤にかけて、物事を進める人物です。
作中、由宇子が優先すべき「正義」と人としての「正しさ」に大きな溝が生まれてしまいます。
彼女は何が本当は正しいことなのか理解している聡明な人間であるが故にキツい。
そのギャップや起きてしまった結果の重さに耐えきれず、天秤が機能不全となり由宇子が終盤に取った行動は…。
このラスト回りが、本作を名作たらしめる所以だと思います。
上映時間の長さも気にならない、緊張と興味が持続する監督の巧みな手腕。
もちろん演者もレベルが非常に高く、隙がない。
観客の感情を誘導するための無駄な劇伴も、余計な説明セリフも不要。
手持ちカメラのみで観客を異次元の領域まで持っていってくれます。
そして語り過ぎないことで我々に余韻を与えてくれます。
本年度ナンバーワン邦画です。
タイトルなし(ネタバレ)
結局、世間というものがある以上考えても答えの出ない問題なので由宇子は死なずに済んで良かったねってところよね。
塾の女子生徒達が汚物拭いてあげてるのは良かったです。
目に見えるフレームは真実だろうか…自身も天秤にかけられる感覚
高いスコアを付けておきながら言うのもあれだが、これを正しく評価できている自信はない。2時間半、観れば観るほど出てくる、膿のような人間の気味悪さに今も慄いている。
大学でメディアを専攻しているので、ドキュメンタリーの創作性についてはそれなりに知っているつもり。テーマや構成など、所詮は添加物の入っているものである。増してメディアを省みることなど毛頭ない。そこを切り口として見せていく点はかなり意欲的。日本の風潮として過ちは許されない感覚が本作にも溶け込んでいて、追いやられた側の視点を炙り出す。
その一方で、自身が当事者になってしまうことへの危惧がまとわり付く。そして次第に形を変えながら、均衡が崩れていく。取材対象から感じられる閉塞感を知っているからこそ、正しさが失われていく。その気味悪さが無劇伴と生活音によって渇きを与える。
その荒波を駆ける彼女を演じるのは瀧内公美。脱ぐ役が多かったことからの脱却を試み、直々に売り込んでいたことから主演を掴んだ今作。春本雄二郎監督も凄く鋭利に切り込みながら、その複雑な役どころを全うしている。そして、河合優実も奥行きのある女子高生で圧巻の一言。コメディもいける彼女だが、まだ引き出しがあるのかと驚かされる。
パンフレットも買ってみたので、じっくりと考えてみたい。この映画自体、フレームになっていることを考えると、まだ見えていない部分があるのかもしれない。メディアによってメディアを戒める。そして我々にも警鐘を鳴らすような1本だった。
出会えたことに幸せを覚える映画※パンフレット購入推奨
今年の日本映画屈指の力作だと思う。然し重い。『空白』も力作だったが、もっと重い…
①先ずは非常に堅実でブレない演出に感心した。真面目であるが硬くなく一定のリズムで流れて行く様で確かな手応えがある。中盤まではほぼ完璧と言って良いのではないか。②ただ中盤までは映画の題材としてはさして珍しくない保身に走る組織(今回も学校)、無責任な報道、単に噂や容疑だけで関係者を追い詰める酷薄な世間(余程暇なのね)を糾弾する映画かと客観的に観ていられたが、中盤思いがけない出来事がヒロインに襲ってからは、登場人物達と同じくこの話にどう落とし前をつけるか一緒に模索することで、自分も映画の中に巻き込まれていく。