由宇子の天秤のレビュー・感想・評価
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深み
見逃していた本作を飯田橋ギンレイホールにて鑑賞。かなりの入り。本作と「空白」という相当キツメな二本立て。自分は「空白」は見ていたので一本で退出したが、二本見られた方、さぞ重かったでしょう。見終えた後外濠沿いの桜を眺めながら小一時間反芻。
映画はタイトルの通り由宇子が様々な局面でどちらが重いかを選択していく様が描かれる。自分にとっての正義が絶対的正義と信じるドキュメンタリーディレクター由宇子が、作品において妥協を許さぬ姿勢を貫きながらもいざ自分が事件の関係者となった場合に現実的な行動を選択してしまう。公としての事件と私としての事件が絶妙な(最悪な)絡みあいを見せる。
ラスト近く、萌(めい)は売りをしていた・嘘をつくという情報に触れた由宇子が真相を問いかける。真実はわからないまま。しかしラストでは「私の父なんです」と告げる。これは「娘は売りをしていたかも」という萌の父の発言を受けて萌をかばうつもりで言ったと理解したものの、誤解カモ。
役者は皆演技巧者といえカラーもマッチしていた。特に「河合優実」。正直彼女を見に行ったというのが5割なんだが、本作でも役柄通りにしか見えず、他の作品と比較してみるとやっぱり上手いんだなあと再確認。主役の瀧内公美はちょっと美人すぎ・目力強すぎ、本当にドキュメンタリーディレクターだったら作品に影響が出ちゃうかもだけど、本作の主役としては顔がはっきりしていた方がわかりやすい。
最後に、悪い癖であらさがし。脚本の穴だなと思ったのは光石研の行動。彼が多少の悪さをしていたとしても、妊娠させるところまで行けるように思えない。もしそうならも少し悪く描けるし余罪ありって設定にならないか。二重構造のための無理に思えてしまった。それ以外はカメラワークも役者も含めて満足です。古のTV美人女優丘みつ子の演技も昔のイメージと異なり自然で良かったです。
酷評です
「低予算で撮った!」と自慢しているようだけど、それを分かった上で観ると、至る所に妥協の後がよく見えます。俳優の芝居とか、演技力のチグハグなところとか、ロケ地も。カメラアングルも、音楽が無いってところも(あえて音無し?巨匠がタダでいいからやらせてくれって言ったら断らないだろう)。
ラストシーンも(どこの駐車場だよ本当に)
この監督の前作は更に低予算であまりにも貧乏臭くて見ていられなかった。
前作「かぞくへ」は日本史上最低の映画だと思いました。低予算でこれだけの映画が作れたのだ!と誇らしげに語る監督の言葉には反吐がでました。
それよりは「マシ」という感想です。
長時間映画ですが、商業映画のような時間制限がない分丁寧と言うより、もはやダラダラと展開していきます。
内容も個人的には面白いとは思えませんでしたし、興味深いとも思えません。人物造形の嘘っぽさは監督の性格というか、人生観が色濃く出ているのではないかと。光石研さんとかは自力の演技力で目立っております。
安っぽい自主制作映画の域を超えていないのでガッカリです。映画祭席巻とのたまわっておりますが、よくみるとすごい賞をとっているというわけではない。よくぞ判断してくれました。
見れば見るほど監督の自慰行為を見せつけられているかのようで反吐がでます。ちゃんと監督の色が出ていてあの顔が浮かんできてしまうのです。
脚本やって監督して編集もしていたら
そうなるのは当たり前ですが。
このような映画が日本から消えて無くなってくれる事を強く望みます。そう言う意味で、話題作にするべき話題作です。
内容は至って単純で分かり易いのかと思いきや…⁈
もう一度見たかった
自分の弱さと向き合う映画かも
タイトルが秀逸だと思う。
主人公のドキュメンタリープロデューサーの仕事としての事件の真相を追う姿、プライベートに起こる様々な出来事。どれ一つとっても自分にとっての正義とは何かや貫ききれない弱さを突きつけてきた。
本当はもっと高い評価でいい映画だけれど、私の気持ちに引っかかる部分があり下げてしまった。女生徒の妊娠が危険なものと分かった後も、放送するまで伏せようとする行為は、命の危険より自分の報道をとったことになる。
しかもその報道が使えなくなったと分かっても、すぐに医者に連れて行くわけでもなく、まず保身にはしることで言い争いになる。そこは弱さからとはいえ、納得できなかった。
1日何回天秤にかけているのだう…
まず瀧内さんに引き込まれる。
サバサバとしているのに情に厚い有宇子が観る者に迫ってくる。
脇を固める役者陣も素晴らしい。
正義と不義
本音と建前
真実と虚偽
あらゆる陰陽が想起される。
日々たくさんのことを天秤にかけ、はかる。全てに一貫性は恐らくないだろう。
映画では人間の美しさと醜悪さが極限の中で行き来し、選択を迫られる。
由宇子は交流を通じドキュメンタリー監督という職業倫理を超えて人としてどう在るべきかという答えにたどり着く。
そして真実は残酷であった。
これは名作
正義とは?
