「あいつ、すぐ嘘つくから」由宇子の天秤 唐揚げさんの映画レビュー(感想・評価)
あいつ、すぐ嘘つくから
3年前に起きた女子高生自殺事件を追うドキュメンタリー監督の由宇子は、ドキュメンタリー作成の傍ら父親の経営する個人塾を手伝っていた。
由宇子は塾生の一人、萌に出会う。
片親でお金に困っていた萌だったが、大学に行きたいと塾に通っていた。
しかし、とある衝撃的な事実が発覚し…
真実はどこにあるのか?
加害者は誰なのか?
正しさとはいったい?
それぞれの苦悩と悪が錯綜し、答えの出ない問いをこねくり回す、実に重く苦しい152分。
ここまで救いのない映画は初めてかもしれないというほど、知れば知るほど自分の胸に突き刺さってくる真実。
光を当てれば闇が見える。
こういった日常に潜んでいる問題点を、映画のテーマとして現実的に炙り出したのは本当に素晴らしい。
ある意味誰もが加害者。
償いきれない罪とそれに付随する嘘。
ジャーナリストとしては何としても真実を伝えなくてはならないのに、人としては嘘で偽らなくてはいけないという矛盾。
学校の隠蔽、テレビ局の捏造、免罪のための嘘はいけないと強く思うが、映画ラストの告白も決して正しかったとは思えない。
自他共に守るためならば、嘘は必須であり優しさだと思う。
萌の容体、由宇子のその後など、不明点の多いまま迎える何ともやりきれない結末。
でも、それが現実。これはお話ではない。
他人事が自分事に。
この映画の問いに答えは出ないため、鑑賞者側に考えることが委ねられる。(側って何?って話になっちゃいますが…)
むしろ由宇子同様、自分事として考えなくてはならない。
テーマと内容は申し分ないが、152分も必要だったのかは疑問。
長尺映画を悪いとは思わないが、こういった映画はもう少し簡潔に撮った方が印象にも残りやすいし、説得力もあると個人的には思う。
途中の長回しや、2つの事件の頻繁な場面切り替えは、せっかく張り詰めた緊迫感を薄れさせるような気がした。
それでも取り敢えず観てみて欲しい。
我々の価値観も天秤にかけられている。