(中略)この映画が提起する問題の中で最も根深くて深刻な問題は、自分の目や耳で確かめた情報ではなく、適当で浅薄な報道や噂を基に、犯罪者・容疑者(犯罪によっては犯罪者本人にも同情する余地がある場合もあるが、この映画に出てくる犯罪はどちらも性犯罪なので同情の余地なし)本人だけではなく、何の関係もない家族・関係者にまでも姑息で憎むべきやり方で追い込んでいく顔の見えない愚かな大衆とその問題である。余程暇なのか世間を恨んでいたり拗ねているのか(大概は自分に原因があるのに直視できない)自分が正しいと真から信じ込んでいるのか(これが一番面倒)、こういう輩はその人間性に根差しているので根絶・駆除するのは無理だと思うが、真に映画を愛する人の中にはそんな人間のクズはいないと信じています。
うーん
ヒリつきを”Divide”する
正にそのヒリヒリしたやり取りは観客への没入感、そしてそこからの逃避を想起せずにはいられない希有な作品である
というのも初めて自分はトイレ以外で一旦ブースから外にでてしまったのだ 耐えきれない焦燥感と.共感性羞恥に似た、まるで自分が引き起こしているのではないかと見紛う程の緊張感に、片時も離さない強い推進力に負けてしまったのである。それ程の辛さをこれでもかとぶつけてくる今作品のラストのオチが、それでもあれで済んだことに却って安堵している自分の恐ろしさも又身震いする。インフレを起こせば、客観的に観て酷い事でもそれ程でもないと錯覚してしまうドラマのマジックを垣間見た作品である。
現在社会の多レイヤー化された構造について行けるのだろうか、ほぼ諦めた自分がそこにいる・・・
現実を突きつけられ生々しく胸を抉られる映画
稚拙な言葉では語るのが憚られる映画だ。しばらく躊躇って筆が動かずレビューを公開できなかった。(鑑賞から間が空いた言い訳)
どこまでが嘘で、どこまでが真実か。なにを信じ、なにを疑えばいいのか。正義とはなんなのか。
胸を抉られ苦しくなる。
人間不信になるほど(作品への褒め言葉)リアルに展開する物語は、最後に大きな問いを投げかける。結末をどう受け止めるだろうか。
真実に向き合わなくてはならないが、真実ばかりが正解ではない。
二転三転し裏切られる展開で巧みな脚本。
俳優たちの佇まいがとても自然で、生々しくリアル。
ドキュメンタリー監督の苦悩というかたちで様々な社会問題が込められている。
いじめ、貧困、格差、監視社会、表現の自由、過激な報道…
こういう作品がアカデミー賞に選ばれる国であってほしい。
2時間半で間を多く使っているが、冗長にならずその時間が必要に感じられるほど。
瀧内公美はいい役者だ。座った目の奥にある温かさが印象的で、自然で柔軟な演技。
映画祭に足繁く通って好きな作品と監督に出会う機会を作り出していて、今作もその場で監督に出演を直談判したという。その勇気と行動力に感服。
話題作に次々と起用される河合優実もこれからが益々楽しみな女優。
監督が映画館で一人一人に名刺を渡し挨拶し、パンフレットにサインしながら丁寧に受け答えをしていた。
これだけ話題になっていても地道に作品を届け続けようとする姿勢に感銘を受けた。
生々しくてリアル。すごい映画だった。
3年前の女子高生自殺事件の詳細が今考えてもよく分からない。いじめが原因で自殺したけど、学校とメディアに先生と付き合ってたことにされ、それが原因で自殺したことにされたってこと?