正義とは何か?
自分ならどうするのか?
突きつけられたこの問いへの答えを観客は映画が終わってからもしばらく考え続ける、そんな作品。
ドキュメンタリー監督である由宇子は真実を追求する姿勢から上と衝突するものの、マスコミ社会で散々揉まれてきたであろうことが窺える強かさ、図太さも持ちあわせているけど、父親の経営する塾で生徒たちと触れ合う姿はとても優しい先生。
あえて音楽をつけない演出なのでまるで彼女のドキュメンタリーを見ているようでした、特に前半は。ある事件が発覚すると一気にこちらまで動揺してしまいましたが。
脚本も抑えた演出もこの題材にすごくマッチしていてストーリーにグイグイ引き込まれました。
息をひそめて生活するあの母親の姿も印象的でした。
正義を振りかざして悪と思われるモノを執拗に攻撃する無関係な人たちがこのネット社会には大量にいて怖いなぁと思いますが…由宇子もそれを怖れるあまりに。。
あえて多くを語らない作品だから、不完全燃焼に感じる部分もあるかもしれませんが、それも「あえて」でしょう。いろいろな取り方ができますね。
俳優さんは皆さん素晴らしく、特に瀧内久美さん、良かったなぁ。強さと弱さをナチュラルに演じてらっしゃった。光石研さんもとても難しい役でしたが流石!
ラストシーンは納得できない
思わせぶりのタイトルと描き方なので何か深いテーマが有りそうにも感じるが、実のところは女子高生と教師の不適切な関係を取材していたドキュメンタリー監督が似たような境遇に陥ってしまうという設定の面白さを愉しむエンターテインメントなんだと思う。
ただ、それにしても理解できないのがラストで萌の父親が由宇子の首を絞めるシーンだ。いくらなんでも由宇子に殺意を抱く状況にはない。父親は短気なところはあるが根は良い人間として描かれている。それに由宇子はどうして萌のお腹の子の父親が自分の父だと言ったのだろうか。あの時点では確証はなかったはずだ。
さらに驚いたのが、由宇子がゾンビのように甦ったことだ。何を意図しているのだろうか。中途半端なドキュメンタリー監督は永遠に不滅だということだろうか。
恐らくそういうことではなく単に面白い設定と面白い展開ということなんだと思う。
最後に、由宇子役の瀧内公美の演技が堂々としすぎてカッコ良すぎる。もっと薄っぺらないい加減なところを持つ役どころではないだろうか。
宇宙子
真実の偽りと偽りの真実
作品情報が公開された時点で気になっていた作品。
世界各国で賞賛され、日本でも都内では満席が続き単館上映にも関わらず興行収入が1億を超えた本作。レビュー欄は賛否両論あるが、全体評価は★4.0と高評価をキープ。2週間前から上映館拡大で公開された劇場が早くも上映終了らしいので慌てて鑑賞。
評判通り、すごい映画でした。
ドキュメンタリー映画を作るドキュメンタリー風人間ドラマ映画。普通の映画ではない。かつて無い映画。これだけ賞を総ナメするのも理解出来る。
ドキュメンタリー監督として日々インタビューを行いながら、父の経営する塾で講師を務める由宇子(瀧内公美)。順風満帆な日々を送っていた由宇子だが、とある事件で全てが狂い始める。
本当に息がつけない152分間。
