「目に見えるフレームは真実だろうか…自身も天秤にかけられる感覚」由宇子の天秤 たいよーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
目に見えるフレームは真実だろうか…自身も天秤にかけられる感覚
高いスコアを付けておきながら言うのもあれだが、これを正しく評価できている自信はない。2時間半、観れば観るほど出てくる、膿のような人間の気味悪さに今も慄いている。
大学でメディアを専攻しているので、ドキュメンタリーの創作性についてはそれなりに知っているつもり。テーマや構成など、所詮は添加物の入っているものである。増してメディアを省みることなど毛頭ない。そこを切り口として見せていく点はかなり意欲的。日本の風潮として過ちは許されない感覚が本作にも溶け込んでいて、追いやられた側の視点を炙り出す。
その一方で、自身が当事者になってしまうことへの危惧がまとわり付く。そして次第に形を変えながら、均衡が崩れていく。取材対象から感じられる閉塞感を知っているからこそ、正しさが失われていく。その気味悪さが無劇伴と生活音によって渇きを与える。
その荒波を駆ける彼女を演じるのは瀧内公美。脱ぐ役が多かったことからの脱却を試み、直々に売り込んでいたことから主演を掴んだ今作。春本雄二郎監督も凄く鋭利に切り込みながら、その複雑な役どころを全うしている。そして、河合優実も奥行きのある女子高生で圧巻の一言。コメディもいける彼女だが、まだ引き出しがあるのかと驚かされる。
パンフレットも買ってみたので、じっくりと考えてみたい。この映画自体、フレームになっていることを考えると、まだ見えていない部分があるのかもしれない。メディアによってメディアを戒める。そして我々にも警鐘を鳴らすような1本だった。
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