×ラスト、由宇子がどういう選択をするかは曖昧なままでよかったのではないか。選択するのであればその後どうなったのかをもう少し描いてほかった。
ストーリで減点
◯生々しさがすごい。細かいセリフがリアル。全編BGM無しだからか、音までリアルだった。めいちゃんちの空っぽの冷蔵庫を開けたときの音とかすごかった。カメラを手ぶれさせてるのはの天秤が揺れてるからなのか分からないがこれもリアルでした。
ジャーナリストとして父親の行為を公開すべきとは分かっていても、それをすれば自分が取材してきた人と同じ人生を歩むこととなり、番組のスタッフ、塾の生徒にまで影響が出る。更にめいちゃんも秘密にすることを望んでいる。
そんな状態で由宇子がどんな選択をするのか?目を離せませんでした。
ハイライト→スマホで動画を撮りながら父親に迫るシーン
今年映画館で観た作品で1番かも
学校で起きた生徒と教師の自殺の真実をイジメを隠蔽する為に捏造したであろう学校、事実無根の報道をしたマスコミの本当の姿を暴いて報道しようとする主人公の物語。と思いきや途中から複数の物事、真実が複雑に絡み合い急転直下の展開を見せる。何が正義で何が悪か?どちらが加害者でどちらが被害者なのか?何が真実で何が嘘なのか…?観ている方の心情と同じように主人公、由宇子の心の天秤も揺らぐ揺らぐ…だが傍観者(つまり観客)から見たら結果的に由宇子のほとんどの選択は間違っている。撮影しないでと言われても平気で撮影したり、自分に降り掛かった問題は隠蔽しようとしたりして主人公に全く共感出来ないのだ。正義だと思っていた主人公もけしてそうではない。結果的に登場人物のほとんどが不幸になっている…重苦しい。ある意味鬱映画かもしれない。しかし映画館で見るべき映画。152分があっという間でここまで観ている人の心が引き込まれ、揺り動かされる映画はそうそうない
ある種、ホラー映画より恐ろしかった。
ドキュメンタリー監督が自身の仕事とプライベートの狭間で心が揺れ動く様がしっかり描写されており、映画の後半は観ているこちら側が心苦しくなってしまった。
とにかくハッピーエンドにするにはどんな終わり方があり得るのかを考えさせられた。しかし、どう考えてもハッピーエンドはあり得えないように感じられ、後半はとにかく早く幸せな終わり方を、、、とずっと思いながら観ていた。
マスコミの切り取り報道などは自分も気にしていた部分であり、そういった社会風刺的な映画かと思って観に行ったのだが、それはあくまでも背景に過ぎず。
ネット社会における集団攻撃の心理、それに向き合う者、目を逸らす者。嘘と真実。
人間の心の弱さをテーマにした良い映画でした。
なお俳優さんは、光石研さんしか存じ上げなかったのですが、皆演技っぽい演技でなくナチュラル。主演の方も良かったですし、塾生徒さん役の方も心の闇、影が見え隠れして良かったと思います。
正義とポリシー 事実と虚構 緊張と弛緩
本作は、あまりに深く、重い。
由宇子は、ドキュメンタリーディレクターとして、事実を追い求める。マスコミによって都合よく切り貼りされた情報、虚構の混じったSNSの情報でなく、自らの足で事実を追うのがドキュメンタリーディレクターとしての正義(あえてポリシーと言えよう)。
ところが、ある日突然の父親の告白によって、そのポリシーが揺らぐ。さらに、事態は単にその告白だけにとどまらない。
何が事実で何が虚構なのか。
由宇子は追い詰められ揺らいでいく。
本作では、由宇子の腕時計が印象的だった。
これに対する由宇子の振る舞いは、自身の気持ちを如実に表しているように思う。
また、作中での緊張と弛緩も強烈だった。
ほっこりするシーンは微笑ましいのに
シリアスな場面では息をすることさえ苦しくなる。
由宇子の人間らしい一面と、ディレクターとしての割り切った一面。
とても衝撃度の高い作品だった。
演技 脚本 展開 衝撃、全て度肝抜かれ揺さぶられた
2021年劇場鑑賞21本目 名作 100点
とんでもない作品。間違いなく今年の邦画ナンバーワンクラスの大傑作。
当方長らく2021年邦画ランキングの順位変動が無く、下半期だと期待していた空白や護られなかった者たちへはもちろん素晴らしい作品でしたがランキング上位のヤクザと家族、すばらしき世界、まともじゃないのは君も一緒、茜色に焼かれる、などを追い抜くことは出来ず、今年はもう変動無いのだろうか、、、と思っていたところ、1ヶ月程前に当サイトでの高評価を受け少し期待して足を運んだところ、これが大正解。
上映が始まり、進んでいくに連れて、ああこれは5位以内入るなあ、、、ベスト3来るかもしれん、、、んんんこれはとんでもないぞ1位すらある、、、!!!