音楽が一切ない本作だが、それが空気をより一層重くし映画に深みを持たせている。濃厚で緻密な設計により、こんなに重いテーマなのにずっと面白いしあっという間。152分間を丁寧に無駄なく使っている。
瀧内公美の演技力が驚異的。
今年1番面白くなかった映画は瀧内が主演の「裏アカ」。一方で、今年1番面白かったドラマは瀧内も出演している「大豆田とわ子と三人の元夫」。どちらも、彼女の美しさと器用な演技に魅了されたが、本作は両作よりも遥かに魅力が詰まっている。衝撃の事実を知った時の表情がすごい。これが映画だと!?本当に起こった話じゃないの!?演技だとは思えない繊細さに驚き。由宇子を演じれるのは瀧内公美しかいません。
冒頭はかなり平凡な感じ。
映画としてどうなのか?と思う部分もあるし、描き不足な所もある。しかし、一気に引き込まれ離すことなく最後まで突き進む。面白くて仕方がない、続きが気になる、最後はどうなるんだろう。と次のシーンが見たくてしょうがないという感情に襲われる。ラスト2.30分は衝撃的で破壊的で驚異的。本当によく出来た映画だこと。
由宇子に迫り来る真実。彼女はその真実を偽るのか、それとも真実だと確証がないが口にするのか。次から次へと彼女の天秤に伸し掛る事実。嘘をつき続けることは辛いが、嘘を明らかにすることはもっと辛い道を歩むことになる。天秤はどちらに重みを感じるのだろうか。その重さは本当に正しいのか。タイトルと観客になげかける度合いが絶妙。1日経っても忘れられない、あの光景。
これがダメ!と指摘は出来ないが、なんだか勿体ない。もっともっともっと面白く撮れたと思う。しかしこれでも最高に面白い。何度も見たくなるという気持ちが理解出来ました。
公開から2ヶ月半以上だった本作。
かなりの映画館で上映が終了していますが、この機会に是非。あと半年経ち、レンタルができるようになったら私は周囲にこの映画とサマーフィルムにのってを強く強くオススメすることにします。え!?どっちも出てんの!?ビート板に見えないよ!
わたしだったらどうする?と延々と迫ってくる作品。
結局、真実は?
瀧内さん演じる主人公は本当は妊娠した女子高生に寄り添ってはいない。いざとなったら自分の身がかわいい。彼女が身体を売ったり複数の男性経験があるというのも噂だけ、真実とは限らない。映画を観に一緒に行ったとき彼女を信じてあげていれば悲惨な結局にはならなかった筈。最後だって自撮りしてドキュメンタリーの題材にしたんだろう。
あ〜あ、もったいない!!
とにかく役者たちがの演技が、皆んな真に迫っていて、本当に素晴らしかったのだが…
徹底した長回しの映像と手持ちカメラによる微妙なブレ感も、この作品を観る側が主人公のドキュメンタリーを観ているような感覚にもなり、まるで入れ子構造の如く、ドキュメンタリー番組を作っている主人公のドキュメンタリーをこちらは観ているような仕掛けになっていて、
それによって緊迫感も持続して、アレよアレよという間に時間も駆けて抜けていく。そのストーリーは主人公の視点だけで進んで行き、いわゆる神の視点が無いため、より一層と主人公の現実世界の中へ嵌っていく。その主人公を演じる瀧内公美が、あまりにも素晴らしいのだが…
あれだけ芝居が良くて、題材も良くて、映像も良くて、劇伴がないのもこれまた良くて、しかし、なのに、なのに…
あのプロットでは…
あまりにも本当にもったいない!!