とどんどんのめり込んでいき、鑑賞から1ヶ月経過しましたが、感想を書いている今に至ります。
個人的には下半期だったら間違いなく堂々の1位。
年間だと2位のすばらしき世界よりも上だと思っている。1位のヤクザと家族と本当に僅差で、あちらは豪華役者の素晴らしい演技と監督の映像美、エンデイングの主題歌の作り込みや週刊ヤクザと家族という演者やスタッフの作品についての裏話や熱い想いが語られるもの、様々な点の総じて表すと熱くて暑い作り込みに魅了され1月上映ですがこのまま個人的な1位にし有終の美を飾ろうとしていましたが、こちらはもうとんでもなく深すぎる内容がヤクザと家族のそれらを凌駕するんでないかというほど、印象に残った。
昨年のミッドナイトスワンじゃないけど、今でこそアカデミー賞獲得して有名になりましたが、最初の知る人ぞ知る名作とはこの事なんだなとおもう。
是非。
あいつ、すぐ嘘つくから
3年前に起きた女子高生自殺事件を追うドキュメンタリー監督の由宇子は、ドキュメンタリー作成の傍ら父親の経営する個人塾を手伝っていた。
由宇子は塾生の一人、萌に出会う。
片親でお金に困っていた萌だったが、大学に行きたいと塾に通っていた。
しかし、とある衝撃的な事実が発覚し…
真実はどこにあるのか?
加害者は誰なのか?
正しさとはいったい?
それぞれの苦悩と悪が錯綜し、答えの出ない問いをこねくり回す、実に重く苦しい152分。
ここまで救いのない映画は初めてかもしれないというほど、知れば知るほど自分の胸に突き刺さってくる真実。
光を当てれば闇が見える。
こういった日常に潜んでいる問題点を、映画のテーマとして現実的に炙り出したのは本当に素晴らしい。
ある意味誰もが加害者。
償いきれない罪とそれに付随する嘘。
ジャーナリストとしては何としても真実を伝えなくてはならないのに、人としては嘘で偽らなくてはいけないという矛盾。
学校の隠蔽、テレビ局の捏造、免罪のための嘘はいけないと強く思うが、映画ラストの告白も決して正しかったとは思えない。
自他共に守るためならば、嘘は必須であり優しさだと思う。
萌の容体、由宇子のその後など、不明点の多いまま迎える何ともやりきれない結末。
でも、それが現実。これはお話ではない。
他人事が自分事に。
この映画の問いに答えは出ないため、鑑賞者側に考えることが委ねられる。(側って何?って話になっちゃいますが…)
むしろ由宇子同様、自分事として考えなくてはならない。
テーマと内容は申し分ないが、152分も必要だったのかは疑問。
長尺映画を悪いとは思わないが、こういった映画はもう少し簡潔に撮った方が印象にも残りやすいし、説得力もあると個人的には思う。
途中の長回しや、2つの事件の頻繁な場面切り替えは、せっかく張り詰めた緊迫感を薄れさせるような気がした。
それでも取り敢えず観てみて欲しい。
我々の価値観も天秤にかけられている。
全てが中途半端。しかも長すぎ!
報道のあり方やイジメに代表される教育の現在を問いかける社会派が、と思いきや、途中から公私の正義を問われる人間としての主人公の物語に。
しかも、後半に明かされる二つの事実に全てが有耶無耶。
主人公と、ある女性の告白も、保身の上に成り立った、あくまでも安全圏にいる上での行動にしか見えない。
それにあのもったいぶったラスト。
結局最後まで、何がしたかったかわからずじまい。
音楽を廃した、ドキュメンタリーチックな重苦しい映像で、重厚ですよ!とある種の押し付けがましい感じさえ。
それにしても長すぎ!!思わせぶりな演技や、いらないカットを延々と流しすぎ。
少し前に見た『告白』。
本作同様社会派な重苦しい話なのに、どれだけ緊張感もあり、不謹慎な言い方だけど面白かったのか再確認。
監督の力量が如実に現れた作品でした。
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