予想外のベタな展開には、えええ???となってしまった。
インディーズ映画にしては、ストーリーに捻りというものが無さすぎる。
あえてリアルにしたくて、あんな凡庸で有りがちな展開にしたのだろうか?
あの教師のお姉さん(?)が、何か重大な秘密を隠しているのは明らかだったが(これも演技が上手すぎるゆえ)まさかアレほどベタな展開にしてしまうとは…
(火サスじゃあるまいし、教師のスマホなんぞ真っ先に警察が調べるに決まってる。というか、あんな赤裸々音声データをデリートせずに自殺なんて無理筋だ。どうせ無理筋なら疑っていた姉が盗聴器を仕掛けたくらいの設定にしないと!)
そして、ベタとはいえ、あのプロットにした以上、あのシークエンスこそ、報道とは何か?というテーマを抉り出して、まさに「由宇子の天秤」が試される絶好の機会と、本当はなったはずだ。
あの時点で相当なインパクトの事実誤認があったとなると、それはイコール重大スクープであり、視聴率の低いハードなドキュメンタリー番組ではなく、高視聴率のワイドショーのネタとなり、それはスクープゆえ一刻も早いオンエアをTV局の編成側は要求するはずで、そのネタのコンプリート版となる由宇子たちの撮ったドキュメンタリー(本当の事実を追加)もオンエアを早くさせるよう調整することも出来たはずだ。
それは、あの時点において由宇子が最も望んでいた事とも合致することになる。
しかし一方で、そのオンエアによって、本当に取り返しのつかないくらい壊滅的なダメージを遺族たちに与えてしまう事にもなったはずだ。
それくらいギリギリのヒリヒリするような葛藤が、あのシークエンスにおいて、全く出てこないというのは、本当にダメだ。というか本当に有り得ない。本作で一番スリリングでクライマックスな場面となったはずなのに。
どちらか片方へ均衡が崩れてしまうかもしれないハラハラとしたサスペンス感や破滅スレスレで綱渡りするような緊張感が「天秤」というほどは無かったのが、本作の一番ダメなところだったと思う。
由宇子は「側って何だよ?」などと言い返し、このままだったら自分たちも先生を追いつめたマスコミと一緒だ!などと言い放ち、報道番組におけるコンテンツ作りより大切な事があると言いたかったようだが…(メディア批判も表面的だ)
そんな簡単に天秤が一方に偏っちゃダメに決まってる。もう片方には女の子の命がかかっているのだから。
その後の交通事故もホントにベタだが、まさかラストまで、あんなベタというか、あの娘の父親が何処かで暴走しそうな予感はしてたが…(これも役者が上手すぎるゆえ)
あんな訳わからん展開にしてしまうとは…(せめてDNA鑑定くらい考えるだろフツー)
真実より自分の家族の責任にして医療費を肩代わり?自分が追い詰めた末の事故だから?だとしても、それも無理筋だ。
事故の賠償金を払いたいなら、真実とは別に負担すればいいだけのこと。
結局のところ、どうしても、あのラストを撮りたかったから?
だとしたら、ホントにベタすぎ。まさに御都合主義。
直前の由宇子の真横からのショットが、あまりにも素晴らしかったので、何とも本当に残念でもったいなかった。
とにかく瀧内公美は本当に素晴らしい。大好きになってしまった。
まさにフィルムに愛されている女優(この映画もデジタルかもしれんけど)。
この作品によって彼女は間違いなく時の人だろう。「情熱大陸」にも直ぐに出てきそうだ。
兎にも角にも、この監督の次回作ではなく、彼女の次回作が無性に観たくなってしまった。
あ、あと、あの医師の役だった池田良、彼もかなり気になった。20代後半まで外資系コンサルで働いていたらしいが、元同僚のような親近感を個人的に勝手に覚えてしまった。こういう俳優がもっと活躍してくれることを期待したい。
そして最後に一言だけ。
やはり伏線の放棄はいかんよ。
その手の映画もチラホラと見かけるが、サスペンスで伏線を回収しないなんて、絶対NGに決まってる!
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